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3.1 目覚め
通勤
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アパートを出てすぐに感じたのは、いつも吸う普通の空気となんら変わらないはずだ。ところが、少しだけ違った。
何が違うかと聞かれると正確に確実に伝えることなどは不可能だ。
「なんだか、今日は爽やかだ」
僕は大きな欠伸とともにそんな言葉をこぼす。
それを聞き取ったのか、後からドアを飛び出してきた少女が僕に同意する。
「そうですね、早起きした日の朝はどうしてかとってもいい気持ちですよね?」
彼女の言う通りだ。きっと朝の爽やかな風が僕に未視感を幹事させた……そう考えるの一番正しいのだろう。それで説明はつくはずだ。
僕は自分の脳を騙すように何度も何度もそう思った。――それが本当に正しかったのか、はたまた、きちんと原因を見つけるべきだったのか、そんなことを考える余裕すら与えない程に強く思い込んだ。
「ああ」
いつだってそうだ。騎士の仕事をしていた時に使っていた常套手段で、納得いかないことを命令された時は自分の意思を曲げその命令が正しいと思いこむようにしていた。たったそれだけで、何らかの問題が生じた時の予防線になるのだ。
僕はそうやって自分に言い訳ばかりしてきた。きっとこれからもそれは変わらないだろうし、変えるつもりもないが、なぜ今こんなことを考えているのだろうか、きっとそれは無意識な既視感によるものなのだろう。
一度、いや何度も経験した家から外に出るというその動作に、新鮮味が加わることによって僕の中に何らかの変化が生じたのかもしれない。
ふとそんな風に考え込んでしまった。
ニヒルは僕が考え込んでいた事を不思議に思ったのか、僕の肩を優しく叩いた。
「どうしたんですか?」
「いやなんでもないよ……」
僕は彼女に心配をかけまいとゆっくりと歩き始めた。彼女は後ろから早足でついてくる。それがあまりにも久しぶりなことに感じ少しばかり感動した僕に誰が共感してくれるだろう。いや、誰も共感などしてくれない。それは、誰しも僕に成り代わることなど出来ないからだ。
今丁度僕の右側を通り過ぎていくサラリーマンだって、さっき窓の外に見えた早すぎる出勤者たちにだって、僕と行動をともにしてきた悪魔にさえ変わりなど務まるはずもない。――僕が堺を助けなくちゃいけないんだ。
「早く会社にいかないと間に合わないよ」
自分がゆっくり思い悩んで時間を消費したことを棚に上げながら、僕は後ろから小走りで駆け寄ってくるニヒルに激を飛ばした。
「いや、まだまだ大丈夫ですって……そんなに焦らなくても」
後ろを振り返った僕に追いついた彼女が息を切らせながら僕に言った。
流石に自分がどれくらい勇んで早歩きしていたのか理解しているつもりだったが、思ったよりも早く歩いていたようだ。彼女との身長差を考えれば簡単にわかったはずだのに、余裕を持っているつもりで、不安しかなかったらしい。
僕は彼女のことを見ているつもりで、自分のことしか見ていなかった。いつものように言い訳ばかりして周りが見えていなかった。
「ごめん、ゆっくり歩いていたつもりだったけど……飛ばしすぎたね」
「張り切るのは良いんですけど、今日はゆっくりとして下さい。それじゃなきゃ今日本社にお招きした意味が……」
ニヒルの言葉は後になるほど聞き取りづらくなり、最後の方はまるで聞き取れなかったが僕を励ましてくれているようだ。
「まあ、よくわからなけどとにかく会社には早く着いたほうが良いだろう?」
「社会の常識的に考えたらそれが当たり前ですし、私も最初こそ急かしはしましたがどうしてそんなに早く会社にいきたいんですか?」
別に僕は早く会社にいきたいわけじゃないが、どうしてか明るい場所にいるのが苦痛に感じている。それがただたんに早起きした影響なのか、それともそれ以外の要因があるのか、理由はどうでもよかった。ただ、どうしても人通りが多く、なおかつ明るく僕たちを照らす太陽がとてもあたたかく、後ろめたさを感じさせる。
しかし、そんな自分ですらよくわからない感情をあくまで他人であるニヒルに対してこぼすわけにはいかない。いいや、彼女は僕にとって単なる他人ではなく、限りなく家族に近い存在だ。ただそんな存在にも打ち明けられない気持ちと言ったほうが正しいかもしれない。
僕は自分の気持を誤魔化す。
「僕はもともと真面目なのさ」
そんな僕の言葉に、明らかに納得していない様子のニヒルだが、追求するようなことはしてこない。
「そんなことないと思いますけどね……でもイグニスさんにも話したくないことぐらいあるでしょうし仕方ないですね」
これで話は終わりですと、ニヒルはいつものように微笑んで歩き始める。
本当は全て話してしまったほうが気持ち的には楽なんだろう。――それでも僕は彼女に負担をかけるつもりはない。
何が違うかと聞かれると正確に確実に伝えることなどは不可能だ。
「なんだか、今日は爽やかだ」
僕は大きな欠伸とともにそんな言葉をこぼす。
それを聞き取ったのか、後からドアを飛び出してきた少女が僕に同意する。
「そうですね、早起きした日の朝はどうしてかとってもいい気持ちですよね?」
彼女の言う通りだ。きっと朝の爽やかな風が僕に未視感を幹事させた……そう考えるの一番正しいのだろう。それで説明はつくはずだ。
僕は自分の脳を騙すように何度も何度もそう思った。――それが本当に正しかったのか、はたまた、きちんと原因を見つけるべきだったのか、そんなことを考える余裕すら与えない程に強く思い込んだ。
「ああ」
いつだってそうだ。騎士の仕事をしていた時に使っていた常套手段で、納得いかないことを命令された時は自分の意思を曲げその命令が正しいと思いこむようにしていた。たったそれだけで、何らかの問題が生じた時の予防線になるのだ。
僕はそうやって自分に言い訳ばかりしてきた。きっとこれからもそれは変わらないだろうし、変えるつもりもないが、なぜ今こんなことを考えているのだろうか、きっとそれは無意識な既視感によるものなのだろう。
一度、いや何度も経験した家から外に出るというその動作に、新鮮味が加わることによって僕の中に何らかの変化が生じたのかもしれない。
ふとそんな風に考え込んでしまった。
ニヒルは僕が考え込んでいた事を不思議に思ったのか、僕の肩を優しく叩いた。
「どうしたんですか?」
「いやなんでもないよ……」
僕は彼女に心配をかけまいとゆっくりと歩き始めた。彼女は後ろから早足でついてくる。それがあまりにも久しぶりなことに感じ少しばかり感動した僕に誰が共感してくれるだろう。いや、誰も共感などしてくれない。それは、誰しも僕に成り代わることなど出来ないからだ。
今丁度僕の右側を通り過ぎていくサラリーマンだって、さっき窓の外に見えた早すぎる出勤者たちにだって、僕と行動をともにしてきた悪魔にさえ変わりなど務まるはずもない。――僕が堺を助けなくちゃいけないんだ。
「早く会社にいかないと間に合わないよ」
自分がゆっくり思い悩んで時間を消費したことを棚に上げながら、僕は後ろから小走りで駆け寄ってくるニヒルに激を飛ばした。
「いや、まだまだ大丈夫ですって……そんなに焦らなくても」
後ろを振り返った僕に追いついた彼女が息を切らせながら僕に言った。
流石に自分がどれくらい勇んで早歩きしていたのか理解しているつもりだったが、思ったよりも早く歩いていたようだ。彼女との身長差を考えれば簡単にわかったはずだのに、余裕を持っているつもりで、不安しかなかったらしい。
僕は彼女のことを見ているつもりで、自分のことしか見ていなかった。いつものように言い訳ばかりして周りが見えていなかった。
「ごめん、ゆっくり歩いていたつもりだったけど……飛ばしすぎたね」
「張り切るのは良いんですけど、今日はゆっくりとして下さい。それじゃなきゃ今日本社にお招きした意味が……」
ニヒルの言葉は後になるほど聞き取りづらくなり、最後の方はまるで聞き取れなかったが僕を励ましてくれているようだ。
「まあ、よくわからなけどとにかく会社には早く着いたほうが良いだろう?」
「社会の常識的に考えたらそれが当たり前ですし、私も最初こそ急かしはしましたがどうしてそんなに早く会社にいきたいんですか?」
別に僕は早く会社にいきたいわけじゃないが、どうしてか明るい場所にいるのが苦痛に感じている。それがただたんに早起きした影響なのか、それともそれ以外の要因があるのか、理由はどうでもよかった。ただ、どうしても人通りが多く、なおかつ明るく僕たちを照らす太陽がとてもあたたかく、後ろめたさを感じさせる。
しかし、そんな自分ですらよくわからない感情をあくまで他人であるニヒルに対してこぼすわけにはいかない。いいや、彼女は僕にとって単なる他人ではなく、限りなく家族に近い存在だ。ただそんな存在にも打ち明けられない気持ちと言ったほうが正しいかもしれない。
僕は自分の気持を誤魔化す。
「僕はもともと真面目なのさ」
そんな僕の言葉に、明らかに納得していない様子のニヒルだが、追求するようなことはしてこない。
「そんなことないと思いますけどね……でもイグニスさんにも話したくないことぐらいあるでしょうし仕方ないですね」
これで話は終わりですと、ニヒルはいつものように微笑んで歩き始める。
本当は全て話してしまったほうが気持ち的には楽なんだろう。――それでも僕は彼女に負担をかけるつもりはない。
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