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2.2 悪魔との出会い
4.覚醒
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僕は深い眠りの中で、何かを想像することすら出来ない闇の中で、ある一筋の光、いや火というべき灯を見つけた。その灯は今にも消えてしまいそうだが、僕のことをしっかりと照らし、ゆくべき道を指し示してくれているようだった。もちろん、全てが闇に覆われた世界に道などあるわけがないが、それでも、僕にとって、その光は道のように見えた。
闇の中を泳いでも泳いでも見えない出口を手探りでさがし、僕はその火の方へなんとか行けないかと模索しては、遠ざかる。遠ざかっては、近づくというなんの意味も無いかのような、そんなことを繰り返していた。
それは、僕が、その火にいつか近づけるように、努力したように、現実でもそうだった。僕はなんとか、火の意思を受け継ぐため、剣術の指南を受け、地獄のような日々を過ごしてきた。そして、先程も地獄を乗り越えたはずだった。
――そう言えば、地獄とはなんだっけ? 僕はなんのために頑張っていたんだっけ?
ふと、そんな考えが浮かんだ。だけど、それをいくら思い出そうとしても、頭が割れるように痛くなるばかりで、何も思い出せない。それよりも、僕の体はいうことを聞かなかった。頭は記憶を取り戻そうとしているのに、体はひたすらに火の元へと向かおうと、必死で闇を泳いでいた。
だけど、もがけばもがくほど思考はおぼつかないままで、自分がどうしてここにいるのかということすら思い出せない。それが悪いことかということですら僕はわからない。ただ単にどうしても思い出したいという、僕の精神を信じて思い出す努力を重ねた。だが、それでも思い出せないことは思い出せない。こればっかりは根性でどうにかなるわけでは無いということをなんとなく知っていた。――思い出すということに対する努力と、思い出そうとする体のメカニズムは若干のズレを生じて、僕の邪魔をしているということ、精神よりも僕のことを知っているのは僕の体で、僕が今思い出そうとしていることを思い出すことが体に負担を与えるということを知っているのだ。
――でも、精神が壊れてしまっても、それは僕が持っていなければならない記憶だと思う。
どうして?
どこからともなく、そんな問が聞こえたような気がした。僕はすぐさまその問いに答えを返す。
――分からない。でも、自分の負担は自分で持っていなくちゃいけないんだ! 誰がなんと言おうと、それは僕が持つべき大切な記憶のひとつなのだから……それによって、なにも守れなくなってしまったとしても、僕はきっと後悔しない。
でも、私はそれを後悔した。私が壊れてしまったから、彼を守れなかった。お前は大切な人を失ってでも自分のことを優先するというのか?
どこからか聞こえてくるその声は、なぜだか懐かしい声のように思えた。
――うん。僕は自分勝手なんだ。例え、全世界の国民が死んでしまおうとも、僕は彼女ととの約束を守りたい。きっとこれはわがままなんだろう。所詮僕は王の器からは程遠いただの人間なんだから……
いや、王の器とはそういうものだ。わかった、だが後悔するなよ。私は忠告した。
――後悔なんてしないよ。だって選んだのは僕なんだから。
それから、謎の声が聞こえることは二度となかった。ただ、そのかわりか、闇雲に泳いでいた体は、一気に火の元へと移動した。そうして、火を掴み僕は、永遠につづくかと思われたその闇をすべて取り払った。
僕はふと意識を凝らした。周りからはなんだか、数十名の声とともに、聞き覚えのある声が悪魔を呼び覚ます呪文のようなそんな、呪われた言葉として耳に入ってきた。
「おい、こいつ目を覚ましたぞ!」
僕の耳のそばで、慌てた声が聞こえた。どうやら、僕は少しだけ眠ってしまったようだ。
「構わん! そいつが目覚める前に、復活の儀式は終わる! もう少しだけ、そいつを縛ってるんじゃ」
僕の横に立つ、ローブ姿の男にそう伝えた、その声は、紛れもなく僕の師匠のものだった。僕は、不意をつかれてしまい、若干行動が遅れてしまった。
「師匠……どうしてあなたが……」
返答はない。
「師匠……!」
僕は、僕を縛っていた男を突き飛ばし、自身にかけられていた縄を破った。そんな時にようやく気がついた。僕の味方は、たった一人しかいなかったということだ。僕の腹心は縄で縛られ身動きを取れなくさせられている。だが、それ以外の部下は全員揃っていた。それも健在だった。
「こいつ、やはり化物ですよ!」
そう叫んだのは、僕が信頼していた訓練所からの仲間の一人だった。僕は、もはや守るべきものなど、ほとんどなかったということを知っていたが、それでも、信じたいという気持ちはあった。だから、この時命までは取らなかったのだろう。僕を縛っていた男から奪った剣で、叫んだ男の両手を奪った。
「ば、化けもんだ!!」
僕は無言で次の標的を切る。だが、命までは取らない。二度と動けないようにはなるが、それでも、お礼が言ってほしいところだ。それにしても、ここまで無情になれるとは、自分のことがいささか怖くなる。僕にだって情くらいはあるのだから……
「後は、あんただけですよ……師匠……」
僕がすぐ後ろまで迫っているにも関わらず、その男はこちらを振り返りもせずに儀式を続けた。
「うるさいな、他のやつはすぐさまきりつけておきながら、儂は切らんとでも言うのか? 同情でもしているつもりなのか?」
「いえ、あなたが不意打ちで倒せる相手ではないということぐらいわかっているということだけです。もう一つ強いて理由を付けるとすれば、儀式がもう終わっているからですかね?」
その言葉に驚いたのか、一向にこっちを向かなかったその男が振り返る。
「……なるほど、冷静じゃな……じゃが、悪魔様をまとった儂になら勝てると思っておるのか? それはおごりというやつではないのか?」
「……悪魔本体に勝つよりかは遥かに容易でしょう」
「ふふふ、なるほどのう……じゃが、お前はやはりおごっているようだな? 儂はお前の剣術をすべて知っておるのだぞ?」
「御託はいいです、どうして悪魔教に入ったのかということを教えてもらいたい」
闇の中を泳いでも泳いでも見えない出口を手探りでさがし、僕はその火の方へなんとか行けないかと模索しては、遠ざかる。遠ざかっては、近づくというなんの意味も無いかのような、そんなことを繰り返していた。
それは、僕が、その火にいつか近づけるように、努力したように、現実でもそうだった。僕はなんとか、火の意思を受け継ぐため、剣術の指南を受け、地獄のような日々を過ごしてきた。そして、先程も地獄を乗り越えたはずだった。
――そう言えば、地獄とはなんだっけ? 僕はなんのために頑張っていたんだっけ?
ふと、そんな考えが浮かんだ。だけど、それをいくら思い出そうとしても、頭が割れるように痛くなるばかりで、何も思い出せない。それよりも、僕の体はいうことを聞かなかった。頭は記憶を取り戻そうとしているのに、体はひたすらに火の元へと向かおうと、必死で闇を泳いでいた。
だけど、もがけばもがくほど思考はおぼつかないままで、自分がどうしてここにいるのかということすら思い出せない。それが悪いことかということですら僕はわからない。ただ単にどうしても思い出したいという、僕の精神を信じて思い出す努力を重ねた。だが、それでも思い出せないことは思い出せない。こればっかりは根性でどうにかなるわけでは無いということをなんとなく知っていた。――思い出すということに対する努力と、思い出そうとする体のメカニズムは若干のズレを生じて、僕の邪魔をしているということ、精神よりも僕のことを知っているのは僕の体で、僕が今思い出そうとしていることを思い出すことが体に負担を与えるということを知っているのだ。
――でも、精神が壊れてしまっても、それは僕が持っていなければならない記憶だと思う。
どうして?
どこからともなく、そんな問が聞こえたような気がした。僕はすぐさまその問いに答えを返す。
――分からない。でも、自分の負担は自分で持っていなくちゃいけないんだ! 誰がなんと言おうと、それは僕が持つべき大切な記憶のひとつなのだから……それによって、なにも守れなくなってしまったとしても、僕はきっと後悔しない。
でも、私はそれを後悔した。私が壊れてしまったから、彼を守れなかった。お前は大切な人を失ってでも自分のことを優先するというのか?
どこからか聞こえてくるその声は、なぜだか懐かしい声のように思えた。
――うん。僕は自分勝手なんだ。例え、全世界の国民が死んでしまおうとも、僕は彼女ととの約束を守りたい。きっとこれはわがままなんだろう。所詮僕は王の器からは程遠いただの人間なんだから……
いや、王の器とはそういうものだ。わかった、だが後悔するなよ。私は忠告した。
――後悔なんてしないよ。だって選んだのは僕なんだから。
それから、謎の声が聞こえることは二度となかった。ただ、そのかわりか、闇雲に泳いでいた体は、一気に火の元へと移動した。そうして、火を掴み僕は、永遠につづくかと思われたその闇をすべて取り払った。
僕はふと意識を凝らした。周りからはなんだか、数十名の声とともに、聞き覚えのある声が悪魔を呼び覚ます呪文のようなそんな、呪われた言葉として耳に入ってきた。
「おい、こいつ目を覚ましたぞ!」
僕の耳のそばで、慌てた声が聞こえた。どうやら、僕は少しだけ眠ってしまったようだ。
「構わん! そいつが目覚める前に、復活の儀式は終わる! もう少しだけ、そいつを縛ってるんじゃ」
僕の横に立つ、ローブ姿の男にそう伝えた、その声は、紛れもなく僕の師匠のものだった。僕は、不意をつかれてしまい、若干行動が遅れてしまった。
「師匠……どうしてあなたが……」
返答はない。
「師匠……!」
僕は、僕を縛っていた男を突き飛ばし、自身にかけられていた縄を破った。そんな時にようやく気がついた。僕の味方は、たった一人しかいなかったということだ。僕の腹心は縄で縛られ身動きを取れなくさせられている。だが、それ以外の部下は全員揃っていた。それも健在だった。
「こいつ、やはり化物ですよ!」
そう叫んだのは、僕が信頼していた訓練所からの仲間の一人だった。僕は、もはや守るべきものなど、ほとんどなかったということを知っていたが、それでも、信じたいという気持ちはあった。だから、この時命までは取らなかったのだろう。僕を縛っていた男から奪った剣で、叫んだ男の両手を奪った。
「ば、化けもんだ!!」
僕は無言で次の標的を切る。だが、命までは取らない。二度と動けないようにはなるが、それでも、お礼が言ってほしいところだ。それにしても、ここまで無情になれるとは、自分のことがいささか怖くなる。僕にだって情くらいはあるのだから……
「後は、あんただけですよ……師匠……」
僕がすぐ後ろまで迫っているにも関わらず、その男はこちらを振り返りもせずに儀式を続けた。
「うるさいな、他のやつはすぐさまきりつけておきながら、儂は切らんとでも言うのか? 同情でもしているつもりなのか?」
「いえ、あなたが不意打ちで倒せる相手ではないということぐらいわかっているということだけです。もう一つ強いて理由を付けるとすれば、儀式がもう終わっているからですかね?」
その言葉に驚いたのか、一向にこっちを向かなかったその男が振り返る。
「……なるほど、冷静じゃな……じゃが、悪魔様をまとった儂になら勝てると思っておるのか? それはおごりというやつではないのか?」
「……悪魔本体に勝つよりかは遥かに容易でしょう」
「ふふふ、なるほどのう……じゃが、お前はやはりおごっているようだな? 儂はお前の剣術をすべて知っておるのだぞ?」
「御託はいいです、どうして悪魔教に入ったのかということを教えてもらいたい」
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