よみがえりの一族

真白 悟

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2.3 密室にて

8.再会

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 衝撃的だった。もしかしたら、ベリアルが僕をからかうために吐いた冗談かもしれない。普通ならそう考えるのが当然だと思う。だって顔も雰囲気もまるでベリアルこと火山なのに、話し方だけが突然として堺の珍妙な方言へと変化しただけなのだから……
 だが、僕はどうしてだかそれが堺の言葉そのものであると思えた。
「ちょっと待ってくれ、どういうことなんだ?」
 内申僕はとても焦っていた。
「どういうこともないやろ……もともと、お前たちと同じでベリアルと俺は別の意思のもと同じ道を歩んどる。正義と悪は表裏一体、最悪と最善はほぼ一緒なんや」
「何の話だ……?」
 僕は堺の言葉に思考が追いつかなかった。しかし、堺が抜いた剣をある一方子に向けたことから、その言葉が僕だけに向けられた言葉ではないとようやく理解することが出来た。

「まさか、アモンさんはまだしも、ベリアルさんに裏切られるなんて考えてませんでしたわ……」
 堺が剣を向けた方角にはもちろん何もいない。いや、何も見えないというのが一番正しいのだろう。ただその方角から聞こえたその声は嫌に低く、女らしいとは言えないがそれでも女性的な声であり、なんとも卑屈な声のようにも聞こえた。

 それに対して、堺は僕の方を一瞬だけちらりと見たかと思うと、すぐにその声に反論した。
「嘘つけ、お前みたいにやつは他の存在を全く信用してないやろ! 俺とイグニスの悪魔に監視をつけたのは、裏切らんか監視するためやろう?」
「まさか、私がそんなことのために使い魔を遣わす訳無いでしょ。まあ流石に、あの密室に入られた時はちょっと驚きはしましたけど、それでもあなた達を信頼してたのは確かですよ」
 その声はまさに不幸をもたらすが如く不気味な声だ。信頼とは最も程遠く、むしろ何事に対しても疑いを向けていることを暗示しているかのように不気味だ。
「まあ後になってからならなんとでも言えるやろな……でももう遅いで、お前の本当の目的は邪魔な悪魔を殺すことやろ?」
「また物騒なことを考えますね。私がなんでそんなことしないといけませんの? 私はそんなことせんでもアスタロト様の元にいる限り将来は安定してます。そんな中で上位悪魔であるベリアルさんを殺すなんて大それた事する必要ありませんし、何よりそれじゃあ今回の作戦の意味はどうなります?」
「何言っとんねん、今回の作戦だってお前のせいで失敗したんやろうが!!」
「いややわ、人のせいにせんとってください。もともとそちらの人間さんが記憶を捨てたのが問題でしょう? 私は何も悪くないです」

 二人の会話を聞いていても一向にその内容が見えてこない。作戦とは一体何の話なんだ?
 置いていけぼり気味の僕を更に置いてけぼりにするように、二人は口論を続けた。
「もともとお前がほんまのことを話したから、今回みたいな回りくどい作戦に変えたんやろ!?」
「だから、それは必要なことやから教えただけですよ。そもそもきちんと話してなかったあなた達が悪いんでしょ!?」
 言い争うはヒートアップし、今まさに男通しでありながらも痴話喧嘩のような歪なものに発展してしまいつつある。町外れということもあって、近所迷惑にはならないだろうが、それでも魔物たちを呼び寄せてしまう可能性はあるが、それよりも、このまま話がこじれてしまうことの方が問題だ。
 僕はとっさに二人の間に飛び込んだ。とは言っても、一人は声が聞こえて来る方角が分かるだけで、その性格な位置まではわからなかったがきっとちょうど間に入れたはずだ。

「ちょっと、二人とも少し冷静になってくれ!」

 突然前に入った者だから、堺の方は驚いて後ろに仰け反った。もちろんもう一人の反応は文字通り目に見えない。
「突然飛び込んできて、あなたは一体何がしたいんですか?」
 声が聞こえて来た方角は堺の直線上の反対ではなく、そこからちょうど90度ぐらいずれていた。
 ちょうど真ん中に割り言ったつもりで、全然違う場所に立っていたのはなんとなくはずかしいが、僕の心の中まではバレていないだろう。
「何って、僕は二人を止めるためにここに……」
「止めるったって、普通止めるのであれば真ん中に割って入るはずでしょう? どうしてそんな微妙な立ち位置なんです?」
「……うっ、それは……」
 非常に痛いところをつかれてしまった。思わず一歩だけ後ずさってしまったよ。

「やめてやれ、まあ敵であるお前にこれ以上情報をやるつもりもないけど、これだけは教えてやる。そいつはお前が気配を消すのをやめた後でもお前の気配に全く気がついてない」
 堺は微笑を浮かべるとともに、僕の恥ずかしい秘密を敵にばらしてしまった。それを聞いた後も彼女? はそれを信じられないといったようで、ついには姿を表してしまった。
「いやいや、そんなはずは無いでしょう? だって、最初にあった時は私の隠密魔法を一瞬にして見破ってしまったのですよ!? そして、今日はその日に比べてあれに手こずってしまったこともあり、魔力はかなり減っていました……まさかそれを見破れないはずありません!!」
 声を荒げてそう語る姿は、まるで新月のよるを照らす三日月のように伸びた金色の髪を携えた美女だった。
「やから、お前の所為やって言ってるやん! お前が記憶を消さんかったら、今回の作戦だってうまくいくはずやったんやぞ!!」
「そうだ。お前さえいなければ俺の目的も達成できたし、宿主にこんな危険が及ぶこともなかったはずだ。同落とし前を付けるつもりだ?」
 堺に続き、僕の中の悪魔まで彼女を責め立てる。一体どうして彼女がそこまで責められているのか僕にはわからないが、ともかく、今日までの記憶が無いことには彼女が関係しているようだ。――だが、どうして僕の記憶を奪う必要があったのだろうか……
 そういうことを考えていたからだろうか、僕は彼女が震えていることに気がつくのが少し遅れてしまった。僕が気がついた時には、彼女はその美しい緋色の目でこちらをにらみ、その小型の口を極限にまで広げていた。

「調子に乗らないでください!! 私が消したのは1週間の記憶だけです、私が人間さんにはじめてあったのは一ヶ月も前のことですよ!!」
 僕は耳を塞ぐのも間に合わず、耳を直に彼女の巨大な声が入り込んだ。それによって耳はしびれ、耳鳴りが長い間僕の近くで鳴っている。そのせいで、思考回路はぐちゃぐちゃだった。
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