よみがえりの一族

真白 悟

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2.3 密室にて

2.後悔

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 静寂に包まれる小さな密室の中は、僕と悪魔が黙り込んだ事によって更に静けさを増した。だがそんなことは結局どうでもよくて、自分たちの一族の出生について考えることのほうが重要だった。
「おい、悪魔……僕の考えは正しいか?」
 部屋の出口を探しながら、僕は先程考えたよみがえりの一族のことについて気になってしまった。
「そんなことより、この部屋から出なくて良いのか?」
「でなくちゃいけないけど、それよりも重要なことだ」
「俺にはそんな重要なことだとは思えないが……概ね間違ってないだろうな……」
 僕が考えうる中でも最悪の話だろう。よみがえりの一族とは、最初は忌み嫌われた一族であり、グラキエスによってそれは解消されたということになっていたし、一族の人もそれ以外の人もそう信じていた。だからこそ、グラキエスと火の騎士の存在に則って、王国では何百年の間、王と騎士を選別してきた。しかもそのほとんどはよみがえりの一族から選ばれていたと聞く。
 僕は動揺を隠せず、同じ場所ばかり探索してしまっている。そんなことを冷静に考えれるほど僕は焦っていた。
 なぜなら、全てはグラキエスの仕業だとするのであれば辻褄が合うからだ。――つまりはグラキエスは自作自演をしたということだ。

「だけど、なんで? どうしてそんなことをする必要が?」

 僕は質量としては全く存在を認められていない、悪魔がまるでそこにいるのかのように虚空に向かって疑問をぶつける。
「そんなことを俺が知っていると思うか? 悪魔はお前たち人間が思うほど便利な存在じゃない。だからこそ
、お前がそんなことを気にしている理由が分からない。お前はすでに死んだ人間なのだから、自分の一族がどうだろうがどうでもいいはずだろう? それとも何か、実は死ななかったほうが良かったなんて、そんな後悔でもしているというのか?」
「してるに決まってるだろう!!」
 柄にもなく大きな声で叫んでしまった。自分でさえも、自分の優柔不断さには苛立ちを覚える。ただでさえ、今時分がするべきことが全くわかっていない。堺が消えてしまった今だからこそ、僕は彼を取り戻すために動かなければならないはずだ。それなのに、僕は未だそれ以外のことを考えようとしている。しかもそれはすでに終わったことだ。悪魔がイラつくのだって、仕方がないことだということもわかっている、わかっているが、それでも僕はもともとこういう正確だから今更変えようもないし、変わるつもりもない。
「はあ、もしお前が俺の憑依主じゃなければすぐさま殺してやるのに……」
「ちょっと待てよ、お前にそんなことを言われる筋合いはないと思うが?」
「俺は後悔など一度もしたことがない。お前に憑依してしまったことでさえ後悔はないと思っていたのだが、今回は初めての後悔になるかもしれんな……」
 言わせておけば……だがそれこそ悪魔と人間の違いや無いのか?
「俺はそうは思わない。多分おまえほど状況に流される人間もいないだろう……大抵の人間は何かしらの目的とやらを持っているからな。まあだからこそ、付け込みやすいとも言えるわけだがな」
「お前、やっぱり悪魔だな!」
「だから何度も言っているだろう。とにかく、お前は状況に流されて騎士になり、状況に流され俺を憑依させ、状況に流され、どうでもいいことで自殺し、状況に流されて今に至る。だったらお前が選択するのはいつだ? まさか今回も状況に流されるというわけではあるまい?」
 悪魔はどうでも良いことをどうでもよく話すように、僕にそんなどうでも良い質問を投げかけた。もしかすると、それが悪魔なりの優しさなのかもしれないが、それでも僕は状況に流されたと感じたことは無い。いつでも自分で選択してきたつもりだ。――つもりだった。
「まあ、後悔することが多い時点できちんと考えずにここまで来たというお前の考えが当たってるのかもしれないな……だけど、僕だってもう大人だ。これからの選択ぐらい自分で出来るし、流されもしない。――だから、さっさとこの部屋を出て家に帰ろう」
 最後に一回ぐらいは悪魔に流されてやるとしよう。なんて考えて、僕は止まっていた探索を再開した。
 だが、それからの何も見つかることはなかった。まあ、僕自身が変わろうと思ったところで、突然として周りの状況までもが変わることなんてありえないし普通だろう。

「だけど、本当に何もない部屋だな?」
 丁度探索を再開してから一時間たった頃だろうか、悪魔が突然そうぼやいた。
 まあ、悪魔がそう思うのもわからなくはない。だって、本当に飲食物以外はなにもおかれていないのだから……
「食べ物とか飲み物があるだけマシさ……」
 一時間働きっぱなしで喉が乾いていたから本当に助かった。
 確かに味気ない水ではあるが無いよりかは遥かにましだと自分に言い聞かせながら、水を勢い良く喉へと流し込んだ。
「だが、流石に暇すぎるぞ……いくら宿主のためとは言えこれは厳しいものがある……」
「だったら、さっさとこの部屋からでる方法を話してくれよ。どうせサルガタナスとやらに出会わなかったとしても、この中にずっといたら死んでしまうわけだし、それなら外で死んだほうがマシだ……お前もそうは思わないのか?」
 僕は明らかに破錠した理論だとは思ったが、それでも出来る限り最もらしくそう伝えた。悪魔には心が筒抜けだとはわかって入るものの、どうしても他の人間と話すときのように話してしまう癖はどうにかしたいが、それも含めて、悪魔は了承してくれるだろう。
 そんな風に甘い考えを持っていた時期が僕にもありました。

「ここからお前を出さないと決めたのは俺じゃない、お前自身だ。俺にとっては一週間前のお前だろうが、一週間後のお前だろうが、どっちも宿主であることには変わりない。だからこそ、俺はどっちの味方をするつもりもない」

 なんと硬い友情で結ばれているのだろう……なんて全く思えない。結局のところ悪魔は俺自身で選択させたいということだろう。もちろん出るか出ないかでは無い。この一週間のことを思い出すか、思い出さないかなんて言うどう考えても自分で選択することが出来ないそんなことをだ。
 もちろん思い出すことに一部の恐怖もないかと言われれば、そんなことは無い。むしろ、一週間後の僕が忘れたいとおもい忘れたことなのだから恐怖まみれだ。だからこそ、僕は僕自身の選択を後悔した。どうして僕は忘れてしまったのだろうかなんて、思い出すことすら出来ないことが煩わしい。
「おい、悪魔……」
 僕はまたも虚空に向かって話しかける。
「なんだ?」
「僕の記憶は戻せないのか?」
 突然の僕の言葉に悪魔は黙っていた。姿が見えるわけではないが、今や同じ体を共有している僕だからこそなんとなく、そこに驚きや戸惑いなどが無いということはなんとなくわかっていた。むしろ確信に近いものがあることも……。

「もちろん戻せる」
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