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私は妖精のように可愛い歌姫(ローラ視点)

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(※ローラ視点のお話です)


暗い夜を照らす大きな月を、部屋の窓から眺めていた。
今宵は満月だ。丸々と太った大きな月が堂々と輝いている。


私の心もまた、満月のように満ち足りていた。


滑稽な夜だった。


ユリアが皇太子殿下と一緒に帰ってきて、婚約したいなどと言い出した時はどうしようかと焦ったが。


だけど、そんな必要無かったと思うくらいあっさり上手くいってしまった。


逆に屋敷に皇太子殿下を連れて来てくれたことをユリアに感謝しなくては。
そのおかげで無事皇太子殿下がプロポーズしてくれたのだから。

やはり、私の歌声に勝てる者はいない。

それにあの、皇太子殿下を奪われた時のユリアの間抜けな顔、最高だった。

あの時の光景を思い出し、良い気分になっていた時だった。


「ローレライ。ねえ、貴女はあのローレライなんでしょう?そうなんでしょう?」


そう呼ばれて、咄嗟に声の主の方を向いた。


そこには、いつもユリアのそばに居るはずの、3人の妖精の内の一人、エリザがいた。



「なんのこと?」


「とぼけないで。歌声を聴いてやっと分かったわ。

あんな風に歌えるのは貴女しかいないもの。」


エリザの声は落ち着いているが、怒りを孕ませているのが分かった。


「どこかで見たことがある顔だとはずっと思っていたのよ。
いきなり居なくなった貴女が、まさか人間として暮らしているなんてね。」


エリザが私に詰め寄る。

「どうしてユリアに酷いことをするの?

昔も今も、貴女は人間に対して悪戯しすぎよ。」


私はエリザを冷たく見下ろした。

「勘違いしないで。

私は歌を歌っているだけよ、昔も今もね。」



いい夜だと思ったのに、エリザのせいで気分が台無しだ。



「貴女の歌は、人に聴かせるものじゃないって事を貴女が1番よく分かっているでしょう?!」



「……。」


月に雲がかかった。

窓から差し込む月明かりが途絶えた。

 
「ねえ、もう消えて。私の目の前から。

いくら昔の知り合いだからって、私の邪魔をするなら容赦はしないわ。」



お願い、もうあとには引けないの。




私の言葉を聞いて、これ以上の説得は無理だと判断したエリザが静かに姿を消した。






(ローラ視点おわり)
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