ヒロインだけど敵が好き♪

きゃる

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第一章 推しがクラスにやってきた

一応ヒロインです

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「いえ、あの……。あなた方、仲間に誘うなら、もっと丁寧に言わないといけないのではなくて?」

 私は慌てて取りつくろう。
 あざといが、勘違いしたフリをして目をパチクリ。
 自慢じゃないけど、アリアは学園内のコンテストで美少女一位に選ばれたこともある。正直に申告すれば、その後美女部門があって、そっちの方が格が上。

 まあ、今はそんなこと、どうでもいい。侯爵家という家柄と見た目を利用し、言うことを聞いてもらおう。案の定、推しのレヴィーに絡んでいた男子生徒が、彼の肩を掴んでいた手をパッと離す。

「アリアさん。いや、ええっと、これはその……」

 ふん、私の推しに冷たくしたくせに。
 以前オルトをいじめたことも、バッチリ覚えているんだからね! 

 でも、そんな思いはおくびにも出さず、私は笑みを浮かべた。

「もちろんわかっているわ。彼と早くお友達になりたかったのでしょう? 身分で差別するなんて、なことですもの。あなたって優しいのね」

 周囲に聞こえるよう、わざと声を張り上げる。以降レヴィーをいじめた者は、アリア認定『すっごくバカ』だ。そんなこともわからないなら、本物のおバカさんよ?

 アニメのヒロインが、ここまで計算高かったかどうかは知らない。けれど今考えると、彼女はおっとりしながらも、自分の意志を貫いていた気がする。

 何を隠そう、私はオルトと同じく生徒会の一員だ。問題行動を起こした生徒を報告すれば、学園長のめいでもある生徒会長が検討し、処分を下してくれる。
 今まで言いつけたことはなく、これからもたぶんしない。生徒会長は苦手だし、アリアは優しいと評判だから。

 ディオニスを取り巻く女生徒達はこちらに興味をなくしたらしく、おしゃべりを再開している。

「ええっと。それで、ディオニス様のお好きなものは?」
「ずるい。それ、私も伺いたかったのに」

 時おり「アリアったら。まーた男子にびを売って」との声が聞こえるが、そんなものは気にしない。推しではなく、別の者が邪険に扱われたとしても、私はきっと同じことをしただろう。

 いくら貴族の力が強くても、威張って良い理由にはならない。この学園のほとんどの生徒は、たまたま高い身分に生まれただけで、自分が偉いわけではないのだ。同じ学生として、仲良くすればいい。

 ――どうして貴族じゃないってだけで、バカにするの? 

 今までも、身分を振りかざして偉そうに振る舞う生徒が嫌いだった。けどそれは、転生前の自分が日本人だったからかもしれない。私達は『宗教や身分、肌の色で差別をしてはいけない』と、家や学校で教えられる。きっと頭のどこかに、前世の記憶が残っていたのだろう。

 以前「身分の低い者をいじめてはいけない」と説いた結果、「優しい」とか「天使のよう」だと評された。日本での常識が、この学園ではあまり通用しないようだ。
 ヒロインに生まれ変わったと気づく前から、私はアリアとして振る舞っていたみたい。

「チッ、余計なことを」

 舌打ちし、低くつぶやくレヴィー。
 嫌がらせをした二人も反応する。

「なっ、お前!」
「構うな。行こうぜ」

 私がじっと見ているのを感じたのか、レヴィーに手を出そうとした男子生徒が足早に去って行く。

 最推しにじろりとにらまれても、私は耐える。

 大丈夫、わかっているから。
 従者のレビーはなかなか心を開かない。
 しかも今のは、アニメにないシーン。
 原作では、従者がもっと傷つき手遅れ寸前で、ようやくヒロインが止めに入るのだ。

 ――待てよ? 今の私よりアニメのヒロインの方が、腹黒なのではないかしら!?



『銀嵐のベルウィード』では、乙女ゲームさながらに、ヒロインのアリアが留学生達と仲良くなっていく。彼女と留学生達との交流を見て、ヒーローのオルトがやきもきするという、王道パターンだ。

『アリア。優しいのは君の良いところだけど、僕としては、その……ちょっと』
『ちょっとって? 変なオルトね』

 ……とまあ、こんな感じ。
 にぶいアリアはオルトの想いに気づかず、クスクス笑う。主役のオルトもまた、ヒロインに対する自分の気持ちを持て余していた。
 敵の四人もアリアに心を惹かれていくが、大望を優先するため、それぞれの想いを封印する。

「オルトのことはどうでもいいけど、彼らには、バッチリ惹かれてもらいましょう!」

 趣味と実益を兼ね、私はストーリー通り留学生達の周りをうろうろすることにした。何度も見たから、ヒロインと敵一人一人との心温まるシーンは、頭に入っている。セリフも覚えているので、すんなりいくはずだ。 

 敵の四人がヒロインに夢中になってくれれば、話は早い。彼らの野望を手伝うことを条件に、仲間にしてもらおう!

 まずは三年生。
 せっかくなので、一気に距離を縮めたい。
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