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2.3 密室にて
7.見えざる者
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悪魔がようやく本当のことを話してくれると決意を改めてくれたわけではあるが、僕は底知れぬ不安を覚えていた。理由はもちろん未来の僕が自ら密室に閉じこもったことと関わっているからだ。
なんというか、ただ単に僕が信用できないというだけではあるが、それこそ今の僕に唯一といっていいほどの情報だ。
「わかったじゃあ歩きながらになるけど、話してくれるか?」
いくらあやしいと心配したところで、話を聞いてから考えるべきだろう……
「まあなんだ……話というほどのものではない。というより話せることはほとんど話したから、これはおまけみたいなものだ」
おまけ……確かに悪魔はそう言ったが、ただのおまけの話しをここまで出し渋ったことを考えればそこまでしょうもない話しというわけではないだろう。
「だったら早く話してくれ」
「そうだな、サルガタナスの能力についてはさっき話した通りだ。人間を好きな場所に飛ばしたり、姿を隠したり出来るだけ、それ以外に大した能力はないだろうな。まあ隠していない限りだが……」
悪魔はなんとも歯切れの悪い喋り方で、何かを隠しているということは容易に読み取れたが、悪魔が人間に対して申し訳ないという感情を持ち合わせている筈もない。もしかすれば、これ自体が僕に対して何かを伝えようとしているのかもしれないが、僕にはその思惑を読むすべはない。
「で、なら何を知っているんだ?」
「憑依している人間についてといったところか……まあ、それは話すつもりはないけどな。だから、俺が知っている情報でお前に伝えることが出来る情報となると、そいつの居場所ぐらいか」
「居場所だけか……って居場所!?」
居場所を知っているのであれば先制出来るじゃないか……どうしてもっと早く教えないんだ!
「だが、俺が居場所を教えようが教えまいが状況は変わらんと思うがな……なぜなら、そいつはずっとそばにいるからな」
その言葉に僕はあたりを見渡すが、そこにいたのは僕とベリアルぐらいなものだった。
……そばにいる? 誰もいないじゃないか……
そんな風に考えてしまった僕を誰が責められるだろうか、いや誰も責められまい。というか、こんな切迫した状況でそれ以外を考えられる人間がいるのであれば、それはきっと相当優秀な人材だろう。もしそんな人がいたのであれば、今すぐ僕と変わってくれ。
とはいえ、今更自分が能無しであることを嘆いても状況が好転するというわけでもなし、変わってくれる人材が僕の念を感知して来てくれるわけでもない。
僕がおかれている状況を考えて、選択できるのは僕以外の誰でもないわけだ。
「つまり、僕の近くにサルガタナスかもしくはその憑依者がいるって言うことは……」
その言葉を恐る恐る口にしながら、僕はようやくある一つの事象を思い出した。サルガタナスの能力についてだ。むしろ数分前のことを思い出すことが出来なかったということを恥じるべきか、はたまた、なんとか思い出すことが出来た自分を賞賛してやるべきかは今はどうでもいい。
「そうだ、だが別に隠していたというわけではない。ずっとそばにいたサルガタナスに、そこにいるということを知っていると悟らせたくなかったと言うだけだ」
「それで、そのサルガタナスとやらはお前には見えているということか?」
僕とおそらくベリアルが気が付かなかったその悪魔の存在に気がついたというのであれば、それは気配がわかったというわけではないということを表しているだろう。僕はまだしも、ベリアルが気がつかないはずがない。
「当たり前だろうが……悪魔が悪魔の存在に気が付かない訳がない! サルガタナスとやらもなんとなくは気がついていただろうな。だが確信はない、俺達には実体はあるからな」
ベリアルが突然強い口調でそういい切った。
つまり、この中でその高度な感知能力を持ち合わせていないのは僕だけということになる。そんな人間の域を出ない僕をこの中に交えるなんて、一体神はなにを考えておられるのであろう……
「気にするな、人が人の気配に気がつけるように、悪魔も悪魔の気配に気がつけるというだけだ」
なんて慰めているつもりな悪魔だが……人間にそんな高等な感覚はない! 人間の気配など常人に探れてたまるか!
そう思ったが、なんとなく悔しいので何も言わないでおこう。
しかし、相手はまだ確信を持っていないと言っても、こちらがこんな話しをしていたのではバレたのではなかろうか?
「それに関しては心配ない。さっきまでとは状況が違うからな……」
ベリアルは自身の所有する大剣をどこからともなく引きずり出しながらそうつぶやいた。まるで、空中に鞘でもあるが如くどこからともなく。
「状況?」
僕はいまいちその状況とやらが分からないが、それにつられて、自慢の剣を鞘から引き抜いた。もちろんベリアルを警戒していたということもあるが、一番警戒していたのは見えないことを感づかれることだ。あくまで、見えているかのように振る舞うために剣を抜いた。
「なんだぁ? アモン、そいつに作戦を話してなかったのか?」
作戦てなんのことだろうか……
「こいつに作戦を伝えるってことは相手の正体を伝えることでもあるだろう? そんなことして、この馬鹿に精神的苦痛を与えて、自分のフリになるようなことになるのは避けたかった。と言うより、一度は伝えたがそれが最悪な状況を産んでしまったという方がただしいかもな」
伝えた? こいつらは何を言っているんだ? 正体……?
「なるほど、確かにサルガタナスとやらの能力は死んでも消えんと言っとったし、それが一番言いのかもな……ていうか、この喋り方疲れたわ、そろそろ普通に喋ってもええか? なあ、イグニス?」
なんというか、ただ単に僕が信用できないというだけではあるが、それこそ今の僕に唯一といっていいほどの情報だ。
「わかったじゃあ歩きながらになるけど、話してくれるか?」
いくらあやしいと心配したところで、話を聞いてから考えるべきだろう……
「まあなんだ……話というほどのものではない。というより話せることはほとんど話したから、これはおまけみたいなものだ」
おまけ……確かに悪魔はそう言ったが、ただのおまけの話しをここまで出し渋ったことを考えればそこまでしょうもない話しというわけではないだろう。
「だったら早く話してくれ」
「そうだな、サルガタナスの能力についてはさっき話した通りだ。人間を好きな場所に飛ばしたり、姿を隠したり出来るだけ、それ以外に大した能力はないだろうな。まあ隠していない限りだが……」
悪魔はなんとも歯切れの悪い喋り方で、何かを隠しているということは容易に読み取れたが、悪魔が人間に対して申し訳ないという感情を持ち合わせている筈もない。もしかすれば、これ自体が僕に対して何かを伝えようとしているのかもしれないが、僕にはその思惑を読むすべはない。
「で、なら何を知っているんだ?」
「憑依している人間についてといったところか……まあ、それは話すつもりはないけどな。だから、俺が知っている情報でお前に伝えることが出来る情報となると、そいつの居場所ぐらいか」
「居場所だけか……って居場所!?」
居場所を知っているのであれば先制出来るじゃないか……どうしてもっと早く教えないんだ!
「だが、俺が居場所を教えようが教えまいが状況は変わらんと思うがな……なぜなら、そいつはずっとそばにいるからな」
その言葉に僕はあたりを見渡すが、そこにいたのは僕とベリアルぐらいなものだった。
……そばにいる? 誰もいないじゃないか……
そんな風に考えてしまった僕を誰が責められるだろうか、いや誰も責められまい。というか、こんな切迫した状況でそれ以外を考えられる人間がいるのであれば、それはきっと相当優秀な人材だろう。もしそんな人がいたのであれば、今すぐ僕と変わってくれ。
とはいえ、今更自分が能無しであることを嘆いても状況が好転するというわけでもなし、変わってくれる人材が僕の念を感知して来てくれるわけでもない。
僕がおかれている状況を考えて、選択できるのは僕以外の誰でもないわけだ。
「つまり、僕の近くにサルガタナスかもしくはその憑依者がいるって言うことは……」
その言葉を恐る恐る口にしながら、僕はようやくある一つの事象を思い出した。サルガタナスの能力についてだ。むしろ数分前のことを思い出すことが出来なかったということを恥じるべきか、はたまた、なんとか思い出すことが出来た自分を賞賛してやるべきかは今はどうでもいい。
「そうだ、だが別に隠していたというわけではない。ずっとそばにいたサルガタナスに、そこにいるということを知っていると悟らせたくなかったと言うだけだ」
「それで、そのサルガタナスとやらはお前には見えているということか?」
僕とおそらくベリアルが気が付かなかったその悪魔の存在に気がついたというのであれば、それは気配がわかったというわけではないということを表しているだろう。僕はまだしも、ベリアルが気がつかないはずがない。
「当たり前だろうが……悪魔が悪魔の存在に気が付かない訳がない! サルガタナスとやらもなんとなくは気がついていただろうな。だが確信はない、俺達には実体はあるからな」
ベリアルが突然強い口調でそういい切った。
つまり、この中でその高度な感知能力を持ち合わせていないのは僕だけということになる。そんな人間の域を出ない僕をこの中に交えるなんて、一体神はなにを考えておられるのであろう……
「気にするな、人が人の気配に気がつけるように、悪魔も悪魔の気配に気がつけるというだけだ」
なんて慰めているつもりな悪魔だが……人間にそんな高等な感覚はない! 人間の気配など常人に探れてたまるか!
そう思ったが、なんとなく悔しいので何も言わないでおこう。
しかし、相手はまだ確信を持っていないと言っても、こちらがこんな話しをしていたのではバレたのではなかろうか?
「それに関しては心配ない。さっきまでとは状況が違うからな……」
ベリアルは自身の所有する大剣をどこからともなく引きずり出しながらそうつぶやいた。まるで、空中に鞘でもあるが如くどこからともなく。
「状況?」
僕はいまいちその状況とやらが分からないが、それにつられて、自慢の剣を鞘から引き抜いた。もちろんベリアルを警戒していたということもあるが、一番警戒していたのは見えないことを感づかれることだ。あくまで、見えているかのように振る舞うために剣を抜いた。
「なんだぁ? アモン、そいつに作戦を話してなかったのか?」
作戦てなんのことだろうか……
「こいつに作戦を伝えるってことは相手の正体を伝えることでもあるだろう? そんなことして、この馬鹿に精神的苦痛を与えて、自分のフリになるようなことになるのは避けたかった。と言うより、一度は伝えたがそれが最悪な状況を産んでしまったという方がただしいかもな」
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