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王様と平凡な奴隷 20240504
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ある国の王様の元に、それはそれは平凡な奴隷がいた。
奴隷は何ひとつ優れた様子もないというのに、王様に愛されいつも幸せそうに笑う。アチラの具合が良いのだろうと陰口を叩かれていたが、奴隷は王様が守ってくれたからいつも笑顔だった。
王様の統治で国は栄えどんどん豊かになる。神に愛されたようなその国は、周辺国が疫病や不作で苦しんでいる時でも国民は豊かに暮らしていた。
皆王様に感謝していた。ただ一つだけ、奴隷を愛し妃を娶らない事だけが問題だった。王様は甥を王太子に据えていたけれど、皆は王様にもっとふさわしい、優れた人物と一緒になってほしかった。少なくとも奴隷でなければ誰でもいい。だけど王様は奴隷以外いらないと全て拒絶した。
ある時、奴隷を暗殺者が狙った。命は助かったものの深い傷を負った。嵐が起こり、国中の草木が枯れた。
ある時、貴族令嬢たちが奴隷を取り囲みいじめた。ほとほとと涙する奴隷に溜飲を下げた令嬢たちは、その数日後原因不明の病で亡くなった。
だが王様は当然お怒りになる。あまりの怒りに被害者である奴隷の方が王様を宥めるしまつだった。
奴隷は自分の存在がこの国の人たちに煙たがられていることを知っていた。それでも王様を愛していたからそばにいた。けれどこのままでは王様がだめになってしまう。
奴隷は涙を拭いながら城を去っていった。
王様は激昂し周囲は安堵した。奴隷を探させたが見つからない。
誰も探す気がないのだと王様が気づいたのは、奴隷がいなくなって半年も経った頃だ。
その頃には国には原因不明の疫病が流行り、日照りに水が枯れ、国民は苦しむようになっていた。
王様は言った。
「あの子はこの国に必要なのだ。あの子の微笑みは幸福となり、悲しみは災いとなる」
王様はついにおかしくなったのかと周囲は思った。だがどんな対策を講じようとも国はみるみる傾いていった。
1年後、病に伏した王様のために国中をあげて奴隷を探した。そしてようやく見つけ、王様の元に連れて行った。
王様は奴隷と会った途端、みるみる元気になった。
涙を流して抱き合う王様と奴隷。すると枯れていた草花は咲き乱れ、恵みの雨が降った。疫病などまるでなかったかのように国民は元気を取り戻し、季節外れの麦穂が畑を揺らした。
城中の人間が奴隷はただの奴隷ではないと理解した。それと同時に真実二人が愛し合ってる事も。
それから数十年経った。
甥に冠を譲り、退位した王様は静かな土地で奴隷と二人で幸せに暮していた。穏やかで優しい日々は、奴隷をいつも笑顔にさせていた。
そんな奴隷が最後に涙を流した。王様が亡くなったのだ。国中を悲しみの雨に濡したが、その雨は川となり国を豊かにした。
王様を追うようにして奴隷も亡くなった。二人の亡骸は終の棲家の側に埋められる。いつの間にかそこには大きな木が生え、金色の実がなった。
どんな病でも治してくれるというその実は、奴隷が愛した王様の国をいつまでも栄えさせたのだった。
終
奴隷は何ひとつ優れた様子もないというのに、王様に愛されいつも幸せそうに笑う。アチラの具合が良いのだろうと陰口を叩かれていたが、奴隷は王様が守ってくれたからいつも笑顔だった。
王様の統治で国は栄えどんどん豊かになる。神に愛されたようなその国は、周辺国が疫病や不作で苦しんでいる時でも国民は豊かに暮らしていた。
皆王様に感謝していた。ただ一つだけ、奴隷を愛し妃を娶らない事だけが問題だった。王様は甥を王太子に据えていたけれど、皆は王様にもっとふさわしい、優れた人物と一緒になってほしかった。少なくとも奴隷でなければ誰でもいい。だけど王様は奴隷以外いらないと全て拒絶した。
ある時、奴隷を暗殺者が狙った。命は助かったものの深い傷を負った。嵐が起こり、国中の草木が枯れた。
ある時、貴族令嬢たちが奴隷を取り囲みいじめた。ほとほとと涙する奴隷に溜飲を下げた令嬢たちは、その数日後原因不明の病で亡くなった。
だが王様は当然お怒りになる。あまりの怒りに被害者である奴隷の方が王様を宥めるしまつだった。
奴隷は自分の存在がこの国の人たちに煙たがられていることを知っていた。それでも王様を愛していたからそばにいた。けれどこのままでは王様がだめになってしまう。
奴隷は涙を拭いながら城を去っていった。
王様は激昂し周囲は安堵した。奴隷を探させたが見つからない。
誰も探す気がないのだと王様が気づいたのは、奴隷がいなくなって半年も経った頃だ。
その頃には国には原因不明の疫病が流行り、日照りに水が枯れ、国民は苦しむようになっていた。
王様は言った。
「あの子はこの国に必要なのだ。あの子の微笑みは幸福となり、悲しみは災いとなる」
王様はついにおかしくなったのかと周囲は思った。だがどんな対策を講じようとも国はみるみる傾いていった。
1年後、病に伏した王様のために国中をあげて奴隷を探した。そしてようやく見つけ、王様の元に連れて行った。
王様は奴隷と会った途端、みるみる元気になった。
涙を流して抱き合う王様と奴隷。すると枯れていた草花は咲き乱れ、恵みの雨が降った。疫病などまるでなかったかのように国民は元気を取り戻し、季節外れの麦穂が畑を揺らした。
城中の人間が奴隷はただの奴隷ではないと理解した。それと同時に真実二人が愛し合ってる事も。
それから数十年経った。
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そんな奴隷が最後に涙を流した。王様が亡くなったのだ。国中を悲しみの雨に濡したが、その雨は川となり国を豊かにした。
王様を追うようにして奴隷も亡くなった。二人の亡骸は終の棲家の側に埋められる。いつの間にかそこには大きな木が生え、金色の実がなった。
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