わたしのパーティーが全員ラスボスなんだけど!?

きゃる

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第二章 ラスボスが勇者?

お触りは恥ずかしい

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 ――と、思ったのもつかの間。行く先々で魔物が出現する。

「【シャドーフレイム】!」
「【波濤はとう】」

 人の悪意、ライムバルトが黒い炎で巨大なクマの魔物を包みこみ、龍神がそれを押し流す。

「グオォォォ」
「ふん、まだ生きておったか。しぶといやつめ。余が直々に葬ってやろ……」
「【ホーリーアロー】」

 尊大な魔王より先に、大天使がトドメを刺した。

「なっ……」
「ふふ、遅いよ。『弱き者』、と偉そうに言ったのは誰だっけ?」
「貴様っ」
「はい、お二方ともそこまでです! ケンカをしたら、ご飯抜きですよ」

 わたしは急いでとめに入った。
 魔力はできるだけ、温存してほしい。

 魔力切れを起こしたラスボスは、なぜかわたしと触れ合わないと、魔法が使えなくなってしまうから。しかも、魔力切れを起こした後は、触った時にしか使えないという効率の悪さだ。


 前回もこんなことがあった。

『しっかりつかまれっ、振り落とすぞ』

 龍神様におぶわれて、移動も楽々――なわけはなく、多様な技を繰り出しながらのスピードについていけず、しがみつくので精一杯。
 開けた場所に出たところ、サラマンダーに囲まれた。

『娘、もっと寄らぬか。余に魔力を供給するのが、お前の務めであろう?』

 ――で、ですが魔王様。頬が肌に密着して恐れ多いです。

『こっちも。抱きついてくれないと、力を出せないな~』

 大天使は、安定のセクハラ具合。
 顔がいいから許せるけれど、こっちが恥ずかしい。

『僕の腕を貸してあげてるのに、その態度は何? 寄り添い方が足りないと、力が出ないなぁ』

 ――嘘、おっしゃい。片手で楽々倒せるくせに、人の悪意は意地悪だ。

 いくらわたしが彼らのファンでも、何度もお触りは恥ずかしい。こっちばっかりドキドキして、後からからかわれるのも嫌だ。わたしの心の平安のためにも、魔力の無駄遣いは遠慮してほしい。

「あの……。大技の過剰な使用は控えていただけると、助かります。魔力の供給が追いつかない上、ベタベタ触るのも心苦しいと言いますか……」

 思いを口にしたわたしに、魔王が反論する。

「ふん、人間ごときが偉そうに。好きで協力しているとでも? だが余は心が広いから、辛い食事で手を打とう」

 魔王アルトローグは香辛料がお気に入り。
 唐辛子入りのサルサソースやトマト煮込みが、お気に召したようだ。

「ええぇ~、辛いの苦手。ねえ、僕頑張ったでしょう? 甘い焼き菓子がいいな」
「ライムバルト様、お菓子はご飯じゃありません」
「人間の価値観を、僕に押しつけないで!」

 人の悪意は、お菓子がお好き。
 頬を膨らませてねる姿は愛らしいが、ないものは仕方がない。

「すみません。正直に言うと、材料がなくなりました」
「そんなあ……」
「あっ、でもさっき倒したクマのきもと毛皮を次の街で売れば、お砂糖やハチミツが買えますよ」
「待~て~な~い~」
「ケーキ屋さんにも行けるかも。たっぷりのジャムを塗ったパンもいいですね」

 途端に目を輝かせる姿は、やっぱり可愛い。

「それなら私は、葡萄酒もほしいな」

 パンと聞いて反応したのは、大天使ウリエルだ。
 彼はパンと葡萄酒が大好きで、涼しい顔で焼きたてのパンと用意した葡萄酒を全て平らげたこともある。食べ損ねた面々が激高し、あわや大惨事。干し肉が残っていたおかげで、事なきを得た。

「焼き魚はないのか? すまし汁でもいいぞ」

 龍神もすかさずリクエスト。
 彼は、魚や貝のすまし汁を好む。
 
『男心を掴むには胃袋から』というのはラスボスにも当てはまるらしく、今のところ彼らは、日々の食事のために頑張ってくれている。本来なら、推しには無条件でみつぎたい。でも、貢ぐものがない上、貢ぐだけでは生きていけないのがこの世界だ。

 夕食の残ったシチューを平らげながら、わたしは思う。

 ――大天使に龍神、魔王に人の悪意まで。推しのラスボスに囲まれている姿を見たら、以前の自分はなんて言うかな?



 星々が頭上で燦然さんぜんと輝く夜。
 空気は澄んで、聞こえてくるのは川のせせらぎと虫の声。
 暗くとも怖さは感じず、不便でも元の世界に帰りたいとは思わない。

「残りわずかな寿命でも、こっちの方が健康的だしね」

 そう。昔のわたしは不登校で引きこもり。
 いつだって自分に自信がなく、消えてしまいたいと願っていた。
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