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2.4 正体不明
意味
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「じゃあ、さっきの敵だの味方だのの三文芝居にもなにか意味があったのか?」
僕にはどうしても意味があったとは思うことが出来ずに、悪魔に尋ねた。
「もちろんだ。堺……というよりも堺の中の悪魔にはサルガタナスが敵であると錯覚してもらいたかった。まあこうなってしまってはあまり意味が無いことになってしまったが、それでもちょっとした時間稼ぎにはなっただろう」
そういう悪魔だが、その意味は不明である。どうやら悪魔は僕の質問に答えるふりをして、僕に情報を与えないつもりらしい。多分この世界の情報を持っている人間にとってはかなり重要な意味を持っているのだろうが、僕は過去の情報から推測することすら出来ないわけだ……。
「そうか……まあとにかくお前たちの目的が達成されたのであれば僕はもう必要ないだろう? さっさと元の時代に返してくれないか?」
おそらく今回の悪魔の目的は達成された。だった僕は必要ないはずだ。これでようやく不安から解放されるなんてあまいことを考えていた僕を誰が責められるだろう、いや責められまい。もし責めるやつがいるのならそいつも自分の記憶がなくなったような不安を感じるがいい。それで少しは僕の気持ちも理解できるだろうし、きっと忘れられない体験になることは間違いない。それが無理なら文句など最初から言うな。
きっとそんな浅はかな考えが悪魔に読まれていたのだろう、悪魔はゆっくりと現状を口にした。
「お前を元の時間に帰すことはまだ出来ない。まだ俺の目的は半分しか達成されていないからな……」
さっきから何度も聞いたベルゼブブと言う悪魔のことだろうか? そのことなら魔法がほとんど使えない僕よりも適任者はいっぱいいるはずだ。それともこの時間の僕はいろんな魔法が使えるようになったとでも言うのだろうか……。
堺やサルガタナスの様子を見るに、そういうわけではなさそうだ。
「その目的とやらはきっと僕が役立てるようなことじゃないだろう?」
僕は無気力にそう言ったが、悪魔は力強く言葉を返す。
「そうでもない。確かに無能なお前だが、無能は無能なりに役に立つこともあるんだ。そっちの堺とやらも、サルガタナスと言うやつも大した戦力にはならないだろうが、今回の作戦には必要な人材とも言える」
人のことを無能無能と……これだから悪魔というやつは嫌われるんだろう。
「サルガタナスは僕の記憶を消すために呼んだんじゃないのか? 堺だって僕の目の前に現れることに何か意味があったんだろう?」
「話が長引くのもちょっと気が引けるが、一つだけ言っておいてやる。今回の目的が達成されたらお前は元の時間に戻れる…………もちろん、こちらの時間の記憶はほぼ全て消してだがな」
悪魔は悪魔的に笑った。
だが、悪魔の言うとおり記憶が消されるのだとすれば、僕が未来へ来た理由はルナという少女の記憶を消されたこと以外何も無いということになるが、そんなことになんの意味があるというのだろうか……?
――悪魔は全てに意味があると言った。そして僕はそれを信じることにした。
そのことは本当に正解だったのだろうか? 悪魔が嘘をつかないなんてことのほうがおかしいし、神が死んだ世界などどうやって存続しているのかも分からない。結局説明を受けても分からないことだらけだった。
しかし、悪魔は「それでいい」という。そんな中で最強の悪魔ベルゼブブとやらを暗殺することなど出来るのだろうか? 悪魔の説明が全て正しいとするのであれば、今の時代は悪魔の時代というわけになる。つまり、その中で最高位の悪魔であるベルゼブブとサタンが率いる悪魔軍には、どうやっても勝てないというのが僕の想像であり妄想だ。
「お前の言いたいことはよく分かるで……」
そんな風に僕を慰めるような口ぶりで堺が言うが、今の僕の気持ちが分かるのなんて僕以外に存在し得ないだろう。するはずがない。
「どのみち帰られんのですから我慢してください」
僕の言わんことを本当に理解しているのかもしれないルナが、僕を落ち着かせるために僕の肩を叩いた。
そうして休憩が終わり、いよいよ街に戻る準備を始める。だけど僕は何もすることがなくて、非常に暇だ。先程の話を聞いても理解できなかった僕が、今更どんなことを聞いたところで短時間で詳しい話を聞くことなど出来ないだろうし、のんきに話しをしている状況ではないことはなんとなく察することが出来る。唯一暇そうな悪魔に限っては詳しい話はしてくれないだろう。
「よし、とりあえず転送の魔力がたまりました」
なんだか分からないが準備ができたのだろう。ルナが嬉しそうにしている。
「転送?」
僕に取ってはその言葉すら理解できない言葉だ。だからいちいち質問しなければならなくて煩わしいが、それは質問されるがわだってそうだろう。
そんな僕の予想は簡単に裏切られた。もちろんいい意味でだ。
「サルガタナスの固有魔法です。サルガタナスは転送魔法とステルス魔法と忘却魔法などの便利な魔法が使える唯一の悪魔なんですよ」
ルナは非常にいい人だ。僕はそんな幼馴染の記憶を失うなんて、なんて薄情なんだろう。
「俺が説明してやったことを忘れるとは、やはり低能か?」
僕のことを侮蔑する悪魔とは大違いだ。
僕にはどうしても意味があったとは思うことが出来ずに、悪魔に尋ねた。
「もちろんだ。堺……というよりも堺の中の悪魔にはサルガタナスが敵であると錯覚してもらいたかった。まあこうなってしまってはあまり意味が無いことになってしまったが、それでもちょっとした時間稼ぎにはなっただろう」
そういう悪魔だが、その意味は不明である。どうやら悪魔は僕の質問に答えるふりをして、僕に情報を与えないつもりらしい。多分この世界の情報を持っている人間にとってはかなり重要な意味を持っているのだろうが、僕は過去の情報から推測することすら出来ないわけだ……。
「そうか……まあとにかくお前たちの目的が達成されたのであれば僕はもう必要ないだろう? さっさと元の時代に返してくれないか?」
おそらく今回の悪魔の目的は達成された。だった僕は必要ないはずだ。これでようやく不安から解放されるなんてあまいことを考えていた僕を誰が責められるだろう、いや責められまい。もし責めるやつがいるのならそいつも自分の記憶がなくなったような不安を感じるがいい。それで少しは僕の気持ちも理解できるだろうし、きっと忘れられない体験になることは間違いない。それが無理なら文句など最初から言うな。
きっとそんな浅はかな考えが悪魔に読まれていたのだろう、悪魔はゆっくりと現状を口にした。
「お前を元の時間に帰すことはまだ出来ない。まだ俺の目的は半分しか達成されていないからな……」
さっきから何度も聞いたベルゼブブと言う悪魔のことだろうか? そのことなら魔法がほとんど使えない僕よりも適任者はいっぱいいるはずだ。それともこの時間の僕はいろんな魔法が使えるようになったとでも言うのだろうか……。
堺やサルガタナスの様子を見るに、そういうわけではなさそうだ。
「その目的とやらはきっと僕が役立てるようなことじゃないだろう?」
僕は無気力にそう言ったが、悪魔は力強く言葉を返す。
「そうでもない。確かに無能なお前だが、無能は無能なりに役に立つこともあるんだ。そっちの堺とやらも、サルガタナスと言うやつも大した戦力にはならないだろうが、今回の作戦には必要な人材とも言える」
人のことを無能無能と……これだから悪魔というやつは嫌われるんだろう。
「サルガタナスは僕の記憶を消すために呼んだんじゃないのか? 堺だって僕の目の前に現れることに何か意味があったんだろう?」
「話が長引くのもちょっと気が引けるが、一つだけ言っておいてやる。今回の目的が達成されたらお前は元の時間に戻れる…………もちろん、こちらの時間の記憶はほぼ全て消してだがな」
悪魔は悪魔的に笑った。
だが、悪魔の言うとおり記憶が消されるのだとすれば、僕が未来へ来た理由はルナという少女の記憶を消されたこと以外何も無いということになるが、そんなことになんの意味があるというのだろうか……?
――悪魔は全てに意味があると言った。そして僕はそれを信じることにした。
そのことは本当に正解だったのだろうか? 悪魔が嘘をつかないなんてことのほうがおかしいし、神が死んだ世界などどうやって存続しているのかも分からない。結局説明を受けても分からないことだらけだった。
しかし、悪魔は「それでいい」という。そんな中で最強の悪魔ベルゼブブとやらを暗殺することなど出来るのだろうか? 悪魔の説明が全て正しいとするのであれば、今の時代は悪魔の時代というわけになる。つまり、その中で最高位の悪魔であるベルゼブブとサタンが率いる悪魔軍には、どうやっても勝てないというのが僕の想像であり妄想だ。
「お前の言いたいことはよく分かるで……」
そんな風に僕を慰めるような口ぶりで堺が言うが、今の僕の気持ちが分かるのなんて僕以外に存在し得ないだろう。するはずがない。
「どのみち帰られんのですから我慢してください」
僕の言わんことを本当に理解しているのかもしれないルナが、僕を落ち着かせるために僕の肩を叩いた。
そうして休憩が終わり、いよいよ街に戻る準備を始める。だけど僕は何もすることがなくて、非常に暇だ。先程の話を聞いても理解できなかった僕が、今更どんなことを聞いたところで短時間で詳しい話を聞くことなど出来ないだろうし、のんきに話しをしている状況ではないことはなんとなく察することが出来る。唯一暇そうな悪魔に限っては詳しい話はしてくれないだろう。
「よし、とりあえず転送の魔力がたまりました」
なんだか分からないが準備ができたのだろう。ルナが嬉しそうにしている。
「転送?」
僕に取ってはその言葉すら理解できない言葉だ。だからいちいち質問しなければならなくて煩わしいが、それは質問されるがわだってそうだろう。
そんな僕の予想は簡単に裏切られた。もちろんいい意味でだ。
「サルガタナスの固有魔法です。サルガタナスは転送魔法とステルス魔法と忘却魔法などの便利な魔法が使える唯一の悪魔なんですよ」
ルナは非常にいい人だ。僕はそんな幼馴染の記憶を失うなんて、なんて薄情なんだろう。
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僕のことを侮蔑する悪魔とは大違いだ。
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