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とある女の子のお話。
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1980年代後半。
「バブル」と呼ばれるほどの好景気で誰もが浮かれていた時代。
そんな時代だからか、恋愛小説や少女漫画が全盛期を迎え、今まで無かったような斬新な設定の少女漫画がたくさん世に出ていた。
中でも人気だったのは、ファンタジーの世界が舞台の少女漫画だった。
ある一人の少女が慌てて学校から家への帰り道を走っていた。
紙媒体でしか漫画が読めない時代。
真面目な少女は学校に漫画を持ち込んだりはせず、家に帰って最近はまっている少女漫画の続きを読むのを楽しみにしていたのだ。
少女は家に着くなり靴を脱ぎ捨て、急いで階段を駆け上がる。
2階にある自分の部屋に入ると、鞄をその辺に置き、漫画を1冊手に取った。
タイトルは、『聖女と王子様の幸せな結婚』。
それは、中世のようなファンタジー世界が舞台のお話で、主人公でありヒロインの聖女と、王子様が結婚して
幸せになるまでを描いた漫画だった。
少女はベットの上に寝転がり、うっとりしながら漫画を読み進めていく。
「ああ、ヒロインのローラってほんとに可愛いし、王子のアレクもかっこいい。」
少女の目に映るのは、可愛い長い髪の女の子と、短髪でクールそうな青年。
そのイラストを指でなぞりながら、そう呟いた。
しかし次のページを捲った瞬間、少女は顔を曇らせた。
「それに比べてローラのお姉さんは・・・。二人の邪魔をするお姉さんなんかいなくなればいいのに。」
ヒロインの恋路の邪魔をするヒロインの姉が、少女は気に入らないようだ。
無理もない。この姉のせいで主人公は序盤から中盤にかけてかなり前途多難な人生を歩んでいく。
主人公が持つ特殊な聖女の力に嫉妬し、いつでも主人公の足を引っ張ろうと画策してくるのだ。
姉は、魔力などなにも持たないが、周りから同情を得るのが上手かった。
純粋で無垢な聖女は、いつもそんな姉の罠にかかってしまう。
国民の為に、魔物を寄せ付けないように歌で国の周りに結界を張ったりして皆に一番貢献している聖女なのに、
姉のせいで悪者扱いされたり、家族からも嫌われてしまっていた。
「あたしがローラの姉だったら、こんなひどいことしないのに。」
しかしそうは言いつつ、女の子は決して主人公の姉になりたいとは思っていなかった。
なぜなら聖女の姉は、終盤で王子様の働きかけで全ての悪事が暴かれ、断罪されて国を追放されてしまう。
そして最後は、国の外にいた魔物に食い殺されてしまうのだ。
少女はやっと昨日その部分まで読み、聖女と王子が結婚して幸せなハッピーエンドを迎える最終章に突入していた。
しかし、その途中母親と思わしき女性に買い物を頼まれ、漫画を中断し渋々部屋を出た。
急いで買い物を終わらせて、はやくあの続きを読みたい。
その想いが強かったのがいけなかった。
買い物に行く際、つい横断歩道ではない道路を横切ってしまったのだ。
さらに運悪く、ちょうど車がすぐそこまで来ていた時だった。
あっという間に少女の体は宙を舞い、そして道路に叩きつけられた。
「ねえ。」
薄れゆく意識の中、不思議とどこからか声が聞こえた。
微かにまだ残っている力で少しだけ顔を上げると、そこには真っ黒な髪と、どこまでも闇が続くような漆黒の翼を生やした少年が空を飛んでいた。
まるで悪魔だ。
死ぬ間際だから、こんな物が見えるのだろうか。
「どうせ死ぬんだからさ、魂と引き換えに願いを叶えてみない?」
少女は思った。
このまま死ぬくらいなら、そうしたい。
できれば、あの、漫画の世界に・・・・。
********
???「魂の看守であるお前がいるというのに、死ぬ寸前の魂を悪魔に奪われる等言語道断。
サリエル、お前はもう今日から天使ではない。あの人間の魂を救済するまで、天界に戻ることは許されない。」
(とある女の子のお話 終わり)
「バブル」と呼ばれるほどの好景気で誰もが浮かれていた時代。
そんな時代だからか、恋愛小説や少女漫画が全盛期を迎え、今まで無かったような斬新な設定の少女漫画がたくさん世に出ていた。
中でも人気だったのは、ファンタジーの世界が舞台の少女漫画だった。
ある一人の少女が慌てて学校から家への帰り道を走っていた。
紙媒体でしか漫画が読めない時代。
真面目な少女は学校に漫画を持ち込んだりはせず、家に帰って最近はまっている少女漫画の続きを読むのを楽しみにしていたのだ。
少女は家に着くなり靴を脱ぎ捨て、急いで階段を駆け上がる。
2階にある自分の部屋に入ると、鞄をその辺に置き、漫画を1冊手に取った。
タイトルは、『聖女と王子様の幸せな結婚』。
それは、中世のようなファンタジー世界が舞台のお話で、主人公でありヒロインの聖女と、王子様が結婚して
幸せになるまでを描いた漫画だった。
少女はベットの上に寝転がり、うっとりしながら漫画を読み進めていく。
「ああ、ヒロインのローラってほんとに可愛いし、王子のアレクもかっこいい。」
少女の目に映るのは、可愛い長い髪の女の子と、短髪でクールそうな青年。
そのイラストを指でなぞりながら、そう呟いた。
しかし次のページを捲った瞬間、少女は顔を曇らせた。
「それに比べてローラのお姉さんは・・・。二人の邪魔をするお姉さんなんかいなくなればいいのに。」
ヒロインの恋路の邪魔をするヒロインの姉が、少女は気に入らないようだ。
無理もない。この姉のせいで主人公は序盤から中盤にかけてかなり前途多難な人生を歩んでいく。
主人公が持つ特殊な聖女の力に嫉妬し、いつでも主人公の足を引っ張ろうと画策してくるのだ。
姉は、魔力などなにも持たないが、周りから同情を得るのが上手かった。
純粋で無垢な聖女は、いつもそんな姉の罠にかかってしまう。
国民の為に、魔物を寄せ付けないように歌で国の周りに結界を張ったりして皆に一番貢献している聖女なのに、
姉のせいで悪者扱いされたり、家族からも嫌われてしまっていた。
「あたしがローラの姉だったら、こんなひどいことしないのに。」
しかしそうは言いつつ、女の子は決して主人公の姉になりたいとは思っていなかった。
なぜなら聖女の姉は、終盤で王子様の働きかけで全ての悪事が暴かれ、断罪されて国を追放されてしまう。
そして最後は、国の外にいた魔物に食い殺されてしまうのだ。
少女はやっと昨日その部分まで読み、聖女と王子が結婚して幸せなハッピーエンドを迎える最終章に突入していた。
しかし、その途中母親と思わしき女性に買い物を頼まれ、漫画を中断し渋々部屋を出た。
急いで買い物を終わらせて、はやくあの続きを読みたい。
その想いが強かったのがいけなかった。
買い物に行く際、つい横断歩道ではない道路を横切ってしまったのだ。
さらに運悪く、ちょうど車がすぐそこまで来ていた時だった。
あっという間に少女の体は宙を舞い、そして道路に叩きつけられた。
「ねえ。」
薄れゆく意識の中、不思議とどこからか声が聞こえた。
微かにまだ残っている力で少しだけ顔を上げると、そこには真っ黒な髪と、どこまでも闇が続くような漆黒の翼を生やした少年が空を飛んでいた。
まるで悪魔だ。
死ぬ間際だから、こんな物が見えるのだろうか。
「どうせ死ぬんだからさ、魂と引き換えに願いを叶えてみない?」
少女は思った。
このまま死ぬくらいなら、そうしたい。
できれば、あの、漫画の世界に・・・・。
********
???「魂の看守であるお前がいるというのに、死ぬ寸前の魂を悪魔に奪われる等言語道断。
サリエル、お前はもう今日から天使ではない。あの人間の魂を救済するまで、天界に戻ることは許されない。」
(とある女の子のお話 終わり)
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