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1 冒険者になる
6 使徒
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職業というものは、ゲームのように、転職したらその職業になれますよ……っていう簡単なものではない。
面倒くさいことではあるが、その職業になれるだけの条件が整って、初めて職業になることが出来るのだ。だから、転職したとしても能力は失わないし、二つの職業を同時に行う人だっているらしい。
初心者は、才能を持っていたとしても、二つ以上の職を同時に使い分けるほどの経験がない。だからこそ、そのノウハウを知るために、独学で勉強したり、誰かのもとで修行したりするらしいが、いかんせん、僕の職業は冒険者登録を生業としているお姉さんですら見たことがないものだ。
つまり、先駆者がお姉さんの知る限りでは存在しない。
「力の使い方もわからないんですけど……」
僕は力なくそう呟いた。
「大丈夫です。誰かの元について修業……は出来なくても、独学は出来ます」
どこから自信がやってきているのか知らないが、お姉さんは満面の笑みを浮かべている。
「どうやって?」
先ほども言ったが、先駆者はいない。つまり、この『使者』なんてものについて書かれた著書もないというわけだ。
一体どこで勉強しろというのだろう。
「簡単ですよ。あ、いけない……これを渡し忘れていました!」
お姉さんは、自身の頭をこつんと叩いて、懐から一冊の小冊子を取り出した。
それを一ページだけめくり、真っ白なページを僕の方に差し出すと、「こちらに魔力を注いでください!」とこれまた元気よく僕に指図した。
「これがなんだっていうんです?」
僕は面倒くさく思いながらも、お姉さんの指示に従うほかなく、再び集中力を高めて魔力を練る。
この作業が非常にきつく、3度目だというのにいまだになれない。――疲れるし、そんなに強くなった気もしないし、本当に必要な能力なのだろうか。
魔力が高まるのを感じて、小冊子に魔力を注ぐ。
すると、小冊子はみるみる魔力を吸って、膨らんでいく。まるで僕の生命力を吸って成長しているようだ。動きは気持ち悪く、禍々しさすら感じられる。
魔力を限界まで吸い尽くしたのか、小冊子は国語辞典ぐらいの大きさになり、魔力を吸うのをやめた。
「はい、オーケーです。これが、冒険者にとって一番大切なものです」
お姉さんは今しがた出来た本を閉じて、僕の方に差し出した。
「なんですこれ?」
「魔力技術の結晶ですよ。いわゆる魔術書と呼ばれるものです。とりあえず一ページ目を開いてみてください」
お姉さんに促されるまま、僕は本の表紙をめくる。
先ほどまでは何も書かれていなかった、無垢なページに文字が書き記されている。しかし文字はまるで読めない。仕方なく、お姉さんの方に本を向ける。
「使徒……神の御使い」
そのページには職業に関することが書かれているらしい。
『神の御使い、それは神によって与えられし加護を持つ者』なんて書かれているんだから、さすがの僕でも察しがつく、神が言っていた、『神の加護』とはこの職業のことだったのだ。
「神め……」
僕は思わず舌打ちをこぼす。
そんな僕とは正反対に、お姉さんは口をパクパクとさせてまるで金魚のようだ。
「失礼しましたっ!」
お姉さんは、突然両膝を床について、両手までも床につけた。まるで神を崇めるかの如く、きれいな平伏だ。
しまった。これじゃあ、これから先神の使者だなんて言われて、崇められてしまうかもしれない。どうにかしなければ……
「待ってください! 僕は確かに神の使者です……ですが、これは神によって使わされた偉大な御方の補助をするべく顕現したものでありまして、くれぐれもご内密にしていただいてよろしいでしょうか!?」
ちょっと強引な誤魔化しかただが、彼女が敬虔な信徒なら誤魔化せそうだし、逆だとしても、ちょっと笑い者になるぐらいで済むだろう。――そう思いたい。
「ということは……まさか!?」
お姉さんは、僕から眠りこけている妹の方に視線を移す。そのまま目をぱちくりとさせて、首を何度か横に大きく振った。
まるで、何かに取りつかれたかのような、そんな恐ろしい動きだ。
そんな動きをしばらく続けてから、お姉さんは再び僕の方に目を戻す。
あまりにも僕の方を凝視するものだから、僕は何度かうなずいた。
「ええ……そういうことなので、そっとしておいてください」
自分でも何を言っているのかわからないが、妹が神によって遣わされた人間で、僕が天使ってことになってしまったが、誤魔化せたしまあいいや。
面倒くさいことではあるが、その職業になれるだけの条件が整って、初めて職業になることが出来るのだ。だから、転職したとしても能力は失わないし、二つの職業を同時に行う人だっているらしい。
初心者は、才能を持っていたとしても、二つ以上の職を同時に使い分けるほどの経験がない。だからこそ、そのノウハウを知るために、独学で勉強したり、誰かのもとで修行したりするらしいが、いかんせん、僕の職業は冒険者登録を生業としているお姉さんですら見たことがないものだ。
つまり、先駆者がお姉さんの知る限りでは存在しない。
「力の使い方もわからないんですけど……」
僕は力なくそう呟いた。
「大丈夫です。誰かの元について修業……は出来なくても、独学は出来ます」
どこから自信がやってきているのか知らないが、お姉さんは満面の笑みを浮かべている。
「どうやって?」
先ほども言ったが、先駆者はいない。つまり、この『使者』なんてものについて書かれた著書もないというわけだ。
一体どこで勉強しろというのだろう。
「簡単ですよ。あ、いけない……これを渡し忘れていました!」
お姉さんは、自身の頭をこつんと叩いて、懐から一冊の小冊子を取り出した。
それを一ページだけめくり、真っ白なページを僕の方に差し出すと、「こちらに魔力を注いでください!」とこれまた元気よく僕に指図した。
「これがなんだっていうんです?」
僕は面倒くさく思いながらも、お姉さんの指示に従うほかなく、再び集中力を高めて魔力を練る。
この作業が非常にきつく、3度目だというのにいまだになれない。――疲れるし、そんなに強くなった気もしないし、本当に必要な能力なのだろうか。
魔力が高まるのを感じて、小冊子に魔力を注ぐ。
すると、小冊子はみるみる魔力を吸って、膨らんでいく。まるで僕の生命力を吸って成長しているようだ。動きは気持ち悪く、禍々しさすら感じられる。
魔力を限界まで吸い尽くしたのか、小冊子は国語辞典ぐらいの大きさになり、魔力を吸うのをやめた。
「はい、オーケーです。これが、冒険者にとって一番大切なものです」
お姉さんは今しがた出来た本を閉じて、僕の方に差し出した。
「なんですこれ?」
「魔力技術の結晶ですよ。いわゆる魔術書と呼ばれるものです。とりあえず一ページ目を開いてみてください」
お姉さんに促されるまま、僕は本の表紙をめくる。
先ほどまでは何も書かれていなかった、無垢なページに文字が書き記されている。しかし文字はまるで読めない。仕方なく、お姉さんの方に本を向ける。
「使徒……神の御使い」
そのページには職業に関することが書かれているらしい。
『神の御使い、それは神によって与えられし加護を持つ者』なんて書かれているんだから、さすがの僕でも察しがつく、神が言っていた、『神の加護』とはこの職業のことだったのだ。
「神め……」
僕は思わず舌打ちをこぼす。
そんな僕とは正反対に、お姉さんは口をパクパクとさせてまるで金魚のようだ。
「失礼しましたっ!」
お姉さんは、突然両膝を床について、両手までも床につけた。まるで神を崇めるかの如く、きれいな平伏だ。
しまった。これじゃあ、これから先神の使者だなんて言われて、崇められてしまうかもしれない。どうにかしなければ……
「待ってください! 僕は確かに神の使者です……ですが、これは神によって使わされた偉大な御方の補助をするべく顕現したものでありまして、くれぐれもご内密にしていただいてよろしいでしょうか!?」
ちょっと強引な誤魔化しかただが、彼女が敬虔な信徒なら誤魔化せそうだし、逆だとしても、ちょっと笑い者になるぐらいで済むだろう。――そう思いたい。
「ということは……まさか!?」
お姉さんは、僕から眠りこけている妹の方に視線を移す。そのまま目をぱちくりとさせて、首を何度か横に大きく振った。
まるで、何かに取りつかれたかのような、そんな恐ろしい動きだ。
そんな動きをしばらく続けてから、お姉さんは再び僕の方に目を戻す。
あまりにも僕の方を凝視するものだから、僕は何度かうなずいた。
「ええ……そういうことなので、そっとしておいてください」
自分でも何を言っているのかわからないが、妹が神によって遣わされた人間で、僕が天使ってことになってしまったが、誤魔化せたしまあいいや。
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