よろしい、ならば電柱だ。

てんつぶ

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オフ会、それはリアルとの遭遇

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 翌日、俺はデンノと一緒に電柱オフ会に出かけた。
 SNSを始めて一年足らずの俺は、地方から集まる電柱仲間と初めて会える事に浮かれ切っていた。電車で都内某駅に向かう車内でも、SNSのTL(タイムライン)はオフ会参加者の実況で溢れていた。

「都内の〇〇駅前は無電柱化計画進行中かあ。都は何考えてるんだろうな?人々の癒しを奪うのか」
「お前が何考えてるのかわかる自分が怖いよミハシ」

 ちょうど昼前のこの時間は、観光客も含め山手線は満員だ。俺の小さな呟きすらデンノ拾われて突っ込まれてしまう有様だ。

「言っとくけどお前の独り言割とでかいからな?何回も言うけどお前親に感謝しろよ。イケメンだから許されてる事ってあるんだぞ」

 幼馴染の言動は今日も切れ味が鋭い。185cmの俺より小さいデンノは満員電車の中では俺の腕の中にすっぽりと納まってしまっているというのに。170あったかな?無かった気がするぞ、言うと怒るから言わないけど。

「チビじゃない! お前がデカいんだ!!」

 俺は何も言ってないのに、何を察したのかデンノは勝手に怒りだす。意外とこいつ、身長と平凡な顔をコンプレックスにしてるんだよなあ。別に悪くないからいいと思うのに。
 何故か俺の思考を容易く読むデンノと揺られながら、俺たちは目的の駅を目指した。


 一度乗り換えて約束の駅前の改札を出た。
 ここは都内でも珍しく木柱の電柱が多く残っているエリアだ。雑多なこの街はコン柱――コンクリート柱も多様なものがあると、都内在住のガチ勢推薦でここでオフ会となった。見渡すと確かに都内では珍しい光景が広がっていた。

「お?あそこ支線柱多めだな……」
「いやそこじゃなくね?お前さっきからチラチラ見られてるあの集団電柱仲間だろ」

 デンノに袖を引かれて支線をやると、何人か集まる集団がこちらを見ていた。あの電柱の着ぐるみを着ているのは――間違いない。
「熱烈大佐ですか!?初めましてハッシーです!SNSで見た恰好してるからすぐ分かりました!」
 小走りで近寄る。間違いない、TLでいつも電柱コスプレで電柱との逢瀬を楽しむ熱烈大佐だ。その写真に「マカロニ?」と突っ込みを入れるのはもはや様式美となっている。

「ハッシー?あのハッシー?先週『電柱を舐めまわした』ってツイートしてタイムラインをざわつかせたハッシー?まじかイケメンすぎないか?」
「ちょ……!それは内緒にしてくださいよ熱烈大佐!幼馴染一緒なんですから……!」
「いや悪いけど大分前からお前のフォロワーになってるしな?全部知ってるしな?」

 デンノ、俺のフォロワーだったのか!?いつのまに……どのフォロワーがデンノだ!?ということは俺の恥ずかしいツイートが全部筒抜けだったということか!?

「ハッシーほんとイケメン!ボクこももだよ!よろしくね!」
「こももさん!?えっ、初めまして……!」

 そういって手を握ってくるのはロリータ服に身を包む……男だ。まて、こももさんは女の子だと思っていたぞ?たしか電柱とちくわぶとBLを愛してるって言わなかったか?電線×電柱?電柱×電線?のマンガ本を描いてるって聞いたからてっきり女の子とばかり。小さくて可愛らしい顔をしているが、多分アラサーなんだろうな。

「おい、あんまりこいつに触るな。男でも妊娠するぞ」
「しないよ!?デンノお前何言ってんの!?」

 彼女なんてちょこちょこしかいたこと無い俺を、何故かデンノはこももさんから遠ざける。

「あっそちらがハッシーの幼馴染?あの世話焼きのおかあさんみたいな人……?ふふっほんとリアルでもお母さんみたい~」
「……まああんた――こももさん?より俺若いから。どっちかっつーとあんたがお母さんじゃね?」

 あれ?なんだ火花が飛び散ってる感じ。空気が悪い……?どうした二人とも。周りの参加者も空気を察して押し黙ってしまった。ここは俺が場を和ませる、べきか!?

「電柱の直径をご存知ですか?約30cmですよ」
「えっ円錐ってこと忘れないでよハッシー?段々細くなる電柱の……電柱を……電柱に……ね……?ああっ!電柱のくせに!電柱のくせに!!変圧器ちゃあああん頑張ってええええ!!」

 和まなかったけど場は逸らせたようだ。デンノが「こえー」と呟いているがそっと視線を逸らす。こももさんはSNSでもちょっと独特な人なのだ。いや、俺以外みんな個性が強いといっても過言ではない。

「このオフ会マジでやべーな……。ミハシが普通に見えてくるわ」

 デンノのつぶやきは聞こえなかったことにする。
 ひとまず今日の参加者は俺たちを除いて5人だ。他のメンバーにも挨拶をし、俺たちは予約していた店へと向かった。
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