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26.王子を解呪したよ~!

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 僕は仕方なく母とお茶を飲んだ。意味分かんないよ。心配してくれてるのは分かるけどさぁ。僕の部屋に無断で入るのは止めてほしいよね。僕だってお年頃の男の子なんだからさぁ。
 早く、父上とばーちゃん帰ってこないかなぁ。
 と、思っていると玄関の方が騒がしくなった。
 なんだろ? 父上やばーちゃんが帰ってきた位では、こんなに騒がしくはならないよね。

「テテ、参りましょう」
「母上?」

 僕の頭の上に『???』て、出てるんじゃない? て、思いながら母について玄関に向かったんだ。

「うわ……マジ?」
「やっぱりね。テテ、ご挨拶よ」
「はい、母上」

 母と一緒に歩いて行った。

「テテ! 感謝するぞ!」
「えっ!?」

 ソフィアのお兄さん、第2王子のエーピオス殿下に抱きつかれちゃった。背中をバシバシ叩かれてながら。
 なんで来てんの? 王子なのにさ。護衛の人達をいっぱい連れてさ。

「テティス、王子殿下がどうしても礼を言いたいと仰ってな」

 父よ、断ろうよ。そこはね、しっかりと辞退してよ。

「あー、エーピオス殿下。とんでもありません」
「いや、テティスのお陰で頭にかかっていた靄の様なものが晴れた。自分が自分を制御できない様な感覚があったんだ」

 あら、そうなの? それが分かるって事は、まだ精神干渉は軽かったんだね。
 正気に戻って良かったよ。

「殿下、とにかく部屋の方へ」
「ああ、叔父上」

 叔父上って僕の父上の事だよ。王子からみたら父親の弟だからね。
 みんなで、応接室に移動した。王子の護衛の人達も一緒にね。
 一応、お忍びらしいからこの人数なんだって。それでも、多いよね。王子の側に5人だもんね。外に10人はいるでしょう? 目立っちゃうよ。全然お忍びになってないよ。

「レウスとイデスの報告を聞いた。私も聖女候補に操られていたと。私達王族は皆、状態異常を防御する魔道具を常に持っている。それでも、あのざまだ。レウスに解毒薬を飲まされるまでは、自分が操られているとは自覚がなかった。これは、忌々しき事態だ。
 テティスが解毒薬を作ってくれた事、感謝するぞ。テテ、よくやってくれた!」

 はいはい、もういいからさぁ。早く帰ってよ。

「テテ、せっかく俺が王子らしくしているのに、その目はなんだ?」

 え……普通じゃん?

「エーピオス殿下、話を進めても宜しいかな?」
「ああ、叔父上。頼む」

 エーピオス殿下は優雅に紅茶を飲む。王子らしく優雅にね。
 そして、出されたお茶菓子をつまんで口に入れた……

「うまッ!!」

 はいッ、王子の仮面が外れましたッ!

「でしょう? 父上の新作ですよ」
「テテ、叔父上はまだ料理をしているのか?」
「はい、時々ですよ。でも美味しいでしょう?」
「ああ、絶品だ」

 王子殿下は父の新作、アーモンドのフロランタンを頬張りながら答えた。
 本当、父の料理の腕は一流だよ。
 今はスィーツばかりだけど、時間があればコース料理だって作っちゃう。プロ顔負けだよね。

「テティス、殿下をドラゴンアイで見てほしい」
「父上、エーピオス殿下をですか?」
「そうだ。解毒はしたが、隷属にかかっている可能性もまだ残っている」

 そうだったよ。隷属と聖水の2本立てだったね。
 じゃあ殿下も聖水を飲んでるって事だよね? 一体いつ飲んだんだよ。

「じゃあ、殿下」
「ああ。遠慮なく見てくれ」

 お言葉に甘えて……

「あー、やはり隷属がありますね。殿下の様子を見ていると、かかりきっていないみたいですが」
「テティス、やはりか」
「はい、父上。隷属も解きますね。『ディスペル』」

 ――パキンッ!

 えッ!? 何かに跳ね返された?
 隷属なら『ディスペル』で解けているはず。ドラゴンアイで確認してみよう。

「……え!?」
「テテ、どうしたの?」
「ばーちゃん、確かに隷属なのに……」
「テテ……まさか!?」
「ディスペルで解けないよ! 跳ね返された!」
「何!? どう言う事だ? テティス、殿下にかけられた隷属がディスペルで解けないのか?」
「はい、父上。さっき、確かにディスペルしたのです。でも何か跳ね返された感じがあって……
 それで、念のためドラゴンアイで見てみるとまだ隷属が残っているのです」
「ブラン、出てきておくれ」
「はいな、ばーちゃん」

 ポンッと煙のように白いトカゲの様なブランが姿を現した。

「なんだ、それは? トカゲの子供?」
「とおぉーッ!!」

 ブランが王子にキックした……が、小さいもんね。
 きっと、痛くもなんともないよ。ペチッて音がしたしね。

「なんだ?」

 ほらね、なんともない。

「殿下、今は小さくなってますが白いドラゴンです。テテに加護を授けてくれていて、ブランと言います」

 ばーちゃんが王子に説明してくれたよ。ブランはまだ腕を組んで怒っているね。
 短い腕だね~、ぷぷぷ。王子がポカンとしてるよ。

「テテ、なんか失礼なこと考えてるだろ」
「ブラン、そんなことないよ~、アハハハ~」
「笑ってるじゃねーか!」

 アハハハ、いやいやごめんね~。

「ブラン、聞いていたでしょう? どう言うことかしら?」
「ばーちゃん、最初に言ってたじゃないか」
「ブラン、なに?」
「テテ、ばーちゃんと最初に話してたろう? 言葉に魔力をのせるってさ」
「あ……でも、ブラン。ドラゴンアイでみたら確かに隷属だったんだよ」
「ああ、だから少しずつ重ねているんだ。人間はこんな使い方をしない。人間が使う隷属と言ったら、奴隷につける魔道具くらいだ。テテ、錬金術で解析してみな?」
「殿下、協力してもらって良いですか?」
「ああ、テテ。なんでもやってくれ」
 
 じゃあ、ちょっと失礼して……
 僕は殿下の前に立った。

 パチンと指を鳴らすと1本のスクロールが現れた。

「スクロールstart up……術式展開」

 スクロールが空中でスルスルと広がる。

「ほう……」
「殿下、暫し我慢を」
「ああ、すまん。錬金術をみるのは初めてなんだ」

 王子がなんか言ってるけど。
 
「解析……表示して」

 僕がスクロールに手を伸ばし魔力を通し予め登録してあった術式を発動させる。
 
「確かに隷属には違いないんだけど、ディスペルじゃあ無理だ。」

 これ以外の隷属を知らないから、違いが分かんないね。
 僕はもう1本スクロールを展開する。

「スクロールstart up……展開」

 スクロールが空中でスルスルと広がる。
 
「解読して……魔法陣展開」

 僕がスクロールに手を伸ばし魔力を通すと、殿下の頭上に魔法陣が展開される。

「解呪実行……」

 魔法陣が光り出し、そのまま王子殿下の体を頭の先から包み込んでいく。
 
「魔法陣登録……終了」

 クルクルッとスクロールが僕の手に戻る。

「テテ、いいか?」
「ブラン、うん。これで隷属は解けているはずだよ」
「じゃあ、もう一度ドラゴンアイだ」
「うん……よしッ」

 今度は無事に隷属は解呪されていた。

「大丈夫、ちゃんと隷属は無くなっているよ。」

 良かったよ。ブラン、ありがとうね。

「いいってことよ~」

 小さい白いトカゲさんだけど、頼りになるね。

「テテ、失礼だな」

 ありゃりゃ……なんでバレるかな?

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