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(10)彼の二つ目の秘密
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「ところで、もう一つの秘密って何?」私は、この際だから、丈さんの抱えている秘密を聞いておきたいと思った。それが、彼を苦しめているような気がしたから。電話の前で少しの沈黙が流れた。やがて、丈さんはフーと息を吐くとしゃべり始めた。「そうだよね。この際だから言った方がいいよな。あやふやにしてはいけないことだし…あと、酒の力をかりないと言えない気がするんだ。」 「僕には…子供がいる。それも僕と君の年齢より僕の子供と君の年齢の方が近いんだ。」彼は重々しい口調でゆっくり話した。そして、話し終わった後、彼は「こんな僕の事嫌いになるよね?」と不安げに聞いてきた。正直言うと、彼の話は重くて頭がまわらなかった。子供?それも私と年齢が5歳くらいしか離れていない。知りたくもなかった。でも、その時はその事を自分の奥にしまえるほど私は彼をもう愛していた。すぐ気づくことはできなかったが…「もちろん、今まで話していた丈さんの人柄は嘘じゃないんだよね?私はあなたの顔だけを好きになった訳じゃないよ。顔だけを選んでいたら同じ学校の子選んでいるよ。それに過去は変えられないしね。」と返した。これは自分に言い聞かせている言葉でもあった。彼はこの言葉を聞くと、電話ごしで泣いていた。「嘘じゃないよ。僕は君の事がとても好きだから、言い出せなかったんだ。君が離れていく事が怖かったんだよ。ごめん。それにこれ以上僕は君に嘘をついてない。もちろん、ちゃんと離婚してるし、君に迷惑かけたい訳でもない。信じてくれ。」と。
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