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1節[第三章]
第二十七話『五年後の約束』
しおりを挟むすっ好きって…
「“好意を持ってくれるのは嬉しいわ。けれど、私には大切な婚約者がいるから…。”」
「“うん!わかってる。だから僕はその婚約者から君を奪うために全力で動くから!覚悟しててね!”」
「“あっいや…私にはエイム様が…”」
「レイン?」
「ひゃぁっ!?エイム様!!」
びっビックリした…。急に後ろからハグされたら心臓に悪い…
……。
ハッハグ!?ちょっと待って!私今エイム様にハグされてるの!?嘘でしょ!?顔あっつ!!///
「どっどうされたんですか?」
「ん?いや、私の大切な婚約者が口説かれている気がしてね。」
いや口説かれている気がしたって…鋭すぎません!?というか婚約者と言っても私悪役令嬢ですよ!?そんな愛されるヒロインと同じ扱いしていいの!?
「“こいつが君の婚約者?”」
「“えっ…うん。私の婚約者、エイム・プレント様だよ?”」
「“ふーん”」
なっなんだか険悪な雰囲気に…。エイム様はレインの婚約者ではあるけど、エイム様が幸せになるためには、悪役令嬢である私とはいつか離れないといけないわけだし…。その後ヤヌア様、スベイス様、フィブア様に迷惑をかけないように森の奥でひっそり暮らす予定だったから、ドラゴンと暮らすのもありなのかも…。
でも今すぐってわけにはいかないのよね…私と同じ転生したヒロインがストーリー通りに動く限り、みんなの死亡フラグがなくなることはないだろうから。数年後くらいに一緒に過ごすって感じにしたいな…。
「“あのね?今すぐ一緒には無理だけど、私が五年後ここにまた来た時にまだ私を好きだったら、その時はもう一度告白してくれない?”」(ニコッ
「“五年後?”」
「“そう、私が二十歳になったら、必ずあなたに会いに来るわ。その時に、まだ私を好きなら誘って?”」
この言葉はエイム様には分からない。だから、これは全てが終わったあとの保険のようなもの。私が生きるための、安全な居場所を作っておくためのお願い。
「“わかった!五年なんて僕にしたらお昼寝してる時間と変わらないからね!君への気持ちは、五年ごときでは変わらないよ!”」
そう言って少年の姿の子どもドラゴンは私の右手をとった。
「“僕の名前は、[ラバ・ファフニア・ルーズラント]。”」
私はこの時、公式サイトに載っていたドラゴンの設定を思い出していた。
ドラゴンの名前。
それは、高貴なドラゴンが持つとされている正式な名前。神から授けられたそれは決して安易に教えてはならない特別なもの。ドラゴンが名を教える時、それはその者に永遠に傷つけず、命をかけ守り続けるという誓いを立てたことを意味する。
ドラゴンは最長で一万年以上生きるとされている。その一生の中で 誓いをする相手は一人のみ選ばれる。
そしてその誓いの証は、そのドラゴンが誓いの際に口付けをした場所に刻まれる。
公式サイトの隅の方にあったドラゴンの設定。名前を渡す命をかけた誓い。
このこの名前を聞いた瞬間、思い出した。今私は、この子とその誓いを立てている。赤いオーラがドラゴンと私の周りを囲んでいる。
「“この時より、レイン・ウィンターへ名を預けん。我が名に誓い、そなたを一生守ると誓おう。レイン・ウィンター、我が名を呼び誓いに答えよ。”」
あっ…誓いは互いの了承の上で成り立つものなんだ。ここで名を呼んで初めて誓いが完了するのかも。設定では文でしか書かれてなかったから…。こういう設定分からなかったことも、ゲームの中に入るとわかることもあるんだな…。
ドラゴンからの誓いは名誉の証。断ったらドラゴンの名を汚すことになる。まぁつまり、誓いが始まったら最後、断れない。
「“ラバ・ファフニア・ルーズラント。我が命に名を預けて下さったこと光栄に思います。どうかこの誓いが永遠でありますように…。”」
ラバ・ファフニア・ルーズラントはとっていた私の右手の甲にキスをし、誓いの証が刻まれた。右手には赤いドラゴンの形をした印が残っている。
「“これで君との誓いは完璧だよ。僕は五年ここで待つけど、レインが僕を呼びたくなったらいつでも呼んで!その証に僕が来て欲しいって願ってくれれば、すぐに駆けつけるから!”」
まだドラゴンの中では幼いはずなのに、一生の誓いを私にしてよかったのかな…。でも心強いのは、確かな気がする。
「“ありがとう。ところで、呼ぶ時はちゃんと呼ばなきゃダメなのかな?例えば、私はレインでいいように、あなたをラバって呼ぶのはダメなのかしら?”」
「“なんでもいいよ?レインが呼ぶ名なら僕は嬉しいから!”」(ニコッ
なんだか弟が出来たみたい…。可愛い…。
「“じゃあ[ラバ]!これからよろしくね。”」(ニコッ
「“よろしくね!レイン!”」(ニコッ
こうして私はドラゴンのラバと誓いを交わし、五年後再び会う約束をした。エイム様とフィブア様は私たちの会話を聞き取れないため、改めて詳しく教えるように言われた。
ドラゴンの親子と別れる時に私は何気ない質問した。
「“ラバって今何歳なの?”」
好きなってくれたのは嬉しいけど、もしも年齢差がありすぎたら付き合うのはかなり私的に気が引けるんだけど…。
「“歳か…今年で五十歳かな!”」
ん"ん"ん"ん"ん"!?!?
「“ごっ五十歳!?”」
「“あっ!人間で換算したら十歳くらいだから、レインは何歳なの?”」
あっ良かった…十歳か。いや、良くない!十歳!?私十五歳よ?愛に年齢なんて関係ないとか言うけど、罪悪感はかなり高いよこれ!
「“わっ私は十五歳…。”」
「へ~!レインって大人びてるからもっとお姉さんかと思ってたけど、まだまだ女の子だね!”」
…何この子。ドラゴンだからとかの前に十歳じゃあないでしょあなた。
「“でもそっか!二十歳までで五年後だから今は十五歳だよね!レインが二十歳になったもっと綺麗になってるだろうし、楽しみに待ってるね!”」
「“そうね、ドラゴンとは時の速さが違うだろうけど、私も五年後にあなたと会うのを楽しみにしているわ。”」
悪役令嬢である私が二十歳まで生きていたらいいんだけどね…。
その後、エイム様と私はフィブア様達と共に首都へ向かった。
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