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1節[第三章]
第三十一話『神愛を受けし者』
しおりを挟むここはどこ!?私は誰!?
って私はレイン・ウィンター!!そんなマンガみたいな展開になるかい!!
なんて1人でノリツッコミしてみたけど…。
本当にここはどこなんだろ?
光の中に引き込まれたと思ったら、もの凄く綺麗な森の中で目が覚めるし。
辺りを見渡して見ても森以外に気になるところは特に…
「“やぁ初めまして、神愛を受けたお姫様。”」(ニコッ
「へっ??」
突然聞こえた声に思わず振り返る。その先には緑のグラデーションがかった髪が印象的な男性が立っていた。毛先にかけて色が薄くなっており、光が反射してキラキラと輝いている。
「“まさか、あなたからこちらに来て下さるとは思いませんでしたが…こちらとしては嬉しい限りです。”」
話しかけてきた男性は一挙一動に清楚な雰囲気が漂う美しい動きをしていた。しかし人間は美し過ぎると逆に異質な感覚を覚えてしまう。本能なのか、この人が人間では無いように感じた。
「“あなたは誰?”」
「“僕かい?僕はクリーン、簡単に言うと妖精の王様だよ。”」
妖精の王様!?って事はここは妖精達が住む森ってこと?一体全体どうなってるのこの世界!
「“君には1度会っておきたいと思っていたんだよ。”」
「“私に会っておきたかった?”」
「“そうそう!まずはこっちに来て?”」
そう言われ案内されたのは、花で作られたアーチの前だった。クリーンさんが指を鳴らすと、花のアーチの先が光に包まれ彼はその先へ歩いて行く。私は後を追いかけて、光の中へ足を踏み入れた。
しばらく光の中を歩いていると再び美しい森が現れた。開けたスペースに白い丸机と椅子が3つ用意されている。
「“さぁどうぞ。”」
クリーンさんが椅子に座るように進めてくれた。私は椅子のひとつに座り、向かいの椅子にクリーンさんが座った。
すると、ピンク色の小さな光が私の前に現れた。ピンク色光は私の傍に可愛い花柄のティーカップを置いた。
光で見えていたそれは、光が薄れ少しづつ形が鮮明になってきた。小さな薄ピンク色の蝶々のような羽根を持ち、髪もピンク色のツイテールで正に花の妖精のような姿だった。
「“初めまして神愛ちゃん、私は春の妖精エフェラル…よろしくね。”」
「“よっよろしく…”」
優しく手に触れてくるエフェラルさんはおっとりとした性格のようで、私の肩にふんわりと座った。
「“そのティーカップはね、お花の香りがするカップなの。”」
エフェラルさんの言う通りカップからは微かに花の香りがしている。春の妖精の力なのかこのカップの性能なのかは分からないが、どこか心地よい香りだ。
「“エフェラルは君が気に入ったみたいだね。さすが神愛を受けた子だ。”」
さっきからその[神愛]ってなんなんだろう?
クリーンさんは私を神愛を受けた子と呼ぶ。神愛とは一体なんなんだろう。聞いてみるか迷っていると、エフェラルさんと同じような小さい光が私のカップに紅茶を注いでいく。
小さい光は私のカップに淹れ終えると、クリーンさんの方にも同じように淹れていく。ポットを真ん中に置き、光は私の前でフワフワと飛んでいる。
薄い空色をした光は、徐々に姿を現してきた。エフェラルさんのような小さな蝶々のような羽根はピンク色ではなく、澄んだ空色をしている。髪はストレートに伸ばし、白色の髪を綺麗になびかせていた。
「“私は冬の妖精ヘルペンと申します。紅茶は冬の力を混ぜ込んだものとなっております。良ければご賞味下さい。」
「“あっありがとうございます!”」
ヘルペンさんはとても礼儀正しく、1度礼をしてからクリーンさんの元へ戻った。
「“ありがとうエフェラル、ヘルペン。さてお茶も入った事だし、色々お話しよう。まずは沢山あるだろう君の質問から話してご覧?」
クリーンさんは笑顔を浮かべながら私の方をまっすぐ見つめてきた。沢山聞きたいことがあるのは事実だけれど、まず聞かなければならないのは1つ。
「“クリーンさんがよく仰っている神愛ってなんなんですか?”」
私は転生前に神様に会ってチート能力を得た。結構乗り気な神様だったから、もしかしたら能力をくれたのは気まぐれかもしれない。それでも、力がなければ出来なかったことが沢山あった。
もし神様がこの世界にいるなら、もう少し詳しく聞かなくちゃ。ヒロインの事、同じような力の事、そしてなぜ力を授けてくれたのか…
まだまだ私には知らないことが沢山ある。今はクリーンさんから聞けるだけ聞いて起きたい。
クリーンさんは少しだけ頭を傾げ悩んでいるそぶりをしてから決心したように私を見つめた。
「“まずは私達について説明しよう。その方が君の知りたいこともわかるさ。”」
「“分かりました!お願いします!”」
クリーンさんはこの世界の均衡を保つ3つの種族について説明してくれた。
1つ目が私の前にいるクリーンさんが率いる妖精族。彼らが命の成長を促し、弱気を助け世界を平等にする使命を果たしているらしい。
2つ目は魔王が率いる悪魔族。命を壊し、新たなものへの循環を促しているらしい。命がある限り破壊はどんな世界にも存在するようだ。
そして最後の3つ目は神が率いる天使族。悪を罰し、新たな生命を作り出す役割を担っているらしい。
つまり、天使族が生命を作り出し、妖精族が成長させ、悪魔族が壊すという流れで世界の均衡を保っているという事だ。
妖精族には4人の幹部が存在し、それぞれ季節を司っている。先程カップと紅茶を用意してくれた、エフェラルさんとヘルペンさんもその幹部の1人だそうだ。
悪魔族の王である魔王は幹部を作る事が面倒で作らなかったらしい。クリーンさんが呆れたようにため息をついたので想像していた魔王のイメージがガラガラと崩れ去った。
神様が治める天使族は私が転生前から聞いたことのある名前が幹部に据えられていた。いわゆる四大天使というやつだ。
あちらは方角を司っているらしく東がラファエル、西がガブリエル、南がミカエル、北がウリエルとなっているらしい。
頭の中で図形を組みたててみたけど多分こんな感じ…⬇
そこからクリーンさんは神愛について話してくれた。かなり複雑だったが簡単にまとめると
神愛とは、神様が気に入った相手に授ける力のことだそうだ。
他にも妖精が授けたり悪魔が授けたりするらしいが、天使族は人間に関心がなく力を授けることは滅多にないんだとか。
そんな中、稀に授けていたのは妖精王であるクリーンさんぐらいだったらしい。神様は人間に関心がなく、これまで授けた人は誰一人としていなかった。
何故か私には軽くつけてくれたけど。
クリーンさんが私を知ったのは、神様が遊びに来た際にポロッと言った時だったらしい。そこからクリーンさんは、私と会える機会を探していたそうだ。
「“どう?君が知りたかったことは知れたかな?”」
「“あっはい!なんとなくですが、分かりました!”」
紅茶もなくなりすっかり話し込んでしまったが、思っていた以上に情報が手に入った。
しかし、今まで授けたことがなかった神様がなんで私に授けてくれたんだろう。もう一度会って理由を聞いてみたいな…。
ヘルペンさんが追加の紅茶を注ごうとした瞬間、私たちの頭上に神々しい光が現れた。その眩しさに思わず目を瞑る。
光が落ち着き目を開けてみると、後ろから手を回してきている一人の男性がいた。男性は金色の瞳に真っ白な髪を1つ結びにしている。
その姿はどこか見覚えがっあった。見た瞬間にあの時の記憶が蘇る。
「やぁ、元気だったかい?園田萌ちゃん…いや、レイン・ウィンターちゃん!」(ニコッ
「かっ神様!?」
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