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甘い罠(3)
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翌日、大学の一室に席を見つけた莉子は、そこに座った。
最近、いろんなことがありすぎる。ため息ばかりついている気がする。
天使が出てきて聖少女になれだの、妖精が出てきて家にいさせてほしいだの。
妖精のエインセルのことはまだいい。こちらに危害を加えるわけでもないから。それに陽菜が拾った手前、面倒を見るという。
問題は天使たち。
あれからあちらこちらの場所に行き、事件を解決させられる。強盗未遂、殺人未遂、自殺未遂……。
ブレスレットが解決してくれるのもあれば、ガブリエル、ラファエル、ウリエルが出てきて悪いことを未遂に終わらせてくれるのもある。
雷光が使えたのは、最初の銀行強盗の時だけだったようだ。
天使たちが現れるようになってからは、自分たちの本来の目的が、莉子はわからないでいた。
ミカエルに訊こうとしても、彼だけは現れもしなかった。
再びため息をつくと、隣の席に誰かが座った。
「ここ、いいかな?」
「ええ。どう……ぞ」
言いかけて莉子はぎょっとした。群青色の長めの髪の青年が、こちらを向いてにっこり笑っている。
細身の体に整った顔立ち。こんな目立つ人が、今までいただろうか。
彼は、きれいな身のこなしで椅子に座った。
「小鳥遊莉子さんだよね?」
問われて、
「え、ええ。そうです」
焦った様子で答えると、彼はくすりと笑った。莉子の心臓がどくんと鳴る。
「俺は……」
「おい、要。今日の合コン行かねえか?」
群青色の髪の青年が何か言おうとしたその時、ショートの黒髪の青年が話しかけてきた。黒髪の毛先に赤いメッシュが入っている。
「ああ、俺はいいよ」
群青色の青年が断ると、黒髪メッシュの青年はちらりと莉子を見て、納得したように頷いた。
「じゃあ、他の奴誘ってみるよ」
黒髪メッシュが行ってしまうと、群青色の青年は教科書をペラペラめくりながら言う。
「俺は山口 要(やまぐちかなめ)。今行った奴は広川啓史(ひろかわけいし)っていうんだ。よろしくね」
莉子は頷きながらも、自分の所属している文学部史学科では見なかった顔なので尋ねてみた。
「あの……。今まであなたたちの顔を見なかったんですけど、どうして?」
すると要はすーっと無表情になったかと思うと、すぐに作り笑いを浮かべた。
「そう? 1年の時からずっといるんだけどな。まあ、莉子ちゃんとは初対面だけど」
莉子は内心首を傾げた。星宮学園大学は結構なマンモス校だけれども、文学部、それも史学科となれば、かなりしぼりこまれる。
それとも、史学科ではないのだろうか。
考えこんでいると、講師がやってきて授業が始まった。ふと隣を見ると要はノートも開かず、指でシャープペンをくるくる回している。授業に興味なさげな顔をしている。
(授業受ける気ないなら、出席しなくても……。あ、でも、出席しなきゃ単位取れないか……)
莉子が講師の方を向くと、要はふいに小声で話しかけてきた。
「かわいいブレスレットつけてるね。どれ、俺に見せてよ」
「あ、うん」
莉子が頷き、要がブレスレットを触った瞬間、バチッと火花が散った。
「いてっ」
要が顔をしかめた。彼の手を見てぎょっとした。ブレスレットに触れた部分が黒こげになっている。
「ちょっ……」
思わず立ち上がると、講師が言った。
「そこ! 静かに」
「すみません……」
座ると、要にささやいた。
「大丈夫!?」
彼は頷いた。
「ミカエルの奴、俺には触れる資格はないってか……? 上等じゃないか」
要はボソボソとつぶやいたが、莉子には聞こえなかった。
「なんか言った?」
「いや別に」
要は首を横に振ると、莉子の耳元でささやいた。
「帰りにお茶していかない? おごるからさ」
莉子は無意識に了承していた。
最近、いろんなことがありすぎる。ため息ばかりついている気がする。
天使が出てきて聖少女になれだの、妖精が出てきて家にいさせてほしいだの。
妖精のエインセルのことはまだいい。こちらに危害を加えるわけでもないから。それに陽菜が拾った手前、面倒を見るという。
問題は天使たち。
あれからあちらこちらの場所に行き、事件を解決させられる。強盗未遂、殺人未遂、自殺未遂……。
ブレスレットが解決してくれるのもあれば、ガブリエル、ラファエル、ウリエルが出てきて悪いことを未遂に終わらせてくれるのもある。
雷光が使えたのは、最初の銀行強盗の時だけだったようだ。
天使たちが現れるようになってからは、自分たちの本来の目的が、莉子はわからないでいた。
ミカエルに訊こうとしても、彼だけは現れもしなかった。
再びため息をつくと、隣の席に誰かが座った。
「ここ、いいかな?」
「ええ。どう……ぞ」
言いかけて莉子はぎょっとした。群青色の長めの髪の青年が、こちらを向いてにっこり笑っている。
細身の体に整った顔立ち。こんな目立つ人が、今までいただろうか。
彼は、きれいな身のこなしで椅子に座った。
「小鳥遊莉子さんだよね?」
問われて、
「え、ええ。そうです」
焦った様子で答えると、彼はくすりと笑った。莉子の心臓がどくんと鳴る。
「俺は……」
「おい、要。今日の合コン行かねえか?」
群青色の髪の青年が何か言おうとしたその時、ショートの黒髪の青年が話しかけてきた。黒髪の毛先に赤いメッシュが入っている。
「ああ、俺はいいよ」
群青色の青年が断ると、黒髪メッシュの青年はちらりと莉子を見て、納得したように頷いた。
「じゃあ、他の奴誘ってみるよ」
黒髪メッシュが行ってしまうと、群青色の青年は教科書をペラペラめくりながら言う。
「俺は山口 要(やまぐちかなめ)。今行った奴は広川啓史(ひろかわけいし)っていうんだ。よろしくね」
莉子は頷きながらも、自分の所属している文学部史学科では見なかった顔なので尋ねてみた。
「あの……。今まであなたたちの顔を見なかったんですけど、どうして?」
すると要はすーっと無表情になったかと思うと、すぐに作り笑いを浮かべた。
「そう? 1年の時からずっといるんだけどな。まあ、莉子ちゃんとは初対面だけど」
莉子は内心首を傾げた。星宮学園大学は結構なマンモス校だけれども、文学部、それも史学科となれば、かなりしぼりこまれる。
それとも、史学科ではないのだろうか。
考えこんでいると、講師がやってきて授業が始まった。ふと隣を見ると要はノートも開かず、指でシャープペンをくるくる回している。授業に興味なさげな顔をしている。
(授業受ける気ないなら、出席しなくても……。あ、でも、出席しなきゃ単位取れないか……)
莉子が講師の方を向くと、要はふいに小声で話しかけてきた。
「かわいいブレスレットつけてるね。どれ、俺に見せてよ」
「あ、うん」
莉子が頷き、要がブレスレットを触った瞬間、バチッと火花が散った。
「いてっ」
要が顔をしかめた。彼の手を見てぎょっとした。ブレスレットに触れた部分が黒こげになっている。
「ちょっ……」
思わず立ち上がると、講師が言った。
「そこ! 静かに」
「すみません……」
座ると、要にささやいた。
「大丈夫!?」
彼は頷いた。
「ミカエルの奴、俺には触れる資格はないってか……? 上等じゃないか」
要はボソボソとつぶやいたが、莉子には聞こえなかった。
「なんか言った?」
「いや別に」
要は首を横に振ると、莉子の耳元でささやいた。
「帰りにお茶していかない? おごるからさ」
莉子は無意識に了承していた。
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