【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)

てんつぶ

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クレナイの過去

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おじいちゃんが言っていた、クレナイが異界から来たという話が事実として本人の口から語られる。
幼い彼に1度だけ「どこから来たのか覚えていないか」と聞いた時にはなにも答えてくれなかったから、言い難いか覚えていないのかと思っていたけれども。

「乱世だった。xxx――……部族……種族とでも言おうか、とにかくオレが生まれた時には既に世は理由のない戦にのまれていた。中立を保っていた我々xxxの里も結託した他種族の襲撃を受け……オレは子供故に……必死に闘う同胞の手により逃がされたが、多分残った皆死んだだろう」

里で仲間と一緒に暮らしていた話は聞いた。でもそれがまさか……そんな壮絶な過去があったとは。

出会った時のクレナイを思い出す。
美しい絹の織物の服、凝った柄は彼が大切にされていた存在だったのだろう。でもそれを纏ったクレナイは泥だらけで……服も破れて煤や土で汚れていた。
言葉も通じずどんな辺境から来たのかと思った。それが、まさか世界すら違う場所から来たなんて想像出来ただろうか。

僕はなにも言葉に出来なくて、ただ耳元で話す彼の言葉を静かに聞くしか無かった。
普段よく喋るおじいちゃんも、幼いクレナイの身に起こったいたましい話に眉を下げて黙っている。

「オレは他の子供たちと、少しの女たちに引かれて山へ逃げた。寒い雪道で死に物狂い走り、追っ手を撒いている間に、オレだけ雪で足を滑らせ谷底へ落ちた。その後は――」

太くたくましい男の腕が、僕の身体に優しく巻きついた。

「そこから気がついたらこの森の中、そしてスイと出会った。だからオレはここに来れて幸せだ。お前がいるから、スイ」

目頭が熱くなる。幼いクレナイの辛かったであろう過去、そしてそれを知らずに過ごしてしまった自分、それでも僕と出会えて嬉しいと言ってくれる彼の言葉に、堪えようとしてるのに視界が膜で覆われる。
辛いのは僕じゃない、悲しいのは彼なのに。それなのに自分勝手に零れようとする涙を、僕は唇を噛んで堪える。

「ふむ……番いであるクレナイの危機に、スイの何かしらの能力が発動して呼び寄せたのかの?苦労もしただろうが……スイの爺としてはお前に感謝する事を許しておくれ。この子の所に番いとして現われてくれた事にな」

「礼には及ばない。この身、魂も全てもはやスイのものだ。その番いとやらの在り様は分からないが、スイはオレの半身。何があろうと側にいる」

堪えようと努力したはずなのに、2人は僕の涙腺をあっさり崩壊させる。悲しみだけじゃない、これは喜びの涙だ。

大の大人が情けないはずなのに、僕は親代わりと番いの前で堰を切ったように泣き、2人はそんな僕を静かに見守ってくれていた。

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