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2節[第二章]
第五十五話『潜入開始』
しおりを挟むあの日から一週間後、私はヤヌア様とズハイ様と一緒に[シュナイダーリング学校]へ向かうため準備を整えた。
2人と一緒に登校するため、一旦ウィンター家で落ち合うことになっている。
制服はフィリエント家から直々に送られてきた。正直、制服を着ると懐かしい気分なる。
転生前は普通の学生だったからね。
「我が妹ながら制服が似合いすぎて困るわ…。」
そんなこと言ったらヤヌア様は完全に恋愛マンガのイケメン学生ですよ。
普通の制服のはずなのに、イケメンが着ると貴族の服に見えるのは、ゲームだけではないらしい。
いや、ゲームだけどね??この話は!
でも、目の前にいるのは次元が違うじゃん?
各有私も鏡で自分の姿を見た時は、これは学生じゃなくないか?と思ってしまったのも事実だ。
悪役令嬢はさながらに顔も可愛い。
しばらくすると、ズハイ様が制服姿でやってきた。
制服を来たヤヌア様とズハイ様が話している姿は、本当に友達と話している学生だった。
やっぱり私場違いでは??
そんなことを考えていたら学校に行く用の馬車が到着した。
本来なら馬車で登校するのは上位貴族だけなのであまり良くないのだが、なにぶん距離がありすぎるため近くまで向かい、そこから歩いていくことになった。
私たちがいるのはエイム様のいるプレント家が治める地区で、今回依頼してきたフィリエント家の治める地区とは接しているものの、学校とウィンター家は真逆に位置している。
ウィンター家とハーベスト家はプレント家の治める地区、フィーダー家とサマー家はフィリエント家の治める地区にそれぞれ属している。
プレント家とフィリエント家は互いが協力し国を支える国家権力級の家紋で、国は2つの家紋から見放された場合、国自体が存続できなくなる程の損害を負うことになる。
プレント家は武力、国の軍を動かして他の国への圧力をかける重要な役割を果たしている。
一方フィリエント家は財政、国のお金を管理している。医療施設や事業立ち上げの助力をしたりして、国の財政を良くする。
今回の学校もそのひとつなのだという。
ちなみに、なぜ地区の違う私達ウィンター家から選ばれたのかのかはズハイ様が話してくれた。
地区が違うからこそ、顔がバレにくい。潜入に向いている。
という事らしい。
しかし、ウィンター家だけでは把握出来ないフィリエント地区を知っている人を一人選ばなければならない。
身バレしやすいフィーダー家とサマー家の中でフィリエント家から選ばれたのがズハイ様なのだが、その理由が…
「お前ってメガネ外すと誰かわからへよな。」
「えっそう??」
こんな感じにヤヌア様が言うぐらい別人と化すため身バレしないだろうと思われたらしい。
ズハイ様はメガネを外すと、少し目つきの悪い感じになる。
メガネがない分、目の形がものすごく変わって見える。
まるで別人なため、ウィンター家であった時はかなりビックリした。
馬車の中で揺られながら、私はある心配をしていた。
いくら身バレしないからと言って、学校に急にイケメン学生が登校して来たら、どんなに普通にしていても必ず目立つ。
ただでさえ四代家紋の三男なのに、私だったら尊死してる。
今世の女性は可愛い煌びやかな人しかいないから私は目立たないけど、2人は絶対目立つ。
注目されないことがベストなんだから、登校から目立ったら意味が無い。
この作戦絶対人選アウトでしょ。
そんな不安を抱えながら馬車に揺られていると、ある路地で馬車が止まり学校への道を教えられた。
私とヤヌア様とズハイ様で学校へ歩いていく。
学校の門のところにはたくさんの学生が集まっていた。
ちょうど登校時間なため、学生が友達や先生と挨拶している姿が見える。
先生達には事情を話しているため、普通の学生として接してくれる。
絶対目立つという不安を抱えながら門の前へと向かう。
すると、案の定ザワザワとした雰囲気が立ち込め、女の子達がヤヌア様やズハイ様を見ているのが分かる。
そりゃいきなり門のところにイケメン2人来たらこうなるよね。
私は2人に挟まれた状態で歩いているため、視線を回避しようにも出来ない。
身をちじめて隠れようとすると、ヤヌア様が私の手を握りしめてくる。
思わず顔を上げてヤヌア様を見ると、少し拗ねているような表情をしていた。
私は少し小さな声でヤヌア様に尋ねてみる。
「ヤヌア兄様?どうされたんですか?」
するとヤヌア様はチラッと私の方を見て、微笑みながら握っている手を離した。
「俺から離れちゃダメやからね、レイン。」
「はっはい。」
ヤヌア様がなぜ拗ねていたのかは分からなかったけれど、機嫌が戻ったようだったので、私は一安心してヤヌア様の隣を歩いた。
「あの真ん中の女の子、すごい美人!」
「歩き方から華やかさが違うわね!」
「お近付きになれないかな~?」
門の傍に来た時からずっと聞こえるレインへの話し声。
そりゃレインは可愛いし綺麗やし見惚れんのもわかるけど、なんかモヤモヤすんねんな…。
レインは俺の最初で最後の兄妹やから、心配なんかな??
自分の気持ちが分からへん。
モヤモヤしていると、レインが話しかけてくる。
あぁ、やっぱり俺の妹は可愛ええな。
俺の中のモヤモヤは、レインのおかげですっかり消え去っていた。
一体あのモヤモヤは、何やったんやろうな??
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