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ジュリアン編
学園の噂
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その噂はすぐに学園中を駆け巡り、もちろん初等部や中等部にも届いていた。
「新しく中等部一年の特進に入った転校生、眼鏡取ったらスッゲー可愛いらしいぞ!」
「何人か見たやつがいるらしい。肌もすっごく白いってさ」
「髪も珍しい色をしているらしい」
「あそこにはマリエッタもいるから、あのクラスだけずり~な」
二、三年の教室でも当然、最近現れた美少女の噂で持ちきりだ。
「あの子、編入試験も満点だったってよ」
「うちの入学試験難しいだろ? 編入はその2倍位難しいって聞いたぞ」
「カイル様やリューク様もうかうかしていられないわね」
「イヤ~、あの方々が年下なんか相手にしたら、私もう耐えられない!!」
カイルが面白そうに笑って言う。
「だってさ、リューク。残念ながら、君の『眼鏡かけとけ』は効果がなかったようだよ? 君の心配していた通り、こんなに早く周りにばれちゃうなんてね 」
「しょうがないだろ。あいつ昔からすぐに目立つから。この前もやらかしてたし、だいぶ淡くなってたけどあの髪の色も一人しかいないし 」
話題の彼女と幼なじみの公爵令息リュークが、ため息をつく。
「本当。つくづく残念だったよね。君も私も婚約できなくて 」
「俺たちが……正確には親だが……、幼いあいつを追い詰めなければ、もしかしたら熱も出さずに元気でいてくれたかもしれない。それだけが今でも申し訳ないと思う」
「そうだね。私もあの時倒れる前に気づいてあげられたら、と今でも思うよ。でも起こった事は覆せないから、マリエッタに頑張ってもらうしかない。何たって、学園内ではマリーが一番の癒し手だからね」
「それから一番の彼女のファンだ。マリーのガードが固すぎて相変わらず話も出来ない」
「幼なじみなのに?」
「幼なじみだからだ。マリーに異様に警戒されている」
「くっくっく。マリエッタが一番彼女の婚約者みたいだね」
リュークの親友で、この国の第二王子のカイルが楽しそうに笑う。
「それ、あいつが聞いたら怒るぞ。本人はあくまでもマリエッタのライバルだって言い張っているらしいから。魔法の属性も違うのに、何のライバルなんだか」
☆☆☆☆☆
「ジュリアン! そんなに走ってどこ行くの?」
緑の髪の少年が、銀色の髪のまだあどけない少年に声をかける。
「ああ、ユーリス。ちょっと中等部に行ってくる。噂が本当なら、あの人だ!!」
幼い頃に僕の名前を呼んでくれた人。
みんなが僕を避ける中で、面と向かって注意をしてくれた人。
王都を離れると知った時は、悲しかった。
2つ年上の彼女が、今、元気かどうか知りたい。
「ちょっと待って。行くなら僕も一緒に行くよ」
ついでに中等部のみんなやマリエッタの顔も見ておきたいし。
ユーリスも慌てて後を追う。
「いいけど、早く! 休み時間が終わっちゃうよ!」
カルディアーノ学園の敷地は広く、所属部が違うと子どもの足では移動にも時間がかかる。
初等部の制服の色は濃いグリーン。中等部の制服は金色の縁取りがある紺色。高等部の制服はやはり金色の縁取りがある臙脂色。
だからどこにいても所属がわかるし、特に校舎間の移動を制限される事もない。
中等部の廊下を走る。目指すクラスまであと少しだ。
「廊下は走っちゃダメ~~って、あら、ジュリアンくん!」
「キャーっ今日も可愛いわー」
「ユーリス君もいらっしゃい。お菓子があるわよ~」
初等部の生徒は相変わらず珍獣扱いだ。
でも、面倒を起こしてはいけないとカイル従兄様にも言われているから、作り笑いをして走りながら手を振っておく。
「ゴメン、時間が無いんだ。お姉様達、またね!」
きちんと一言添えておく。
「「「可愛い~~!!」」」
「お姉様って言われたわ」
「やっぱり男は年下よね!」
何だかよくわからない声を背に、走り続ける。
ようやく『特進魔法科1年』のクラスが見えた。
期待を込めて、バタンッとドアを開ける。
「ブランカ!!」
僕はようやく、大好きなあの人の名前を呼ぶ事ができた。
「新しく中等部一年の特進に入った転校生、眼鏡取ったらスッゲー可愛いらしいぞ!」
「何人か見たやつがいるらしい。肌もすっごく白いってさ」
「髪も珍しい色をしているらしい」
「あそこにはマリエッタもいるから、あのクラスだけずり~な」
二、三年の教室でも当然、最近現れた美少女の噂で持ちきりだ。
「あの子、編入試験も満点だったってよ」
「うちの入学試験難しいだろ? 編入はその2倍位難しいって聞いたぞ」
「カイル様やリューク様もうかうかしていられないわね」
「イヤ~、あの方々が年下なんか相手にしたら、私もう耐えられない!!」
カイルが面白そうに笑って言う。
「だってさ、リューク。残念ながら、君の『眼鏡かけとけ』は効果がなかったようだよ? 君の心配していた通り、こんなに早く周りにばれちゃうなんてね 」
「しょうがないだろ。あいつ昔からすぐに目立つから。この前もやらかしてたし、だいぶ淡くなってたけどあの髪の色も一人しかいないし 」
話題の彼女と幼なじみの公爵令息リュークが、ため息をつく。
「本当。つくづく残念だったよね。君も私も婚約できなくて 」
「俺たちが……正確には親だが……、幼いあいつを追い詰めなければ、もしかしたら熱も出さずに元気でいてくれたかもしれない。それだけが今でも申し訳ないと思う」
「そうだね。私もあの時倒れる前に気づいてあげられたら、と今でも思うよ。でも起こった事は覆せないから、マリエッタに頑張ってもらうしかない。何たって、学園内ではマリーが一番の癒し手だからね」
「それから一番の彼女のファンだ。マリーのガードが固すぎて相変わらず話も出来ない」
「幼なじみなのに?」
「幼なじみだからだ。マリーに異様に警戒されている」
「くっくっく。マリエッタが一番彼女の婚約者みたいだね」
リュークの親友で、この国の第二王子のカイルが楽しそうに笑う。
「それ、あいつが聞いたら怒るぞ。本人はあくまでもマリエッタのライバルだって言い張っているらしいから。魔法の属性も違うのに、何のライバルなんだか」
☆☆☆☆☆
「ジュリアン! そんなに走ってどこ行くの?」
緑の髪の少年が、銀色の髪のまだあどけない少年に声をかける。
「ああ、ユーリス。ちょっと中等部に行ってくる。噂が本当なら、あの人だ!!」
幼い頃に僕の名前を呼んでくれた人。
みんなが僕を避ける中で、面と向かって注意をしてくれた人。
王都を離れると知った時は、悲しかった。
2つ年上の彼女が、今、元気かどうか知りたい。
「ちょっと待って。行くなら僕も一緒に行くよ」
ついでに中等部のみんなやマリエッタの顔も見ておきたいし。
ユーリスも慌てて後を追う。
「いいけど、早く! 休み時間が終わっちゃうよ!」
カルディアーノ学園の敷地は広く、所属部が違うと子どもの足では移動にも時間がかかる。
初等部の制服の色は濃いグリーン。中等部の制服は金色の縁取りがある紺色。高等部の制服はやはり金色の縁取りがある臙脂色。
だからどこにいても所属がわかるし、特に校舎間の移動を制限される事もない。
中等部の廊下を走る。目指すクラスまであと少しだ。
「廊下は走っちゃダメ~~って、あら、ジュリアンくん!」
「キャーっ今日も可愛いわー」
「ユーリス君もいらっしゃい。お菓子があるわよ~」
初等部の生徒は相変わらず珍獣扱いだ。
でも、面倒を起こしてはいけないとカイル従兄様にも言われているから、作り笑いをして走りながら手を振っておく。
「ゴメン、時間が無いんだ。お姉様達、またね!」
きちんと一言添えておく。
「「「可愛い~~!!」」」
「お姉様って言われたわ」
「やっぱり男は年下よね!」
何だかよくわからない声を背に、走り続ける。
ようやく『特進魔法科1年』のクラスが見えた。
期待を込めて、バタンッとドアを開ける。
「ブランカ!!」
僕はようやく、大好きなあの人の名前を呼ぶ事ができた。
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