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2.2 悪魔との出会い
3.登山
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一人残された僕は、火山の山頂を目指した。しかし、火山を登るうえで、僕の装備はあいにくまともとは思えないような重装備、一応今巷を騒がせている2体の悪魔を警戒してのことだったが、それでも、一人でなんの準備もなく山を登る事自体が正気の沙汰とは思えなかった。
もちろん、部下の中にあれほど多くの悪魔教信者がいる可能性を考えていなかったというわけではないが、それを見抜けなかった僕達の失態としか言いようがないわけだから、この状況自体、自分たちが作り出した絶望というわけだ。
しかし、運がよいことに、この火山の標高はそこまで高いというわけでもない。これを幸いと取るかは自分の心次第ではあるが、反対に言えば、見方以外の者たちも登りやすいということだ。なによりも、百年前に起きた大噴火が今起こらないという保証もどこにも無い。
「ほんと、絶望的な状況だよな……」
僕はそれだけを呟くと、登山を開始した。もちろん装備を外すわけにもいかないので、重さ100リブラ(約30kg、1リブラ=約3g)もあるわけだ。山頂までの道のりは長いだろう。だが、だからといってゆっくりしている時間もない。二人と何人かの仲間が時間稼ぎをしている間にも、なんとか頂上を目指さなくてはならない。
もし、仮に悪魔教信者の誰かに気が付かれてしまったら、山頂とまではいかないが、馬で追ってくるのは当然だろう。そうなると、徒歩で登る僕はかなり不利になるだろう。ならばと、1ペースで(約30cm)でも先に進まなければならないというのが僕の本心だ。
「……っだが、流石に甲冑で登山は狂ってるだろ……僕は普通の人間だぞ…………」
乱れる呼吸も絶え絶えに、一人で今の状況を呪うがごとくつぶやいた。とうぜんだが、誰からか、返事が返ってくるなどということはありえない。むしろ、ありえてはいけないのだが、そんな風に不満を吐かなければ、この苦行を断念してしまいそうなほど、僕の精神が崩壊してしまいそうだ。――というか、水分もなしに登山とは自殺行為じゃないのか?
そんな疑問が浮かんでは消える中、僕はひたすらに足を進め続けた。それでも、流れる汗は自身の水分の不足を表している。今はなんとか、足が進むが、これからさきも同じことが起こるとは限らないように、僕の足もいつ止まるかなど自分でもわからなかった。
それから、根性論のような兵士訓練所での指導を思い出して、それよりも遥かに厳しい登山は佳境を迎えていたが、そんな中で自分の体に関する問題だけではなく、状況的な問題にさし当たってしまう。この、精神的にも肉体的にも追いつめられたこの状況、もはや倒れ伏してしまっても誰にも責められないこの状況、それを超えるであろう最悪の事態。それはこれを含めても相当可能性の低い出来事であったが、それでも予想は出来ていたこと。――最悪の事態である噴火。それはなんとか回避できたようだが、それでも神は無情であることの証明。それが道の崩壊。
しかし、それは仕方がないと言うこともわかっていた。何年かに一度行う儀式のために、道を整備し続けるなんてそんなことをする予算はない。だから、国がそれを怠ってしまったことにはなんの怒りもないが、神に誓って自然に対する絶望が無いかと言われれば、NOと答えるほかない。
先程までの上りに加え、急な落差を昇り降りしなければならないわけだ。常人ならここで諦めてしまうだろうが、国を守護する側の人間である僕は、簡単に諦めてしまうわけにもいかない。誰が許してくれようが、自分自身が許せないからだ。
そう意思を新たに、地割れに飲まれないようになんとか乗り越えて、道の続きへと合流した。山頂まではあと少し、頂に立つ者としては山に屈してなどいられない。後に待っている儀式に使う体力にさえ考慮せずに全身全霊をかけて、坂道を登り続けた。――朦朧とする意識の中で何か暑さを感じ、我に返る。その暑さの正体は言うまでもなく、火口だ。だが、精神は返ってきても、肉体は疲労困憊で足の感覚はもうとうの昔になかった。それでも足を進められたのは、ひとえに、国で待つ彼女と、彼女が思う国民のためだろう。いや、厳密には違うのだろうが、言い訳として取ってもらってもかまわない。言い訳だとしても、僕はそれを糧としてここまで来たのだから、大したものだと褒めてもらいたい。例え周りに誰もいなくても、それくらい望んだって罰は当たらないだろう。なにより、そんな賞賛の言葉がもらえるだけでも、ここまで頑張った甲斐があるってものだ。
「…………なん…………て……な」
僕も気が付かないうちに、口中の水分が枯渇していたようで、声は掠れ、火口から伝わる暑さが喉を焼いた。焼いたと言っても比喩的なことで、喉が焼けただれるなんて恐ろしいことにはならない。
うん、こんな事を考える力が残っているうちはまだ大丈夫だろう。そう思い、僕はついていた膝を起こし、目に見えている山頂を目指した。初代騎士王、火の騎士の墓はそこに奉られている。なんでも墓石は特注性で灼熱を誇る溶岩ですら溶かすことは出来ないとかなんとか……、まあ真実はこの目で見るまでは噂でしかないのだが、それでも、僕はその話を期待している。というよりも、それが真実でなければ、僕がここまで来た意味など皆無だろう。
そうして、ゆっくりと足を前へ、前へと進め、ようやく墓が目視できるところまでやってきた。
「本当に……あった……」
僕は大きくため息をつき、そのまま地面へと倒れ込んだ。なんだか、先程よりも意識が朦朧としているようで、あまりにも眠たい。まぶたがすぐにでも落ちてしまいそうで、必死に耐えしのぐも、僕の体は意思を無視した。消えていく意識の中で、聞き覚えのあるような声が僕の脳内を駆け巡り、そのまま深い眠りへと誘われた。
もちろん、部下の中にあれほど多くの悪魔教信者がいる可能性を考えていなかったというわけではないが、それを見抜けなかった僕達の失態としか言いようがないわけだから、この状況自体、自分たちが作り出した絶望というわけだ。
しかし、運がよいことに、この火山の標高はそこまで高いというわけでもない。これを幸いと取るかは自分の心次第ではあるが、反対に言えば、見方以外の者たちも登りやすいということだ。なによりも、百年前に起きた大噴火が今起こらないという保証もどこにも無い。
「ほんと、絶望的な状況だよな……」
僕はそれだけを呟くと、登山を開始した。もちろん装備を外すわけにもいかないので、重さ100リブラ(約30kg、1リブラ=約3g)もあるわけだ。山頂までの道のりは長いだろう。だが、だからといってゆっくりしている時間もない。二人と何人かの仲間が時間稼ぎをしている間にも、なんとか頂上を目指さなくてはならない。
もし、仮に悪魔教信者の誰かに気が付かれてしまったら、山頂とまではいかないが、馬で追ってくるのは当然だろう。そうなると、徒歩で登る僕はかなり不利になるだろう。ならばと、1ペースで(約30cm)でも先に進まなければならないというのが僕の本心だ。
「……っだが、流石に甲冑で登山は狂ってるだろ……僕は普通の人間だぞ…………」
乱れる呼吸も絶え絶えに、一人で今の状況を呪うがごとくつぶやいた。とうぜんだが、誰からか、返事が返ってくるなどということはありえない。むしろ、ありえてはいけないのだが、そんな風に不満を吐かなければ、この苦行を断念してしまいそうなほど、僕の精神が崩壊してしまいそうだ。――というか、水分もなしに登山とは自殺行為じゃないのか?
そんな疑問が浮かんでは消える中、僕はひたすらに足を進め続けた。それでも、流れる汗は自身の水分の不足を表している。今はなんとか、足が進むが、これからさきも同じことが起こるとは限らないように、僕の足もいつ止まるかなど自分でもわからなかった。
それから、根性論のような兵士訓練所での指導を思い出して、それよりも遥かに厳しい登山は佳境を迎えていたが、そんな中で自分の体に関する問題だけではなく、状況的な問題にさし当たってしまう。この、精神的にも肉体的にも追いつめられたこの状況、もはや倒れ伏してしまっても誰にも責められないこの状況、それを超えるであろう最悪の事態。それはこれを含めても相当可能性の低い出来事であったが、それでも予想は出来ていたこと。――最悪の事態である噴火。それはなんとか回避できたようだが、それでも神は無情であることの証明。それが道の崩壊。
しかし、それは仕方がないと言うこともわかっていた。何年かに一度行う儀式のために、道を整備し続けるなんてそんなことをする予算はない。だから、国がそれを怠ってしまったことにはなんの怒りもないが、神に誓って自然に対する絶望が無いかと言われれば、NOと答えるほかない。
先程までの上りに加え、急な落差を昇り降りしなければならないわけだ。常人ならここで諦めてしまうだろうが、国を守護する側の人間である僕は、簡単に諦めてしまうわけにもいかない。誰が許してくれようが、自分自身が許せないからだ。
そう意思を新たに、地割れに飲まれないようになんとか乗り越えて、道の続きへと合流した。山頂まではあと少し、頂に立つ者としては山に屈してなどいられない。後に待っている儀式に使う体力にさえ考慮せずに全身全霊をかけて、坂道を登り続けた。――朦朧とする意識の中で何か暑さを感じ、我に返る。その暑さの正体は言うまでもなく、火口だ。だが、精神は返ってきても、肉体は疲労困憊で足の感覚はもうとうの昔になかった。それでも足を進められたのは、ひとえに、国で待つ彼女と、彼女が思う国民のためだろう。いや、厳密には違うのだろうが、言い訳として取ってもらってもかまわない。言い訳だとしても、僕はそれを糧としてここまで来たのだから、大したものだと褒めてもらいたい。例え周りに誰もいなくても、それくらい望んだって罰は当たらないだろう。なにより、そんな賞賛の言葉がもらえるだけでも、ここまで頑張った甲斐があるってものだ。
「…………なん…………て……な」
僕も気が付かないうちに、口中の水分が枯渇していたようで、声は掠れ、火口から伝わる暑さが喉を焼いた。焼いたと言っても比喩的なことで、喉が焼けただれるなんて恐ろしいことにはならない。
うん、こんな事を考える力が残っているうちはまだ大丈夫だろう。そう思い、僕はついていた膝を起こし、目に見えている山頂を目指した。初代騎士王、火の騎士の墓はそこに奉られている。なんでも墓石は特注性で灼熱を誇る溶岩ですら溶かすことは出来ないとかなんとか……、まあ真実はこの目で見るまでは噂でしかないのだが、それでも、僕はその話を期待している。というよりも、それが真実でなければ、僕がここまで来た意味など皆無だろう。
そうして、ゆっくりと足を前へ、前へと進め、ようやく墓が目視できるところまでやってきた。
「本当に……あった……」
僕は大きくため息をつき、そのまま地面へと倒れ込んだ。なんだか、先程よりも意識が朦朧としているようで、あまりにも眠たい。まぶたがすぐにでも落ちてしまいそうで、必死に耐えしのぐも、僕の体は意思を無視した。消えていく意識の中で、聞き覚えのあるような声が僕の脳内を駆け巡り、そのまま深い眠りへと誘われた。
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