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嫌われたくない
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この一瞬で、既に言わなければ良かったとノアは早々に後悔していた。
(コネハに嫌われたくない……)
結局、思考と行動の根本はそこにある。兄弟として、長い時間を仲良く過ごしてきた弟に嫌われたくないのだ。
覚悟を決めたはずなのに、再び心が揺れる。
それなのに、コネハの返事は予想もしないものだった。
「んなこと、最初から知ってるけど? なに今更?」
「へ……?」
決死の覚悟で伝えた言葉は、まさかの返答で空振りに終わる。
あまりの衝撃に、ノアの方が口をポカンと開けててしまう。弟は何のこともない顔で首を傾げ、「それで?」と続きを待っている。
続きなどない。これが全てで、終わりなのだから。
「しって、た? い、いつから?」
「いつからって……だから最初から。ノアが家に来た日のことくらい、覚えてるぜ?」
当たり前のように告げられた言葉で、再びノアに衝撃が走った。
それでは本当に最初から、コネハは知っていたのだ。自分と血の繋がりがなくとも仲良くしてくれていたのだ。その上で、本当の兄のように慕ってくれていた。
ノアは身体の緊張が一気に抜けて、ズルズルと弟の身体にもたれかかった。
「なんだ、そうなんだぁ。そうなんだぁ……よかった」
「意味がわかんねえ。血が繋がってなくたって、ノアはノアで、俺の一番の特別だってことは変わらねぇじゃん」
顔中に疑問符を浮かべるコネハが、いつもより可愛く見える。
血の繋がりがあろうとなかろうと、ノアはコネハの兄でいることを許されていた。本当の兄でなくとも、嫌われることはない。その事実がどれだけ嬉しかったか、きっとコネハには分からないのだろう。
「うん、いいんだ。わかんなくて」
弟の肩に頭を乗せてノアはふにゃりと笑い、それから大きな欠伸をした。
「ノア? 眠いのか」
「うん……」
「今日は色々あったもんな。もう寝るか?」
「ん……」
布越しに伝わるコネハの体温が、眠気をさらに加速させる。
今日も仕事は忙しかったし、変な人たちにも絡まれて大変だった。コネハも突然訪ねてきて、朝から寝坊して――そこまで思い起こして、どうしてコネハはこの家が分かったのか、いつからノアの居場所を把握していたのか、その理由を聞いていないことに気がついた。
だが一番言えなかったことをコネハに打ち明けて、その上で弟はなんともない顔をしてくれたのだから、今はそれ以上考えることをやめた。
安堵のあまりあっさりと夢の中へと沈むノアは、この時まだ気が付いていない。自分はコネハとは違う。竜人ではなく人間なのだと言えてないのだ。
眠るノアの頬をコネハの指がなぞる。
「こら、パジャマに着替えて……ったく、しょうがねえオニーチャンだな」
仕方がないと言いながらも、コネハは目を閉じてしまったノアの身体をゆっくりとベッドに横たえた。
警戒心の欠片もない、その兄の穏やかな寝顔を見つめる。
「……仮にノアと血が繋がってても、諦めてやんねぇよ」
褐色の指先が、頬を辿りノアの柔らかい首筋に触れる。
その小さな呟きは、誰に聞かれることもなく夜の空気へと溶けて消えた。
(コネハに嫌われたくない……)
結局、思考と行動の根本はそこにある。兄弟として、長い時間を仲良く過ごしてきた弟に嫌われたくないのだ。
覚悟を決めたはずなのに、再び心が揺れる。
それなのに、コネハの返事は予想もしないものだった。
「んなこと、最初から知ってるけど? なに今更?」
「へ……?」
決死の覚悟で伝えた言葉は、まさかの返答で空振りに終わる。
あまりの衝撃に、ノアの方が口をポカンと開けててしまう。弟は何のこともない顔で首を傾げ、「それで?」と続きを待っている。
続きなどない。これが全てで、終わりなのだから。
「しって、た? い、いつから?」
「いつからって……だから最初から。ノアが家に来た日のことくらい、覚えてるぜ?」
当たり前のように告げられた言葉で、再びノアに衝撃が走った。
それでは本当に最初から、コネハは知っていたのだ。自分と血の繋がりがなくとも仲良くしてくれていたのだ。その上で、本当の兄のように慕ってくれていた。
ノアは身体の緊張が一気に抜けて、ズルズルと弟の身体にもたれかかった。
「なんだ、そうなんだぁ。そうなんだぁ……よかった」
「意味がわかんねえ。血が繋がってなくたって、ノアはノアで、俺の一番の特別だってことは変わらねぇじゃん」
顔中に疑問符を浮かべるコネハが、いつもより可愛く見える。
血の繋がりがあろうとなかろうと、ノアはコネハの兄でいることを許されていた。本当の兄でなくとも、嫌われることはない。その事実がどれだけ嬉しかったか、きっとコネハには分からないのだろう。
「うん、いいんだ。わかんなくて」
弟の肩に頭を乗せてノアはふにゃりと笑い、それから大きな欠伸をした。
「ノア? 眠いのか」
「うん……」
「今日は色々あったもんな。もう寝るか?」
「ん……」
布越しに伝わるコネハの体温が、眠気をさらに加速させる。
今日も仕事は忙しかったし、変な人たちにも絡まれて大変だった。コネハも突然訪ねてきて、朝から寝坊して――そこまで思い起こして、どうしてコネハはこの家が分かったのか、いつからノアの居場所を把握していたのか、その理由を聞いていないことに気がついた。
だが一番言えなかったことをコネハに打ち明けて、その上で弟はなんともない顔をしてくれたのだから、今はそれ以上考えることをやめた。
安堵のあまりあっさりと夢の中へと沈むノアは、この時まだ気が付いていない。自分はコネハとは違う。竜人ではなく人間なのだと言えてないのだ。
眠るノアの頬をコネハの指がなぞる。
「こら、パジャマに着替えて……ったく、しょうがねえオニーチャンだな」
仕方がないと言いながらも、コネハは目を閉じてしまったノアの身体をゆっくりとベッドに横たえた。
警戒心の欠片もない、その兄の穏やかな寝顔を見つめる。
「……仮にノアと血が繋がってても、諦めてやんねぇよ」
褐色の指先が、頬を辿りノアの柔らかい首筋に触れる。
その小さな呟きは、誰に聞かれることもなく夜の空気へと溶けて消えた。
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