ヒロインだけど敵が好き♪

きゃる

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第一章 推しがクラスにやってきた

だってヒロインだもの

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 アニメ通りであるならば、この後アリアが「学園を案内しましょうか?」と申し出て、彼らが同意する。

 アリアは私だから、もちろん喜んで。
 その前に、身だしなみのチェックよ。

 桃色の髪は乱れてないかしら? 
 紫の瞳も嬉しさのあまり、血走っていない? 

 私は手ぐしで髪を整え、改めて彼らに向き直る。

「あの、良ければ学園を案内……」

 ちょうどその時、前方から声が聞こえた。

「あー、悪いがオルト君。この後、彼らにここを案内してやってくれ」

 はあぁぁぁ!?
 担任、いったい何言ってくれちゃってるのよ。セリフが違うわ!

「ええーー。僕、今日は友達と遊ぶ約束があるんだけど」

 オルト、君は小学生か!
 でも、これはチャンスだ。
 私は遠慮がちに手を挙げて、恥ずかしそうに告げる(もちろん演技だけどね)。

「あの、先生」
「なんだね? アリア君」
「オルト君に用事があるなら、私が代わります」

 言った瞬間、後悔した。
 なぜならクラスの女子のほとんどが、真似して手を挙げたから。

「はーい、それなら私も」
「なに言ってんのよ、私よ、私!」
「あんたブスのくせに、引っ込んでなさいよ」
「なんですってぇ。あんたこそ、鏡を見れば」

 イケメンの効果、恐るべし。
 教室が突然、修羅場に変わる。
 アニメでは、ヒロインのアリアがあっさり案内していたのに、現実では競争率が高そうだ。これだと、有無を言わさずくじ引きでは!?

「仕方ない、僕が案内するよ」

 ちょっと待ったオルト。
 私の推しを相手に、仕方ないって何よ!
 いやいや、ここで怒ってはいけない。
 私は控えめに(聞こえるよう)口にする。

「オルト、手伝うことがあれば言ってね」
「わかった。じゃあ先生、アリアと一緒でいい?」

 オルトが可愛く首をかしげて、先生にたずねた。彼はそんじょそこらの女子より可愛く、先生方に気に入られている。

 あ、もちろん私の方が女の子らしいわよ? 
 なんたって、ヒロインだもの。

 先生が、うなずきながら応えた。

「ふむ、それなら二人で案内しなさい。君達もいいね」

 よっしゃあぁぁ!!
 でかした、オルト。
 昼食でプリンが出たら、譲ってあげてもいいわ。

「ええ~~」
「アリアばっかりずるい」
「美少女は得よね」

 クラスメイトのやっかみも、め言葉にしか聞こえない。

 いいの、今なら許せるわ。
 ヒロインに生まれ変わった私は、(推しへの)愛に生きると決めたもの。



 一番身分が高いのは、公爵家のディオニス。
 彼がいるせいか、留学生(実は敵)は放課後、うちのクラスに集合する。

 ディオニス、レヴィー、ジェラールにクロム。
 背の高い美形四人が一堂に会する姿は、目の保養を通り越して壮観だ。

「前世でこんな機会があれば、プラチナチケットどころかオリハルコンチケットだわ」

 自分でも、何を言っているのかよくわからない。
 ともかく、女子のトゲットゲの視線を浴びながら、私は留学生達に学園の施設を案内するべく張り切っていた。

「みなさま、初めまして。高等部二年のアリア・ファブリエと申します」

 私は感じ良く微笑み膝を折り、精一杯自己アピールに努める。

「ごめんね、よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 同じクラスのディオニスに柔らかく微笑まれたので、私も笑みを深めた。
 彼のことはすでに語ったので、省略。
 付き従うレヴィーも語れば長くなるので、泣く泣く省略する。

「わざわざすまない」
「いいえ、構いませんわ」

 頭を下げたジェラールは、ベルウィード国将軍の息子で四人の中では一番体格がいい。
 侯爵家の次男でもあり、剣と馬術が得意だ。

「では、早速行きましょう」

 冷静なクロムは男爵家の三男で、眼鏡をかけている。赤い髪の色がコンプレックスで、赤毛は知力が低いと決めつけられるのを、何より嫌う。

 全てはもちろん、アニメとファンブックからの情報だ。

 先頭がオルト、その隣に公爵家のディオニス、すぐ後ろに従者のレヴィーがいる。その後ろを歩くのは、黒髪に金の瞳のジェラールとまっすぐな赤い髪で琥珀色こはくいろの瞳のクロム。二人は一学年上の三年生。
 私は彼らを眺めるため、当然最後尾。

「眼福、眼福。キレイな方は、背中も素敵♪」



 グランローザ王立学園は王都の南、田舎の地区にある。
 生徒は全員寮生活。赤茶けたレンガの建物が並ぶ広大な敷地は、緑の森に囲まれていた。

 オルトはまず、中等部と高等部の校舎を順に案内する。
 私は質問に耳を傾けるフリをして、さりげなくレヴィーの隣に並ぶ。彼は無愛想だけどカッコよく、頭もいい。オルトの話を一語も漏らさず聞いているようだ。

 続いて別棟の白い建物へ。
 この先は、アリアのセリフだ。

「こちらが高等部の食堂です。吹き抜けで、学年ごとに利用できる階が異なっているんですよ」
「学年ごと?」
「ええ。一階は一年、二階が二年、三階は三年生が使用します。例外は生徒会のメンバーだけで、学年など関係なく、見晴らしの良い三階席に座れます」
「学年別じゃない方が、僕はいいんだけどね」

 オルト、黙って。
 せっかく私が猫を装着して説明しているのに、茶々を入れるのはやめなさい。

「そう、学年別とは寂しいね。でもまあ、君のように可愛らしい子が同じ学年で、僕は幸運だな」

 ディオニスの口説き文句は、通常営業だ。
 うっかりときめいてはいけない。

 さすがは公爵家のお坊ちゃま。
 彼は全ての女性に親切で、話し方も優しい。
 無表情な従者のレヴィーと足して二で割れば、ちょうど良いだろう。

「学年だけ?  席順に爵位は関係しないのですか?」

 キターー!
 男爵家のクロムが眼鏡の縁を触りながら、放映通りの質問をした。

「ええ、ほとんどが貴族の子女ですもの。爵位や序列を気にしていたら、美味おいしい食事も美味しくありませんよね?」

 彼らの登場する回は何度も見たので、セリフもしっかり覚えている。ここでアリアがアップとなり、ターンしながら可愛くにっこり笑うのだ。

 ヒロインらしい仕草は、現実で行えばかなりわざとらしい。だけど彼らに印象づけるため、全力で頑張ろう。

 緑のスカートをひるがえし、くるりと回る。
 続いて首をかしげ、ニコッと笑った。

 この後みんなは、アリアの笑顔に息をむ――はずが!?

「それなら学年別はおかしいだろ?  どこで誰と食べようが、美味うまいものは美味いよ」

 留学生達の視線は私ではなく、頭の後ろで手を組むオルトに移っていた。

 今のは、アニメにないセリフ。

 おのれ~~オルト。
 どうしてくれようか!
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