【完結】悪役令嬢に仕立てあげられそうですが、私は絵を描きたいだけなんです。

ぴえろん

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ドレス姿でバルコニーへ出ると、少し気温が下がったのか体がぶるっと震えた。


肩を出しているから余計寒く感じるのかもしれない。

こんな事ならストール1枚羽織ってくれば良かった。


まあでも、寒いおかげでバルコニーには人がいないのだろう。




夜空を見上げると、先程と同じく綺麗な星の光が目に映る。


夜も深まってきたおかげで、さらに見える星の数が増えたようだ。




「綺麗だなあ。」


思わず出た言葉は、後ろで奏でられているバイオリンの演奏に掻き消された。



近くに人もいないし、ある程度独り言をぼやいても良さそうだ。



それにしても、本当に綺麗な星空だ。

見るだけでは勿体ないと思ってしまう程に。

カメラなんかこの世界には無いし、残しておくには家に帰ったら早速描かなきゃ。


でも、とふと我に返る。

もう、嫁ぐまであまり日は残されていない。


あと少ししたら、親と同じくらい年の離れた男と夢のない結婚生活が始まる。


「ずっと今日みたいな日が続けばいいのに。」



気付けばそう呟いていた。

「パーティがそんなに楽しかったか?

今度結婚する男に連れてきて貰えばいいだろう。」

 


聞こえてきた返事に思わず振り返る。


そこには、いつの間にかテオが立っていた。
手に持つ皿にはいくつかケーキが乗っている。



その皿を私に差し出してきた。
どうやら私のために持ってきてくれたようだ。


「いえ.......そうではなく、結婚自体が嫌なのです。

色々と自由な時間も減るでしょうし。


だから、こんな風に自由に過ごせる日が続けばいいのになと。」


テオにそう説明しながら憂鬱な気持ちが加速した。


言葉にすると、嫌でも現実味を帯びてくる。




「.......なら、俺と婚約するか?」


「えっ!?」


テオが言ったその言葉は、短い割にはすぐに理解できない言葉だった。

「お互い干渉しないことを条件にどうだ?

愛はないが、その代わり自由に過ごさせると約束しよう。」


ちょっと待って、結婚?!?!

テオと、わたしが?!

「でも、私はもうすぐ嫁ぐ身ですし.......!」


「まだ結婚したわけではないのだろう?」


そうだけど……!

テオは皇太子殿下なんでしょ?

ということは、テオと結婚したら、私は皇后にいずれなるってこと?!

今以上に自由な時間減りそうなんだけど……!!


「さっき弟とも話したが、俺は皇位を継ぐ気は無い。」

私の考えを見透かすようにテオは言った。

「え……!どうして??」

「面倒だろ、そんな物継いだら。

弟のアルムは今、侯爵家の令嬢と婚約している。   

だから皇位を継ぎたいなら同等の身分かそれ以上の女性と婚約しろと父から言われている。」

テオが私の髪を掬って口元に当てた。

不意にそんな事をされてはこちらも動揺してしまう。


そんな私を上目遣いでテオが見つめた。

「だから、お前と婚約すれば、俺に皇位を継ぐ意思がないとはっきり証明出来る。」

な、なるほど……。

つまり、皇位継承権を破棄したいから私に契約的な結婚を望んでいるってことね。
そんなに嫌なものなのね、皇位を継ぐのが。


「それに、俺にはやらなくてはならないことがあるんだ。

その為には、今のように自由に動けなくては困る。」


テオのやらなくてはいけないことってなんだろう。

不思議に思ったが、自分の結婚したくない理由と似たようなものなのかもしれない。


私もそうだ。

結婚したら自由な時間が減りそうでしたくない。

だから、私 がもしテオとの婚約を受け入れたとして、私が相手に求める条件は……。


「絵を……」

「絵を描かせてくれるのならなんでもいいです。」

テオが私の言葉を聞いて、にやりと不敵に笑った。

「構わない、自由に過ごしていいのだから。

画材道具は全て揃えてやる。」

テオが皿に乗っているケーキを1口分サイズにして私の口元に差し出してきた。

美味しそうなショートケーキが目に映る。

私は、戸惑いながらも目の前のケーキに食い付いた。


美味しい。甘いくて蕩けそうな生クリームの味が口いっぱいに広がる。

そんな私を見てテオが微笑んだ。

「契約成立だな。」


夢みたいだけど、夢じゃない。


この時の私はすっかり浮かれていて、自分の身に迫る危険にかなり鈍感になっていた。






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