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妹の歌声を聞きました2
しおりを挟む屋敷の外に出て目にする町の光景は想像以上に素晴らし物だった。
石畳の道。
西洋の造りの建物。
馬車が行き来し、広場には大きな噴水。
異国の地の景色だった。
非現実的だけど、これが今の私の現実なのよね。
絵は描かず、しばらく街を散策していた。
景色を楽しみながら歩いていたのだが、ふと足を止めた。
よく見知った顔を見つけたからだ。
陽の光を受けてよりいっそう輝く金色の髪が風に吹かれている。
舞い上がる髪の隙間から覗くのは、愛らしい女の子の顔。
間違いない。
あれは、妹のローラだ。
さっきまで屋敷でお茶会を開いていたローラが、
今度は街中で多くの人に囲れていた。
一体何をしているんだろう。
私が近づいたのと同時に、ローラは大きく息をすい、歌い始めた。
それは、聴いた者の心を一瞬で掴んでしまうような歌声だった。
透き通っていて、でも心に強く響いてくる、そんな声。
それを見て、紙にペンを走らせてしまった。
心酔する民衆に囲まれる歌姫。
それは、ついつい描いてしまいたくなるような構図だったのだ。
なるべく妹に気づかれないようにしたいのに、描きたい欲求の方が大きかった。
衝動で描きあげた絵は、我ながらよく出来ていた。
その絵を見て思った。
この絵を父親に見せて、画材道具をおねだりしてみよう。
あのローラの事が大好きな父親だし、この絵に色を付けたいのです、と言えば許して貰えそうな気がする。
そう思った私は、少し道に迷いながらも何とか自分の屋敷へ戻った。
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