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2節[第二章]
第五十九話『恐怖』
しおりを挟むあれ?ここは??
「気づきましたか?ラーヘル嬢。」
うっすら見える視界で当たりを見渡すと、見た事のある人物が私を見下ろしていた。
使われていない教室なのか机が乱雑に並び、少し空気がよどんでいる。
「私になんのようですか?」
だんだん視界がハッキリしてきた。
横にも数人いるのが見える。
体を動かしてみると手と足は縄で縛られ、着ていたはずの制服は脱がされていた。
普通の女子や転生前の私なら叫んでいただろうが、正直今の私はメンタルが強くなってしまったので、こんな事じゃ動じなくなってしまった。
こんな恥ずかしい姿でも、羞恥心を感じないなんて…。
私は本当に人なのか怪しいわね…。
私を見下ろすやつを睨みつける。
それに気づいたのか、私の髪をつかみ私と視線を合わせる。
「普通の令嬢なら騒いで当たり前なんだが、やっぱり平民出身はこの手のことはお手のものか?」
「貴族である貴方が令嬢にこんな事をするなんて、貴族なんて大した事ないのね。」
「フンっ、生意気な女は嫌いじゃない。」
私の掴んでいた髪を話近くの机に座る。
窓から見えた景色には白く浮かんだ月が見えていた。
「まさか貴方がいじめの主犯だったとはね。」
あぁやって他の生徒にも近づいて、人気がなくなった時に連れ去ってたんだ。
まぁ私たちの作戦にまんまとハマったみたいだけどね?
「あなた自ら私を招いてくれるなんて…ねぇ?アルベン君。」
「ハハッ、君やっぱり平民出身じゃないだろ?」
私を見下ろす姿は、今までイジメをしてきた輩を率いるリーダーの姿だ。
イジメの対象の女性率が高い時点で、犯人は男性なのではないかと思っていた。
教室で沢山の令嬢と話している時。
「聞きました?いじめの被害者。」
「あぁまた退学されたんでしょ?可哀想にね。」
「被害者は女性が多いらしいですから、ラーヘル嬢も気を付けてくださいね!」
「はい、ありがとうございます。」
他にも色々聞いたけど、アルベン君が犯人ではないかという話は全く出てこなかった。
まぁあんな姿を見ていたらイジメの犯人だとは思わないだろうな…。
「それで?私をどうするつもり?」
身動きが取れない中、私はアルベン君を睨みつけることしか出来ない。
彼は柔らかな笑みを浮かべ、私の元へ歩み寄ってくる。
「勘違いしないでくれ、君をどうこうするつもりはないんだ。」
アルベン君は私の顔を手でつかみ私の額と自分の額をくっつける。
こんなにイケメンと顔が近い状況なのにドキッとしないなんて事あるんだね。
犯罪者にはどんなにイケメンでもときめかないことが分かった。
アルベン君は私の目を真っ直ぐ見てニヤリと笑った。
「俺は、君のような令嬢の恐怖に震えた顔が見たいだけなんだ。」
その言葉を聞いた瞬間、私の体は強制的に起き上がらせられた。
左右にいた奴らに体を固定される。
これ何とかしないとほんとにヤバい!
なっ何か能力で抜け出して…。
考えている間にアルベン君が私の傍に立った。
その顔を見て私は頭が真っ白になり、それと同時に恐怖が溢れてきた。
今まで感じなかった気持ち悪さまで感じ始めた。
固定されている体を何とか動かし触れられている手から何とか離れようとする。
気持ち悪い!気持ち悪い!!
どうしよう!どうしよう!!
ほかの女の子達もこんな風になっていたのだろうか。
理性では効かない圧倒的な恐怖と気持ち悪さ。
本能が拒絶する。
溢れてはいけないものが止まらない。
零れたものがポタポタと床に落ちる。
助けて…
誰か…
「誰か助けて!!」
「「レイン!!」」
聞きなれたふたつの声と扉の壊れる音、そして眩い光が教室を包み込んだ。
一瞬のうちに私は手足の束縛を解放され、上着をかけられ抱っこされていた。
目の前にいる人物を見て私は安心してしまったのか涙が止まらなくなった。
私を抱えてくれている人物が私の額にキスをする。
太陽のように眩しいその姿に思わず抱きついた。
「…シャインさん。」
「遅くなってごめんね、レインちゃん。」
私が安心している最中、イジメの主犯であるアルベン君とその手下たちが逃げようとしていた。
「ズハイ!そいつらを捕えるぞ!」
「了解!」
教室から逃げようとしたアルベン君達をヤヌア様とズハイ様が一瞬にして縛り上げ、彼らを殺すような目つきで睨みつけた。
「よくも僕の大事な妹に手を出したな…。」
「ヒッ!?」
ヤヌア様から出ている殺意は本物で、ズハイ様もキレているのか止めようとしない。
いくら犯罪者でもその場で殺してしまえば私たちが犯罪者だ。
「ヤヌア兄様!ズハイ様!」
私は2人を呼んで注意を逸らした。
ズハイ様は私の方へ歩み寄って来てくれたが、ヤヌア様はアルベン君を睨みつけたまま動かない。
「ヤヌア兄様!」
もう一度呼ぶと私の方を一度見て、アルベン君を一発殴り私の方へ歩いてきた。
「レインが泣き止んでいなかったら今頃お前らはこの場で肉塊になっとったからな!レインに感謝しろよ!」
殴られたアルベン君は余程強く殴られたのか気絶していた。
ズハイ様が私の頭を優しく撫でてくれる。
「大丈夫?怖かったやろ?」
正直怖かった。
あんなに怖いなんて思わなかったし、何より気持ち悪かった。
いくらチート能力を持ってても私場違い所詮女何だと気付かされた。
「とりあえずレインちゃんはヤヌア君に預けて僕は戻るよ。」
抱えていた私をヤヌア様に預け、シャインさんは私の手の甲にキスをする。
「今は傷を癒してゆっくりする事、いい?」
「はっはい…。」
暖かい日差しのような笑みで見つめられ、返事が在り来りになってしまった。
シャインさんは光となって消え、ヤヌア様に抱えられた私は教室を後にした。
歩いている中、心地よい揺れと温もりに私は眠りについた。
[お知らせ]
今回にて期間が終了したため、毎日投稿を終了させて頂きます。
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次からは通常通りにと言いたいところなのですが、実は投稿時間の変更を行いたいと思います!
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⬇
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スクロールありがとうございました。
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