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悪魔は一人で高みの見物をする
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あの時、死ぬ寸前の女の子の願いを気まぐれで叶えたことが
こんなに面白いことになるなんて、少しも想像していなかった。
ただ、楽に魂が手に入りそうだなと軽く考えていただけだった。
女の子が死を目前にして願ったことは、漫画の世界に行く事だった。
そんなしょうもない願いを叶えてあげるために、僕は即席の空間を作った。
女の子が望んでいた「聖女と王子様の幸せな結婚」の空間を。
そこそこ忠実に再現された空間で、女の子はヒロインの姉に転生し、かなり楽しんでいた。
ついついヒロインの結婚相手を奪ってしまうくらいには。
女の子は王子と結婚。
あの漫画は王子と結婚するまでを描いた作品だったから、そこでその空間は閉じるはずだった。
しかし、ここで思わぬ展開が来る。
空間は閉じずに、そのまま漫画の世界は存続しつづけた。
女の子は無事子どもを出産し、あろうことかそのままヒロインの姉として人生を生き続け、老衰で息を引き取った。
本来漫画の世界にその後なんてものは存在しない。
作者が結末を描けばそれで終わりの世界だ。
しかし架空の空間に現実世界の魂が入った影響で、どうやら王子と結婚して終わりの話にその後が出来てしまったようだ。
ただの空間が、本当に世界として成り立ってしまったのだ。
女の子が亡くなった後も、漫画の世界は続いていった。もちろん、今も。
この世界では創造主の事を神と呼ぶ。
であれば、僕はもう悪魔じゃない、あの世界の神だ。
だが神を名乗るには、1つ足りないものがある。
悪魔には心が無いのだ。
神を名乗るには、無視できない要素だった。
「見つからないわ。王子の生まれ変わった魂は見つけられたのに、姉の魂だけが見つからない。
このままじゃ・・・・。」
漫画のヒロインであるローラが、妖精へ生まれ変わり、あの女の子への復讐に燃えているところを僕は偶然通りかかった。
見つからないのも当然だ。
あの女の子がローラの姉として死んだ後、この世界で生まれ変わらずに、現実世界で「美優」として生まれ変わってしまったのだ。
恐らく誰かが、この世界から女の子の魂を連れ出してしまったのだ。
つまり僕は、あの時魂を引き換えに願いを叶えたのにも関わらず、回収し損ねてしまったということ。
一体誰が女の子の魂を連れ出したのか。
魂に干渉するなんて、人間には絶対に不可能だから、恐らく・・・・。
まあとにかく、このままではいけない。
代償無しに願いを叶えてしまったなら、契約違反になってしまう。
「ねえ。僕がその願い叶えてあげようか?君の心臓と引き換えに」
ローラは僕の言葉に二つ返事でうなずいた。
僕は、笑いが止まらなかった。
だって僕は、ローラに願われなくとも、結局あの女の子の生まれ変わった魂を連れてこないといけなかったのだから。
なのに心臓まで手に入るなんて、僕って本当に、大天才。
ローラの心臓を手に入れたおかげで、黒い羽は真っ白に変わり、漆黒の髪も金色へと変化した。
ずっと下っ端の悪魔として生きてきた僕が、こんな大出世するなんて。
僕は現実世界へ降り立ち、生まれ変わった美優に憑いて色んな不幸を与えた。
そのおかげで、美優はすっかり弱気になってしまい、いつの間にか夜の海に身を投げようとしていた。
「あはは!笑っちゃうほど悲惨な人生だね~!」
「だ、誰?」
僕にびっくりする美優は、前世と同じように今、死を目前にしている。
「僕は神だよ。この世界の神じゃないけどね。
ねえ、どうせ死ぬならさ転生してみない?
ちょうどさ、欠員の出てる世界があるんだよ。」
あっさり僕の言葉にうなずいた美優。
それを見て、口角が歪んでしまう。
おっといけない。
僕はもう神なんだから、表情には気を付けなくちゃ。
さあ、お話の続きを始めよう。
(悪魔は一人で高みの見物をする 終わり)
こんなに面白いことになるなんて、少しも想像していなかった。
ただ、楽に魂が手に入りそうだなと軽く考えていただけだった。
女の子が死を目前にして願ったことは、漫画の世界に行く事だった。
そんなしょうもない願いを叶えてあげるために、僕は即席の空間を作った。
女の子が望んでいた「聖女と王子様の幸せな結婚」の空間を。
そこそこ忠実に再現された空間で、女の子はヒロインの姉に転生し、かなり楽しんでいた。
ついついヒロインの結婚相手を奪ってしまうくらいには。
女の子は王子と結婚。
あの漫画は王子と結婚するまでを描いた作品だったから、そこでその空間は閉じるはずだった。
しかし、ここで思わぬ展開が来る。
空間は閉じずに、そのまま漫画の世界は存続しつづけた。
女の子は無事子どもを出産し、あろうことかそのままヒロインの姉として人生を生き続け、老衰で息を引き取った。
本来漫画の世界にその後なんてものは存在しない。
作者が結末を描けばそれで終わりの世界だ。
しかし架空の空間に現実世界の魂が入った影響で、どうやら王子と結婚して終わりの話にその後が出来てしまったようだ。
ただの空間が、本当に世界として成り立ってしまったのだ。
女の子が亡くなった後も、漫画の世界は続いていった。もちろん、今も。
この世界では創造主の事を神と呼ぶ。
であれば、僕はもう悪魔じゃない、あの世界の神だ。
だが神を名乗るには、1つ足りないものがある。
悪魔には心が無いのだ。
神を名乗るには、無視できない要素だった。
「見つからないわ。王子の生まれ変わった魂は見つけられたのに、姉の魂だけが見つからない。
このままじゃ・・・・。」
漫画のヒロインであるローラが、妖精へ生まれ変わり、あの女の子への復讐に燃えているところを僕は偶然通りかかった。
見つからないのも当然だ。
あの女の子がローラの姉として死んだ後、この世界で生まれ変わらずに、現実世界で「美優」として生まれ変わってしまったのだ。
恐らく誰かが、この世界から女の子の魂を連れ出してしまったのだ。
つまり僕は、あの時魂を引き換えに願いを叶えたのにも関わらず、回収し損ねてしまったということ。
一体誰が女の子の魂を連れ出したのか。
魂に干渉するなんて、人間には絶対に不可能だから、恐らく・・・・。
まあとにかく、このままではいけない。
代償無しに願いを叶えてしまったなら、契約違反になってしまう。
「ねえ。僕がその願い叶えてあげようか?君の心臓と引き換えに」
ローラは僕の言葉に二つ返事でうなずいた。
僕は、笑いが止まらなかった。
だって僕は、ローラに願われなくとも、結局あの女の子の生まれ変わった魂を連れてこないといけなかったのだから。
なのに心臓まで手に入るなんて、僕って本当に、大天才。
ローラの心臓を手に入れたおかげで、黒い羽は真っ白に変わり、漆黒の髪も金色へと変化した。
ずっと下っ端の悪魔として生きてきた僕が、こんな大出世するなんて。
僕は現実世界へ降り立ち、生まれ変わった美優に憑いて色んな不幸を与えた。
そのおかげで、美優はすっかり弱気になってしまい、いつの間にか夜の海に身を投げようとしていた。
「あはは!笑っちゃうほど悲惨な人生だね~!」
「だ、誰?」
僕にびっくりする美優は、前世と同じように今、死を目前にしている。
「僕は神だよ。この世界の神じゃないけどね。
ねえ、どうせ死ぬならさ転生してみない?
ちょうどさ、欠員の出てる世界があるんだよ。」
あっさり僕の言葉にうなずいた美優。
それを見て、口角が歪んでしまう。
おっといけない。
僕はもう神なんだから、表情には気を付けなくちゃ。
さあ、お話の続きを始めよう。
(悪魔は一人で高みの見物をする 終わり)
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