【完結】悪役令嬢に仕立てあげられそうですが、私は絵を描きたいだけなんです。

ぴえろん

文字の大きさ
28 / 62

売れるような絵を描くとは言ったけど・・・。

しおりを挟む
とびっきりの絵って何・・・?

何を描いたらそうなる?



一人ペンを握りしめたまま、紙には何も描けずにいる私はひたすらそんなことを考えていた。

あれからルクスとイグニスは街へ出て行ったし、エリザも用があるからとどこかへ飛んで行ってしまった。

残された私はただ一人、とびっきりの絵のアイディアが浮かばないまま森の中でぼーっとしている。



元々絵は趣味で描いていただけで、私はプロじゃない。

プロを目指そうとしたことはあるけど、夢のままで終わってしまっているし。


ここに来てから奇跡的に出会ったテオに絵を褒められたことはあるけれど。


皇太子殿下のテオはきっと、普段から高尚な絵画に囲まれているから、私のような素人が描く絵が珍しかっただけかもしれない。

テオは・・・もう私の事なんて忘れているかもしれないな。


そういえば、と、ふとあの夜会での出来事が思い起こされた。

あの夜会でテオは「俺にはやらなければならないことがある」から国を継ぐ気は無いって言っていたけど、そうまでしてやらないといけないことってなんだろうか。

国王になるのは面倒だからと他の理由も言ってはいたけど、それは単に建前で本当に大事なのはその「やらなければならないこと」なんじゃないだろうか。

それって一体なんだろう?

私は急にテオのやりたいことが何なのか気になり始めた。

テオにもわたしと同じように趣味があるとか?夢があるとか?


そこまで考えた時、頭をぶんぶんと振った。

いけない。一人で考えるとついつい思考が逸れてしまう。


とにかく描くのよ!
・・・でも何を?


思考がループしかけた時、後ろでガサゴソと物音が聞こえた。

こんな人気のない森で音がするなんて、一体何・・・?

恐る恐る振り返ってみる。


そこには、立派な装飾品を誂えた馬と、その馬にまたがる青年がいた。

ユリアより少し年上だろうか?




馬がこの辺りを歩いていた音を聞き逃すほど、ぼーっとしてしまったせいで、ここまで近づかせてしまってから気が付いた私は、驚いて何も言えなかった。


青年は馬の上から私を見降ろして言った。


「こんなところで何をしているの?」


「えっと・・・。」


いきなりそう聞かれ返答に困る。

お前こそここで何しているんだ、と言いたいが、身なりから察するに恐らくこの青年は貴族だ。

そんな青年にそんな口をきけば、こっちが悪いことになる。


何て答える?

この薄暗い森で、ここで暮らしています、なんて正直に言ったら怪しまれる気がする。


「み、道に迷ってしまって・・・。」


結局口から出てきたのはハッタリだった。


「そうなんだ、じゃあ僕が街まで案内するよ。」


「あ、ありがとうございます。」


ひくつきながらお礼を述べる。

案内などいらないし、むしろこの森から出たくないのだが、嘘をついてしまった手前、もう後には引けない。



「さあ、この馬に乗って。乗り方は分かる?」



「いや、わからないです・・・。」


「ここに足を掛けて、僕が手伝うから。」


言われるとおりに足を動かし、なんとか馬の背中にまたがった。

景色が高い。同じ景色でも、馬の背から見ると少し新鮮さを感じる。


そんな私の後ろに、男が身軽に馬に飛び乗った。


「わ、え!?」


揺れる馬にしがみつき、驚いた声を上げた。


「大丈夫?馬は歩くともっと揺れるけど。」


「・・・大丈夫です。」


馬の揺れより、距離の近さの方が気になる・・・!

馬の背は広くないので仕方ないが、知らない青年とここまで密着するのはさすがに緊張する。

しかも、青年はびっくりするほど顔が良い。

テオも美形だったけど、テオとはまた違ったカッコ良さだ。


思わず赤面してしまう私は、青年が今後ろにいてくれて心底良かったと思った。



青年が馬を走らせ、数分後には森の出口が近づいていた。


「そういえば君、名前は何て言うの?」


「ユリアです。」


「そう。ユリアね。可愛い名前だね。」


随分女慣れしてそうな口ぶりに、今言った言葉は女性にはよく言うセリフなんだろうな、となんとなく感じた。


「ユリアはさ、どこかの家のお嬢様だったりする?」


「えっ!?」


いきなりそう聞かれて戸惑う。

もしかして、フリージア家の娘だと気が付かれた・・・?


「あれ?本当にそうなの?」

その反応を見てようやく、なにか知っているわけではないのだと分かり安心した。


「違いますよ、ただの平民です。」


「そっか。驚くから本当にそうなのかと思ったよ。

ユリアは美人だから、お嬢様でもおかしくないなとは思ったけどね。」


不意に容姿を褒められたので再び赤面してしまった。

この男といるとなんだか調子が狂う。


早く街に着いて、この男と離れなければ。


馬に揺られながら、森を出るまでそんなことを考えていた。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参
恋愛
ブラック企業から辺境伯夫人アナスタシアとして転生した私は、愛する完璧な夫マクナル様と溺愛の新婚生活を送っていた。私は前世の「合理的常識」と「科学知識」を駆使し、元公爵令嬢ローナのあらゆる悪意を打ち破り、彼女を辺境の落ちぶれた貴族の元へ追放した。 第一の試練を乗り越えた辺境伯領は、私の導入した投資戦略とシンプルな経営手法により、瞬く間に王国一の経済力を確立する。この成功は、王都の中央貴族、特に王弟公爵とその腹心である奸猾な財務大臣の強烈な嫉妬と警戒を引き寄せる。彼らは、辺境伯領の富を「危険な独立勢力」と見なし、マクナル様を王都へ召喚し、アナスタシアを孤立させる第二の試練を仕掛けてきた。 夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。 第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。 最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

処理中です...