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とあるヒロインのお話
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美しい少女がいた。
金色の髪がよく似合う、白い肌に薄いピンク色の瞳。
光のように輝く乙女。
そして、美しい歌声の持ち主だった。
彼女の歌声には不思議な力があった。
彼女が歌えば怪我や病気が治癒し、彼女が歌えばこの国の周辺に住む魔物を追い払うことが出来た。
いつしか彼女は聖女と呼ばれ、国中の誰もが知る存在となっていった。
そんな聖女には好きな人がいた。
それは、この国の王子様だった。
聖女は、国の王に功績をたたえられ、王子様と婚約をしていた。
だが聖女はそんなの関係なく、王子様に恋をしていた。
王子も、聖女に対して妹のように大切に思っていた。
聖女は幸せだった。王子のそばにいるだけで満たされていた。
このままこの王子と自分は結ばれるのだと信じていた。
そして、聖女には優しい姉もいた。
姉とは昔はそんなに仲が良くなく、むしろ姉は聖女に対して意地悪だったのだが。
ある日突然聖女に対して優しくなったのだ。
それまで姉は聖女に着古した自分のお古の洋服しか着せなかったのに、いつからか新品の洋服を渡すようになり。
姉ばかり可愛がっていた家族は、姉の働きかけで聖女にも優しく接するようになっていった。
そのおかげで、姉が原因で悪者扱いされることも無くなり、聖女は穏やかな日々を送ることが出来た。
変化はそれだけでは無かった。
王子は聖女に対して意地悪な姉をずっと嫌っていたのだが、優しく接するように変わってからはすっかり仲良くなっていった。
聖女と、姉と王子。
3人で仲良く過ごしていた。
しかし、幸せの終わりはある日突然やってきた。
それは聖女が、王子に自分といつ正式に結婚するのか聞いた時だった。
自分の年齢がようやく結婚できる年齢に達したので、そろそろ結婚の準備をしなくてはと聖女は考えていた。
王子は聖女より年上なので、ずっと待たせていてしまっていたのだ。
きっと王子も待ちくたびれていたはず。
しかし予想に反して王子は聖女の問いに顔を曇らせた。
そして聖女に、愛している人がいるからその想いに応える事は出来ないと告げた。
聖女は王子に、その相手を今すぐここに連れてき欲しいと頼んだ。
王子が渋々連れてきた相手は、なんと聖女の姉だった。
お腹を大きくした聖女の姉が大事そうにお腹を擦り、泣きながら謝罪した。
〝ごめんなさい、ローラ。本当にごめんなさい。
本当なら貴女が王子様と結ばれないといけないのに。
なのに、私は・・・・。〟
誰が見ても分かるほど大きなそのお腹を見る限り、そういう事なのだろう。
王子も姉の肩を抱き、聖女に言った。
〝本当にすまない。だけど、もう、君のお姉さんには僕がいないとダメなんだ。〟
薄々気付いてはいたのだ。
少し前までは全く接点のない王子と姉だったが、最近では二人で見つめ合う時間が増えた。
だから徐々に二人の間に育まれている何かがあるのではないかと。
しかしそれでも、聖女はそれを受け入れることはできなかった。
許せなかった。
裏切られた事も、姉に王子を取られたことも、何もかも。
〝そんなの嫌!私、絶対に諦めないから!〟
二人を拒んだ聖女は、走ってその場から離れた。
泣きながら走って家に帰った。
母にはどう説明しよう。父には何て言おう?
しかし家族はみんな聖女に対して案外冷たい反応だった。
「子どもが出来てしまったのだから、もう仕方ないでしょう?」
「いい加減、殿下の事は諦めなさい。」
家族にしてみれば、結婚するのが妹から姉に変わっただけなので、大した問題ではないと捉えていたのかもしれない。
だが家だけではく、いつの間にかこの国の誰しもが、姉の味方だった。
「ずっと姉の邪魔をしている聖女よ。性格が悪いって噂の。」
「殿下にいつまでもまとわりついているんでしょ?いくら好きだからって・・・。」
なぜ、どうして私がこんな思いを・・・。
身籠った女が重宝されるのは、人口の少ないこの国ではある意味仕方なかったのかもしれない。
婚約を交わした王子を奪われたのは聖女だが、子を成せなかったせいか、いつの間にか国中から非難されるようになった。
そしてその後も、姉とその王子に近づく度に非難され、罵倒され。
ある夜、三人で口論になり、最終的に王子に川に突き落とされ命を落とした。
ああ、なんてやりきれない最後なの。
死にきれない。
願いが通じたのか、再び目を開けると聖女は生まれ変わっていた。
しかし人間ではなく、妖精だった。
そして、目覚めた場所は、王子に突き落とされた川のほとりだった。
妖精へ生まれ変わった〝私〟は、真っ先に当時住んでいた家に向かった。
しかし、もうそこに家はなく、ただただ平地が広がっていた。
そしてかつての小さな国は、広大な国に変わっていた。
全てが変わっていた。
当時の面影はない。
無理もない。
なぜなら私の死から既に数百年が経っていたのだから。
妖精になってからは、寂しさを紛らわせるためにずっと歌を歌っていた。
そんな私を、森に住む他の妖精たちは不思議そうに見ていた。
その中でも、私に声をかけてきた妖精が3人いた。
花の妖精、エリザ。
光の妖精、ルクス。
そして炎の妖精、イグニス。
この3人は好奇心が強いようで、なんの警戒もせず私に近付き、私の歌声を聴いて楽しんでいた。
私は歌う際、人間だった頃の姿になり、川の近くの岩山に腰を下ろし、当時と同じようにどんな人も魅了してしまうほどの声で歌った。
しかしあの頃と違って、私の歌声は聖なる力を宿したものではなくなっていた。
川を船で渡る人間たちがこの岩山の近くを通る際、私の歌に聞き惚れ、夢中になった為に船の運転を誤り、何人かが私の目の前で人生を終えてしまったのだ。
そんな事が続き、いつしかこの川の岩山近くを船が通ると妖精の歌声に誘われ川に引込まれてしまうという噂がたち始めた。
エリザ、ルクス、イグニスからは、もう歌うのを辞めるよう言われたけど
何もかもどうでも良かった私は、歌うのをやめなかった。
だけど、どれだけ歌っても自分の心が満たされることはなかった。
あれから気が遠くなるほどの時間が過ぎたのに、まるで昨日のことのようにまだ覚えている、
かつて愛していた王子の顔と、私を裏切った姉の顔。
しかしその二人は、もうすでに死んでしまっているのだ。
ぶつけようのない思いだけが募っていく日々だった。
そんな時、私の目の前を一隻の小舟が通りかかった。
夫婦だった。
金髪の女性と銀髪の男性。そして、女性は二人によく似た赤子を抱いていた。
3人の近くに金髪の少年もいた。4人家族のようだ。
銀色の髪をした可愛らしい赤子は、3人から一心に愛を注がれていた。
いいなあ。きっと幸せになるだろうな。
このまま愛されて育って、いつか素敵な男の人と。
そう思ったとき、ふと両親の顔を見た。
そして気付いた。
この二人、私が人間だったころの家族にどことなく似ている。
よくよく考えたら私の死後、姉はあのまま子どもを産んだだろうし、子孫がこの辺りで生きているのは何ら不思議なことではない。
何ならこの辺り一帯の土地に住んでいるのは、かつて小国だった時代の人たちの子孫がほとんどだろう。
そう思ったら、一瞬で頭の中が黒い考えに染まり、瞬く間に心をも支配してしまった。
私はその家族の船に向かって歌を歌った。
今までの船と同様、船は美しい歌声につられて私の方へ向かって来た。
歌い終わった私は、いつの間にか私の所まで来た船に足を乗せた。
「私の名前はローラ。あなた達の子どもよ。」
その場にいる全員が、とろんとした瞳で私を見つめている。
「その赤子よりも、私を可愛がりなさい。」
母親と思わしき女性が、抱えていた赤子を降ろして私の方へ歩み寄ってきた。
それに釣られるように、男と少年も私の傍へとやってくる。
突然母親が離れ、泣き出した赤子を他所に、全員私の頭を大切そうに代わる代わる撫で出した。
そうよ、私を愛して。
今度は私が、あなたたちから全てを奪う番よ。
国が大きくなったということは、それだけ人口が増えたということ。
身籠った女の味方をした甲斐があったという訳ね。
そんな国を、私が滅ぼすというのも悪くない。
そして誰もいなくなった場所で、気に入った男と二人でいつまでも幸せに暮らそう。
そうね、どうせならあの時は結ばれなかったこの国の王子様とか。
そして、復讐するならやっぱり、あの姉がいないと・・・。
静かに笑う元聖女は、そうして黒い闇に染まっていった。
もう、元には戻れないだろう。
**********
「見つからないわ。王子の生まれ変わった魂は見つけられたのに、姉の魂だけが見つからない。
このままじゃ・・・・。」
???「ねえ、ローラ。僕がその願い、叶えてあげようか?
君の心臓と引き換えに。」
(※とあるヒロインのお話 終わり)
金色の髪がよく似合う、白い肌に薄いピンク色の瞳。
光のように輝く乙女。
そして、美しい歌声の持ち主だった。
彼女の歌声には不思議な力があった。
彼女が歌えば怪我や病気が治癒し、彼女が歌えばこの国の周辺に住む魔物を追い払うことが出来た。
いつしか彼女は聖女と呼ばれ、国中の誰もが知る存在となっていった。
そんな聖女には好きな人がいた。
それは、この国の王子様だった。
聖女は、国の王に功績をたたえられ、王子様と婚約をしていた。
だが聖女はそんなの関係なく、王子様に恋をしていた。
王子も、聖女に対して妹のように大切に思っていた。
聖女は幸せだった。王子のそばにいるだけで満たされていた。
このままこの王子と自分は結ばれるのだと信じていた。
そして、聖女には優しい姉もいた。
姉とは昔はそんなに仲が良くなく、むしろ姉は聖女に対して意地悪だったのだが。
ある日突然聖女に対して優しくなったのだ。
それまで姉は聖女に着古した自分のお古の洋服しか着せなかったのに、いつからか新品の洋服を渡すようになり。
姉ばかり可愛がっていた家族は、姉の働きかけで聖女にも優しく接するようになっていった。
そのおかげで、姉が原因で悪者扱いされることも無くなり、聖女は穏やかな日々を送ることが出来た。
変化はそれだけでは無かった。
王子は聖女に対して意地悪な姉をずっと嫌っていたのだが、優しく接するように変わってからはすっかり仲良くなっていった。
聖女と、姉と王子。
3人で仲良く過ごしていた。
しかし、幸せの終わりはある日突然やってきた。
それは聖女が、王子に自分といつ正式に結婚するのか聞いた時だった。
自分の年齢がようやく結婚できる年齢に達したので、そろそろ結婚の準備をしなくてはと聖女は考えていた。
王子は聖女より年上なので、ずっと待たせていてしまっていたのだ。
きっと王子も待ちくたびれていたはず。
しかし予想に反して王子は聖女の問いに顔を曇らせた。
そして聖女に、愛している人がいるからその想いに応える事は出来ないと告げた。
聖女は王子に、その相手を今すぐここに連れてき欲しいと頼んだ。
王子が渋々連れてきた相手は、なんと聖女の姉だった。
お腹を大きくした聖女の姉が大事そうにお腹を擦り、泣きながら謝罪した。
〝ごめんなさい、ローラ。本当にごめんなさい。
本当なら貴女が王子様と結ばれないといけないのに。
なのに、私は・・・・。〟
誰が見ても分かるほど大きなそのお腹を見る限り、そういう事なのだろう。
王子も姉の肩を抱き、聖女に言った。
〝本当にすまない。だけど、もう、君のお姉さんには僕がいないとダメなんだ。〟
薄々気付いてはいたのだ。
少し前までは全く接点のない王子と姉だったが、最近では二人で見つめ合う時間が増えた。
だから徐々に二人の間に育まれている何かがあるのではないかと。
しかしそれでも、聖女はそれを受け入れることはできなかった。
許せなかった。
裏切られた事も、姉に王子を取られたことも、何もかも。
〝そんなの嫌!私、絶対に諦めないから!〟
二人を拒んだ聖女は、走ってその場から離れた。
泣きながら走って家に帰った。
母にはどう説明しよう。父には何て言おう?
しかし家族はみんな聖女に対して案外冷たい反応だった。
「子どもが出来てしまったのだから、もう仕方ないでしょう?」
「いい加減、殿下の事は諦めなさい。」
家族にしてみれば、結婚するのが妹から姉に変わっただけなので、大した問題ではないと捉えていたのかもしれない。
だが家だけではく、いつの間にかこの国の誰しもが、姉の味方だった。
「ずっと姉の邪魔をしている聖女よ。性格が悪いって噂の。」
「殿下にいつまでもまとわりついているんでしょ?いくら好きだからって・・・。」
なぜ、どうして私がこんな思いを・・・。
身籠った女が重宝されるのは、人口の少ないこの国ではある意味仕方なかったのかもしれない。
婚約を交わした王子を奪われたのは聖女だが、子を成せなかったせいか、いつの間にか国中から非難されるようになった。
そしてその後も、姉とその王子に近づく度に非難され、罵倒され。
ある夜、三人で口論になり、最終的に王子に川に突き落とされ命を落とした。
ああ、なんてやりきれない最後なの。
死にきれない。
願いが通じたのか、再び目を開けると聖女は生まれ変わっていた。
しかし人間ではなく、妖精だった。
そして、目覚めた場所は、王子に突き落とされた川のほとりだった。
妖精へ生まれ変わった〝私〟は、真っ先に当時住んでいた家に向かった。
しかし、もうそこに家はなく、ただただ平地が広がっていた。
そしてかつての小さな国は、広大な国に変わっていた。
全てが変わっていた。
当時の面影はない。
無理もない。
なぜなら私の死から既に数百年が経っていたのだから。
妖精になってからは、寂しさを紛らわせるためにずっと歌を歌っていた。
そんな私を、森に住む他の妖精たちは不思議そうに見ていた。
その中でも、私に声をかけてきた妖精が3人いた。
花の妖精、エリザ。
光の妖精、ルクス。
そして炎の妖精、イグニス。
この3人は好奇心が強いようで、なんの警戒もせず私に近付き、私の歌声を聴いて楽しんでいた。
私は歌う際、人間だった頃の姿になり、川の近くの岩山に腰を下ろし、当時と同じようにどんな人も魅了してしまうほどの声で歌った。
しかしあの頃と違って、私の歌声は聖なる力を宿したものではなくなっていた。
川を船で渡る人間たちがこの岩山の近くを通る際、私の歌に聞き惚れ、夢中になった為に船の運転を誤り、何人かが私の目の前で人生を終えてしまったのだ。
そんな事が続き、いつしかこの川の岩山近くを船が通ると妖精の歌声に誘われ川に引込まれてしまうという噂がたち始めた。
エリザ、ルクス、イグニスからは、もう歌うのを辞めるよう言われたけど
何もかもどうでも良かった私は、歌うのをやめなかった。
だけど、どれだけ歌っても自分の心が満たされることはなかった。
あれから気が遠くなるほどの時間が過ぎたのに、まるで昨日のことのようにまだ覚えている、
かつて愛していた王子の顔と、私を裏切った姉の顔。
しかしその二人は、もうすでに死んでしまっているのだ。
ぶつけようのない思いだけが募っていく日々だった。
そんな時、私の目の前を一隻の小舟が通りかかった。
夫婦だった。
金髪の女性と銀髪の男性。そして、女性は二人によく似た赤子を抱いていた。
3人の近くに金髪の少年もいた。4人家族のようだ。
銀色の髪をした可愛らしい赤子は、3人から一心に愛を注がれていた。
いいなあ。きっと幸せになるだろうな。
このまま愛されて育って、いつか素敵な男の人と。
そう思ったとき、ふと両親の顔を見た。
そして気付いた。
この二人、私が人間だったころの家族にどことなく似ている。
よくよく考えたら私の死後、姉はあのまま子どもを産んだだろうし、子孫がこの辺りで生きているのは何ら不思議なことではない。
何ならこの辺り一帯の土地に住んでいるのは、かつて小国だった時代の人たちの子孫がほとんどだろう。
そう思ったら、一瞬で頭の中が黒い考えに染まり、瞬く間に心をも支配してしまった。
私はその家族の船に向かって歌を歌った。
今までの船と同様、船は美しい歌声につられて私の方へ向かって来た。
歌い終わった私は、いつの間にか私の所まで来た船に足を乗せた。
「私の名前はローラ。あなた達の子どもよ。」
その場にいる全員が、とろんとした瞳で私を見つめている。
「その赤子よりも、私を可愛がりなさい。」
母親と思わしき女性が、抱えていた赤子を降ろして私の方へ歩み寄ってきた。
それに釣られるように、男と少年も私の傍へとやってくる。
突然母親が離れ、泣き出した赤子を他所に、全員私の頭を大切そうに代わる代わる撫で出した。
そうよ、私を愛して。
今度は私が、あなたたちから全てを奪う番よ。
国が大きくなったということは、それだけ人口が増えたということ。
身籠った女の味方をした甲斐があったという訳ね。
そんな国を、私が滅ぼすというのも悪くない。
そして誰もいなくなった場所で、気に入った男と二人でいつまでも幸せに暮らそう。
そうね、どうせならあの時は結ばれなかったこの国の王子様とか。
そして、復讐するならやっぱり、あの姉がいないと・・・。
静かに笑う元聖女は、そうして黒い闇に染まっていった。
もう、元には戻れないだろう。
**********
「見つからないわ。王子の生まれ変わった魂は見つけられたのに、姉の魂だけが見つからない。
このままじゃ・・・・。」
???「ねえ、ローラ。僕がその願い、叶えてあげようか?
君の心臓と引き換えに。」
(※とあるヒロインのお話 終わり)
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