聖少女(セイント・ガール)

野宮雪菜

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甘い罠(2)

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「なにすんのよおお」
 エインセルは叫びながら、パタパタと窓から飛んで入ってきた。
 陽菜はエインセルをつかむと、浴室の床に落とした。
「いたいっ。なんて乱暴な人たちなのお」
 エインセルの文句もどこ吹く風、陽菜はボディソープを手で泡立てると、エインセルの頭から足のつま先まで乱暴にこすった。そしてシャワーで洗い流すと、脱衣所にある乾燥機に入れた。

 機械が止まり、ふたを開けると、ふらふらになったエインセルが出てきた。
「なによう。暴力反対よう」
 陽菜はエインセルをつまむと、顔を近づけた。
「あたしたちは聖少女なんかじゃないわ。いい? わかったら、自分の世界にお帰りなさい」
 強い口調で言うと、エインセルはぷうっと頬をふくらませた。
「あたちはなにも悪くないわ。おねがい、ここにいさせてよう」
 陽菜は莉子を見た。莉子は首を横に振る。
「あたしたちは聖少女なんかになりたくないの。ミカエルのことも好きじゃないし。りこちゃ……お姉ちゃんは特にそうね。聖少女に少しでも関わりがあると知ったら、あんた、窓から放り投げられるわよ」

「もうやられたわ」
「あ、そうか」
 エインセルは莉子を見て、ぶるっと体を震わせた。そして陽菜にしがみつく。
「あたちは、聖少女ということばだけしか知らないわ。ミカエル様なんて雲の上のお人だし。おねがいよう、ここにいさせてよう」
「なんで、ここにこだわるの?」
 莉子が訊いた。エインセルがうつむく。
「パックが……」
「パック?」
「あたちと仲のいい妖精。だけどいたずら好きで、あたちを人間界に置き去りにして帰っちゃったの」
「帰ればいいじゃない」

 あっけらかんと言った陽菜に、エインセルはかみつくように叫ぶ。
「それができれば、こんな所にいないわ! どうやって帰ればいいのか、わからないの」
 言うなり、しくしく泣き出す。
 莉子が疲れたように前髪をかき上げた。
「陽菜。しばらく世話してあげなよ」
「なんで!」
 陽菜は抗議の声をあげる。
「別に天使たちの仲間じゃないようだし、そのパックって妖精が迎えにくるまで。いいでしょ?」
 陽菜はしぶしぶ頷いた。
「ありがとー、ひなっ」
 エインセルが抱きついた。莉子と陽菜は大きくため息をついた。
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