よみがえりの一族

真白 悟

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1.3 相棒と信頼

4.娘

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  酒場は昨日訪れた時と変わっていなかった。中にいるのは灯だけで、客の気配は皆無だ。
 よくこんな場所にずっと1人で居れるものだと関心すらしてしまう。だが今はそんな場合ではなく、早く用事を済ませたかったと言ってしまえば元も子もないが、とにかく灯さんに光さんのことを話さなければ……
「灯さんおはようございます!」
   僕が声をかけると、彼女はこちらを向いてにこやかに返事をしてくれた。
「はい、イグニスさんおはようございます!」
   こちらを向いた時、初めて光の存在に気がついたようでキョトンとしていた。

   そんな娘とは対照的に、父親の方は緊張のあまりビクビクしていた。
「や、やあ、灯、お父さんだよ!」
   見ればわかると突っ込みたくなったが、親子の会話を邪魔しまいとグッとこらえた。
「お父様、見ればわかりますわ」
 灯は無情にも僕の心のツッコミと同じことを言った。だが、その時についてきた彼女の笑顔や僕にはなものだろう。

……光はというと何か呪文のようなものを唱えている。僕の耳に聞こえた限りでは、娘が天使だとかなんとか、彼の口から出る言葉は耳にいれない方が身の為なように思えた。
   そんな父の服装にようやく違和感を覚えたのか、口に出す灯。
「お父様、そういえばなぜタキシードなんですの?」
    それからすぐに自分の誕生日のことを思い出したのだろうか、顔を真っ赤に染めて父の方に歩み寄る灯だ。
「お父様いくら私の誕生日とはいえ、タキシードまで来てくることはないと思いますが……それに、仕事が終わってからの約束のはずです!」
――――――そんな風に娘に叱られて、シュンとしている巨体はとてもシュールだった。

………うーん、誰もいない誰もこないこの酒場では仕事も何もないと思うけどね……

   そんな僕の思いを読み取るように、堺は僕の耳に囁いた。
「俺らが来てるから誰も来てないわけでもないと思うで……」
   そんな真面目なツッコミを華麗にかわし、僕は親子のために人肌脱ぐことにした。
   
「どうせ大した仕事もなさそうですし、同じ社員のよしみで店番をかわりましょうか? 堺もいますし、きっと大丈夫だと思いますし……うん、きっと大丈夫!!」

   堺はものすごい勢いで僕を部屋の隅へと連れて行き、今度は僕に怒りの耳打ちをする。
「――――――お前はバカか!? 絶対この店暇過ぎて辛いぞ? それに剣の修行はどうするんや! 確かに俺もおやっさんや灯さんには世話になっとるけど、家族の問題に首を突っ込むのもどうかと思うぞ……?」
 堺の声はでかくて、もはや耳打ちの意味をなしていない。だが一応ひみつの会話であるわけだから僕も耳打ちをする。
「……いや、こんな状況でほうっておいたら逆に建に身が入らないと思うけど?」
「…………確かにそうやけども……あー、仕方ないか……」
   堺の言いたいことはわかるのだが、それよりも仕事に行かないということのほうが僕にとって重要だっただけだ!

「なにをこそこそしているのか知らんが、そうしてくれると助かる!」
   光は思いのほか乗り気なようで、僕たちの方をみてそう声を上げた。だが、それに対して娘、灯の方は認められないようだ。
「イグニスさん、確かにそれはありがたいのですがここは私の仕事場です。確かにあなたたちの会社の一部ではありますが、それでも部外者に働かせるわけには行きません……」
   彼女がいかに自分の仕事に責任を感じているのかということがよくわかった。どうしてそこまで仕事に心血を注げるのか僕には到底わからないし、僕にとって働くコトとは生きるためにする仕方のない作業でしかない。

 別に働きたいというわけではないが、これではサボる口実が……さて、どうしたものか……

「せや!じゃあこいつをここでバイトさせたあれえやん!!」
 堺は先ほどまで否定していたのに案外乗り気なようだ。まさかそんな風に手伝ってくれるなんて、さすが友だ……
……待ってくれ、バイトといったか?
「ちょっ!……」
「――――それでええやんなイグニス!?」
 それを否定したい僕だが、堺も灯さんもそんなに目を輝かせるなよ……

   彼がその意見を出してからは早かった。もともとアルバイトを募集はしていたようだ。ただそもそも客がこないからそのことすら知られていなかった。
   店の合鍵を渡され業務の簡単な説明を受けた。どうでもいいけど信頼するのが早くないか?
「だって、イグニスさんは堺さんと違ってきっと悪いことはしませんもの!」

 店に僕に任せると親子はすぐに出ていった。そのスピードは凄まじく元々未来が決まっていたかのように早かった。
 もしかして、堺が図ったのか? ……そんなわけないか……

   しかし、本当に暇だ。逆に今までなんでこの店が持っていたのか不思議なくらいだ。
「そういえばさあ」
   僕がそう言うと同じように暇を持て余していた男がこちらに注目し、「なんや?」と聞いた。
「あの2人って親子なのに全然似てないよね?」
「まあそうやろな、あいつは養子やからな……」
   そうか……養子なのか…………
「……………………養子……!?」
 実の親子でも驚愕の事実には違いがないわけだが、養子であろうとも驚くべき真実に違いがない。だけど、養子だとしても仲睦まじい2人をうらやましく感じた。それは僕が実の親と会えないことと関係しているかもしれないが、それは僕の気持ちの奥に収めておきたい。

「今頃親子仲良く誕生日パーティーでもしてるのかな……?」
「もしそうじゃなければ、なんで俺たちがここにおるんか意味が分からんやん……」
   うんきっと仲良くしているだろう。そうであることを切に願う。

「そんなことより暇やな?」
「うん、暇だね……」
 今日も堕落した一日が半分ほど過ぎていくのだった。いや、ちゃんと働いてはいるからね?
 
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