ショートストーリーまとめ

てんつぶ

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方言 20230722

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関西から東京に引っ越した受けくん。面白いこと言って~って振られるけど別に持ちネタもないしお笑いにも興味無い。面倒くさくて標準語を喋ろうにも微妙にアクセントが違うため馴染みきれない。
弄られる事に嫌気がさして周囲と距離を置いていた所に攻めくんと出会う。
この攻めくん、東方出身で方言を全く隠さない。周囲は攻めくんを弄るけど華麗な返しで場を盛り上げるのだ。
すげえな、とこっそり尊敬して見ていると攻めくんと目が合う。
そこから喋ってみれば妙に気があった。趣味も近くて食べ物の好みも合っていて、出身地は全然違うのにまるで幼なじみだったような親密さになった。

だけどある日、共通の友達が攻めくんの悪口を言ってくる。いわくあいつは田舎者だとか、喋りが変だとか。そんな事だ。
「俺も関西の田舎もんやけど?」と言えば、受けくんは関西だからとか妙なことを言う。
地方に優劣なんかない。
そう受けくんは言い切った。
攻めくんは自分よりよっぽど博識で、出身地で侮られるような人間じゃない。それに歌うように流れる東北弁は聞いていて心地の善いものだ。
イライラしながら立ち去ろうとするとすぐ後ろに攻めくんが立っていた。
こいつらの悪口耳に入っちゃったかな、と焦る受けくんの肩を攻めくんは抱き笑顔で彼らに言った。
「⚫⚫⚫⚫⚫、⚫⚫」
訛りがきつくてその場にいた誰も意味が分からずポカン。攻めくんはにっこり笑って、受けくんの手を引いて歩く。
「なんて言うたん?」
「ん?どっちが田舎者だよ低脳、ってニュアンス。あいつらも上京組だべ」
受けくんは、まさかあの攻めくんが面と向かって他人を罵ってるとは思わず目を見開いた。
攻めくんはちょっとだけ照れくさそうに言う。
「そりゃ好きな子が俺ば庇ってくれてんだもんよ」
受けくんは目をまんまるにした。そしてこんな所も気が合うんだと攻めくんに同じ想いを伝えると、今度は攻めくんが目を見開いて、それから2人で顔を見合せて笑った。

受けくんの言葉に少し東方の言葉が混じる。攻めくんもたまに関西弁のアクセントになる時があって。
それくらい長い長い月日を、あれからずっと一緒に過ごしたのだった。


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