よみがえりの一族

真白 悟

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1.6 潜む悪夢

6.堺

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 しかし、ずっとないているというわけにもいかない。なぜなら僕が話さなければならない本題は別にあるわけで、それに関しては一切離していないからだ。
 もちろん、今までよりも衝撃が大きなものになることは初めから予想できたことであるし、予想しておかなければならないことではあったが、それでも、僕は覚悟が少しだけ足りていなかったようだ。
 ここまで腹を割って離しているのに、最後の話題について離す機会を今でも伺っているのだから。
 だからこそ、考え事をしている僕に対してニヒルに先手を取られてしまうなんて非常事態に陥ってしまうのだが、こればっかりは優柔不断な僕には改善仕様のない問題だ。

「あの、イグニスさん?」
 未だ涙声で話しているニヒルを横目に、僕は恥ずかしくて気の利いたセリフは吐くことができなかった。
「……ん? なんだ?」
「私はこれからどんなことがあってもイグニスさんを信頼します」
 おっと、これはもしかしてプロポーズの言葉なのだろうか? なんてくだらないことを考える余裕も出てきたところで、僕のくだらない物語の終盤を語るとしよう。
「ありがとう。だけど、きっとニヒルにとっても衝撃的な話になると思うけど、準備はできてる?」
 僕の問は愚問のようだ。ニヒルの覚悟はとっくに決まっているのだから、これ以上話を引き伸ばす必要などなかったのだ。と思ったが、また僕の話を邪魔する声がどこからともなく聞こえてくる。
(覚悟が必要なのはお前だと思うけどな……)
 本当に悪魔というやつは人の話に釘を打たなければ死んでしまう生き物なのだろうか、僕の覚悟などとうの昔に決まってるし、このまま話さずいたところで、ニヒルが知らず知らずのうちに犯罪に加担する羽目になるだけだ。
(なるほどそういう考えか、ようやくお前の考えていることがわかってきたぞ……ならこのまま様子を見るとするか)
 そうだ、そのまま黙っていてくれ、悪魔に口を出されたところで僕の決死揺るがない。例えどのような最悪の結果に陥ったとしてもだ。

「わかった。じゃあ、最低最悪の物語を語るとするよ。まず始まりは僕と堺が会うよりも前、
いやニヒルと堺が会うよりも前に遡る……
 堺は20年前に僕達と同じ世界からこっちの世界にやってきた。君たちの話を聞くところによると、今のように悪魔や魔物がはびこる世界になったのは1年前だったはずだ。だから堺が来た時点ではこの世界は平和そのものだったはずだ。でもそうなると一つ疑問が生まれる。それは、19年サボり続けた堺がどうして僕が知っている堺より強いなんてことはありえないということだ。
 人の体は年をとると衰えていくのがこの世界では当たり前の理であり、それは20歳を超えたあたりから顕著に見られるらしいけど、堺は38歳という歳では考えられないぐらい若く、僕が知っている18歳の堺よりも遥かに強かった。まあそれ自体はこっちの世界とあっちの世界の常識を超えた何かがあったと考えるのが妥当なんだけどね。
 でもそれはそれで良いとしても、彼はあまりにも強すぎた。まあそれ単体ならそこまでおかしいこともないけれど、その強さは僕でも分かるが、火の悪魔や霧の悪魔をはるかに超越していた。それにも関わらず、彼はベアとの戦いを避けたり、僕を逃がすために魔法を使って悪魔を呼び寄せるという愚行を働いた。
 悪魔よりも強い力を持っているのだからベアなど一瞬で屠りされたはずだと思う。まあ、これ自体は僕の想像なんだけど。それでも、僕と僕と同程度の人間がもう一人いれば、ベアからは逃れらたはずなんだ。現に僕はベアから逃げられたし、もう一人いれば絶対に楽だっただろう。
 つまり考えられるとするならば、それが出来ない何かがあったということだ。それはあいつの正体を知った今でもわかりはしないが、それでもなんとなく思うんだ。きっと彼は僕に自分の正体を知られたくなかったのではないか? なんてね……
 ここからが本題になるんだが、これで彼の若さと強さの秘密がようやく分かる。だけど君に取ってはとても衝撃的だから、心して聞いてくれよ?」

 ニヒルは真剣に聞いていて一体何を言っているのかわからない顔であったが表情を崩して、しかめっ面でこちらを睨む。
「もう、それはいいので早く話してください。私はこれでも一会社の社長です。そうやすやすと遅刻できないんで!」
 それが一番の心配であったが、もう後戻りもできないだろう。

「堺と火山は二人で一つの体を共有して、二人の人物を演じていたんだ。つまり、堺は悪魔ベリアルを自分に憑依させていたんだ。それが故意かどうかはわからないけどね」
 開けた口が塞がらないといった様子の彼女だが、これこそ、今から伝える話の準備運動みたいなもんだ。
「そして、君は悪魔ベリアルの手伝いを知らぬうちにしていたということだ」
「……それってどういう……」
「だから、君が作ったギルドという会社は、僕達のような向こうの国から来た人物を殺しても違和感がないようにするための施設だったんだよ。まあこれも僕と悪魔が建てた推理に過ぎないんだけどね」
 だが、これは十中八九間違いないだろう。

「いえ、私も間違いないと思います。今考えればどう考えてもおかしいことがあります。例えば、どうして私達のギルドには冒険者がいないのか? とか、どうして魔女ばかりが事務員として集められているのかとか? 起業してから、冒険者が堺さん一人しかいないなんてありえないはずです。それにそんな会社が1年と持つはずありませんし……
 だから、考えうることとしては、私の会社にも他の冒険者がいたということです。それはイグニスさんの予想通り私達の世界から来た魔法士だったのでしょう多分それは間違いありません。そしてその全ての人が、悪魔に殺されたために記憶にすら残らなかったということでしょう……」
 確かに僕の言いたかった推理は彼女が言ったことと寸分違わないが、ニヒルにとってそれがどういう意味を指すのかということぐらい気がついているはずだ。

 それなのに……
それなのにどうして平然としていられるんだ……?

 だってそうだろう? 彼女は自分が望まないうちに悪魔に仲間を捧げていたということだぞ!? それに気がついた優しいニヒルが平然としていられるはずがない! 自分の会社の社員ともなればそれは尚の事だろう……。

 だからこれは、平然としているふりをしているとすぐに気がつくことが出来た。だが、僕には彼女をどうしてやる事もできない。先程のように冗談目かしく頭を撫でるような状況でもないのだ。
 彼女が知らずに犯してしまった罪は彼女自身が持っていかなくちゃならない。悪魔と関わるとはそういうことなんだ。悪魔と知っていようが、知らなかろうが関係などない。悪魔とはそんな理不尽な存在なんだ。

 ニヒルは平然としているようで内心穏やかではないだろう。しばらくは無言のままそっとしておいてやるのが一番だろう。それが、僕の自己満足だとしても構わない。僕に出来るのはそれだけなのだから……。
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