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2.4 正体不明
魔法の代償
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「それで、どこに行くんだ?」
未だに目的地すら教えてもらえていないことを思い出し、僕は誰に向けるでなく尋ねる。しかし、誰も彼も僕の問いには答えてくれないようだ。
「そんなん聞いてもしょうがないやろ?」
唯一返事をしてくれた堺ですら、僕に答えをくれそうにもない。
別段、それを不満に感じるわけではないが、なんというか意味もわからずこんな荒廃した場所に呼び出された親友に向けて気遣いが足りないような気がする。
もちろん、それだけみんなが心に余裕を持っていないということなのかもしれないが、おそらく余裕がないという点では僕が1番である自身がある。
だが、忙しそうに転送とやらの準備をする彼らを邪魔するほどお荷物にはなりたくない。
僕は辺りを見渡し、何か手伝えないか考えるが、圧倒的に知識不足だ。もともとのこの世界のことすらあまり知らないのに、さらにその未来のことなどもはや知ったことではない。
とはいえ、自分の未来だ。その未来が誰かに脅かされているというのなら、過去の自分がなんとかしようとするのは当たり前のことだろうし、僕だってそうするはずだ。だが現実では未来を知ることなど到底出来ないし、努力はしてもそれが変わったかどうかなんて確かめようも無いことだ。
過去と未来はつながっているように感じられて、実はつながっていない不変なものであると感じてしまうことすらある。しかし、今の僕にとってそれは誤りと言わざを得ない。
未来が現実に僕の眼前に広がっているわけで、それを否定することなど出来ないし、する意味すら感じない。あるとするのであれば、今の悲惨なこの時代を変えてしまいたいという後悔だけだ。この未来が自分の行動よって生まれたものだとするのであれば、それを変えるのも僕の役目である。
役にたたないだろうが、役に立つ努力ぐらいは出来るだろう。僕に与えられた情報など僅かなものだが、そんな中でも決意を固めるぐらいのことは出来た。
そんな僕の目の前に、よくわからない物体が近づけられる。その物体は3メートル四方とかなり大きく、僕が今まで目にしたどのような白い物よりも遥かに純度の高い白色をしている。そして、ありえないほど真四角の正方形をしている。誤ってその角に触れてしまったならば触れた部位に突き刺さってしまいそうだ。それだけに、僕はその物体に興味が湧いた。
そんな様子の僕を気にしてか、それを運んできた堺がいやみったらしくにやけながら僕に尋ねる。
「これがなにか分かるか?」
答えのわかった質問ほど面白みのないものは無い、というのが僕の持論ではあるが、せっかく気になる情報をくれそうな相手に対してそんなくだらないことは言うつもりがない。僕は今ある情報からもっともらしいことを言う。
「まあ普通に考えれば転送魔法とやらに使う道具なのだろう? だが、そんな一部の人間にしか使えないもののために道具をつくる余裕があるとは思えないから……魔力の元である元素を集める物とか、か?」
「おしい!」
堺は自分の中でなんらかの満足感を得たのか、それ以上なにも教えてくれなかった。そしてまた、堺は転送の準備に取り掛かる。
仕方なく僕の中の悪魔に尋ねようとしたが、なんだか負けたような気がするのでそれはやめた。だが結局、僕には何も手伝うことが出来ないので、作業の見物をすることになった。
堺とルナの様子を見るに、先程の四角いものは装置の一部でしか無いようで、次から次に様々な大きさと色の正方形のものが並べられていく。その様子は奇妙で、この前まで住んでいた世界とはまるで別世界に来てしまったと感じてしまう程に恐ろしくも感じた。
それからも作業は一時間ほど続いた。
「――待たせたな、完成や」
僕はいつの間にか眠ってしまっていたようで、堺の声によって目を覚ました。どうやら準備が整ったようだ。
「ようやくか?」
急いでいた割に準備が長引いていたことに僕は少しだけ不満を覚えて、少しだけ皮肉めいた言葉が口から出てしまう。
「すみません、本当なら先にここにたどり着いたエンジニアが作るはずだったのですが、サタンの手によって……」
僕は堺に対して言ったつもりだったが、ルナが代わりに申し訳なさそうに謝り、そのまま目を伏せて現状がいかに最悪かを僕に教えた。普通の状況下において、ここまで時間のかかるものなら下準備ぐらいされていてもおかしくは無いし、僕が最初に居た場所から考えてもここはかなり遠い。転移魔法などと言う便利な魔法が有るのであれば、こんな長期な移動をする必要性もなかっただろう。もっと言えば、サンクチュアリという場所はこんな今にも潰れそうな廃墟以外にもあったはずだし、仲間が多くいるところにだってあったはずだろう。
しかし、彼らはこのような廃墟で、仲間のバックアップすら受けられないようなところで転移魔法などと言う魔法を使わなければならなかったのだろう。――ここじゃないとだめだからだろう。
「お前の思ったとおりだが、理由はそれだけじゃない。ここに来るはずだった者を含め、魔王と戦える者はほとんどおらん。ほとんどの仲間は死に絶え、それ以外の生き残った少ない人間は悪魔の管理下にあるだけだ」
僕の中の悪魔は、僕が何も聞いていないのにべらべらと話し始めた。
「そもそも、魔法を使えるものなどほとんど居ないこの世界において魔法が広がった理由自体が、ベルゼブブとサタンの影響だ。奴らが人間を救うために魔法を広めた」
その言葉が世界の核心をついた言葉なのか、堺が悪魔を止めようとする。
「いや、こいつに理由も伝えずに戦わえるわけにはいかない。最初からボス戦なんて理由がなければただのクソゲーでしか無いだろう? だからこそ、これが本当のプロローグだと教えてやらなければならない。勘違いするなよ、俺はおしゃべりな悪魔なんだ。今までだんまり決め込んだのだって、もっといっぱい喋るためだ。だから止めるな」
堺が止めた一回以外は誰も止めていないのに、悪魔は邪魔をするなと言わんばかりに話し続ける。ルナはそれを聞いても納得しているといったようにずっと静かに立っている。
「だが、魔法が使えるだけで魔獣が倒せるはずなんてないだろう? それは逆効果だった。人間は魔法を商売道具としてしか扱わず、出来たものといえば魔法と機械の融合品だ。それのおかげで、世界は便利になっただろう。だがそのおかげで、世界の元素は減る一方だ。今ではサンクチュアリという誰かが発動した魔法ですら維持できなる始末だ。そりゃ、人間を助ける為に動いていた悪魔は気がつくだろう――人間こそ人間の敵なのだと」
未だに目的地すら教えてもらえていないことを思い出し、僕は誰に向けるでなく尋ねる。しかし、誰も彼も僕の問いには答えてくれないようだ。
「そんなん聞いてもしょうがないやろ?」
唯一返事をしてくれた堺ですら、僕に答えをくれそうにもない。
別段、それを不満に感じるわけではないが、なんというか意味もわからずこんな荒廃した場所に呼び出された親友に向けて気遣いが足りないような気がする。
もちろん、それだけみんなが心に余裕を持っていないということなのかもしれないが、おそらく余裕がないという点では僕が1番である自身がある。
だが、忙しそうに転送とやらの準備をする彼らを邪魔するほどお荷物にはなりたくない。
僕は辺りを見渡し、何か手伝えないか考えるが、圧倒的に知識不足だ。もともとのこの世界のことすらあまり知らないのに、さらにその未来のことなどもはや知ったことではない。
とはいえ、自分の未来だ。その未来が誰かに脅かされているというのなら、過去の自分がなんとかしようとするのは当たり前のことだろうし、僕だってそうするはずだ。だが現実では未来を知ることなど到底出来ないし、努力はしてもそれが変わったかどうかなんて確かめようも無いことだ。
過去と未来はつながっているように感じられて、実はつながっていない不変なものであると感じてしまうことすらある。しかし、今の僕にとってそれは誤りと言わざを得ない。
未来が現実に僕の眼前に広がっているわけで、それを否定することなど出来ないし、する意味すら感じない。あるとするのであれば、今の悲惨なこの時代を変えてしまいたいという後悔だけだ。この未来が自分の行動よって生まれたものだとするのであれば、それを変えるのも僕の役目である。
役にたたないだろうが、役に立つ努力ぐらいは出来るだろう。僕に与えられた情報など僅かなものだが、そんな中でも決意を固めるぐらいのことは出来た。
そんな僕の目の前に、よくわからない物体が近づけられる。その物体は3メートル四方とかなり大きく、僕が今まで目にしたどのような白い物よりも遥かに純度の高い白色をしている。そして、ありえないほど真四角の正方形をしている。誤ってその角に触れてしまったならば触れた部位に突き刺さってしまいそうだ。それだけに、僕はその物体に興味が湧いた。
そんな様子の僕を気にしてか、それを運んできた堺がいやみったらしくにやけながら僕に尋ねる。
「これがなにか分かるか?」
答えのわかった質問ほど面白みのないものは無い、というのが僕の持論ではあるが、せっかく気になる情報をくれそうな相手に対してそんなくだらないことは言うつもりがない。僕は今ある情報からもっともらしいことを言う。
「まあ普通に考えれば転送魔法とやらに使う道具なのだろう? だが、そんな一部の人間にしか使えないもののために道具をつくる余裕があるとは思えないから……魔力の元である元素を集める物とか、か?」
「おしい!」
堺は自分の中でなんらかの満足感を得たのか、それ以上なにも教えてくれなかった。そしてまた、堺は転送の準備に取り掛かる。
仕方なく僕の中の悪魔に尋ねようとしたが、なんだか負けたような気がするのでそれはやめた。だが結局、僕には何も手伝うことが出来ないので、作業の見物をすることになった。
堺とルナの様子を見るに、先程の四角いものは装置の一部でしか無いようで、次から次に様々な大きさと色の正方形のものが並べられていく。その様子は奇妙で、この前まで住んでいた世界とはまるで別世界に来てしまったと感じてしまう程に恐ろしくも感じた。
それからも作業は一時間ほど続いた。
「――待たせたな、完成や」
僕はいつの間にか眠ってしまっていたようで、堺の声によって目を覚ました。どうやら準備が整ったようだ。
「ようやくか?」
急いでいた割に準備が長引いていたことに僕は少しだけ不満を覚えて、少しだけ皮肉めいた言葉が口から出てしまう。
「すみません、本当なら先にここにたどり着いたエンジニアが作るはずだったのですが、サタンの手によって……」
僕は堺に対して言ったつもりだったが、ルナが代わりに申し訳なさそうに謝り、そのまま目を伏せて現状がいかに最悪かを僕に教えた。普通の状況下において、ここまで時間のかかるものなら下準備ぐらいされていてもおかしくは無いし、僕が最初に居た場所から考えてもここはかなり遠い。転移魔法などと言う便利な魔法が有るのであれば、こんな長期な移動をする必要性もなかっただろう。もっと言えば、サンクチュアリという場所はこんな今にも潰れそうな廃墟以外にもあったはずだし、仲間が多くいるところにだってあったはずだろう。
しかし、彼らはこのような廃墟で、仲間のバックアップすら受けられないようなところで転移魔法などと言う魔法を使わなければならなかったのだろう。――ここじゃないとだめだからだろう。
「お前の思ったとおりだが、理由はそれだけじゃない。ここに来るはずだった者を含め、魔王と戦える者はほとんどおらん。ほとんどの仲間は死に絶え、それ以外の生き残った少ない人間は悪魔の管理下にあるだけだ」
僕の中の悪魔は、僕が何も聞いていないのにべらべらと話し始めた。
「そもそも、魔法を使えるものなどほとんど居ないこの世界において魔法が広がった理由自体が、ベルゼブブとサタンの影響だ。奴らが人間を救うために魔法を広めた」
その言葉が世界の核心をついた言葉なのか、堺が悪魔を止めようとする。
「いや、こいつに理由も伝えずに戦わえるわけにはいかない。最初からボス戦なんて理由がなければただのクソゲーでしか無いだろう? だからこそ、これが本当のプロローグだと教えてやらなければならない。勘違いするなよ、俺はおしゃべりな悪魔なんだ。今までだんまり決め込んだのだって、もっといっぱい喋るためだ。だから止めるな」
堺が止めた一回以外は誰も止めていないのに、悪魔は邪魔をするなと言わんばかりに話し続ける。ルナはそれを聞いても納得しているといったようにずっと静かに立っている。
「だが、魔法が使えるだけで魔獣が倒せるはずなんてないだろう? それは逆効果だった。人間は魔法を商売道具としてしか扱わず、出来たものといえば魔法と機械の融合品だ。それのおかげで、世界は便利になっただろう。だがそのおかげで、世界の元素は減る一方だ。今ではサンクチュアリという誰かが発動した魔法ですら維持できなる始末だ。そりゃ、人間を助ける為に動いていた悪魔は気がつくだろう――人間こそ人間の敵なのだと」
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