転生したら、犬だったらよかったのに……9割は人間でした。

真白 悟

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4 勇者が生まれる

27 神の証明

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「なるほどな……」
 ベティの説明ではまるで納得がいかなかったが、なってしまったものは仕方がない。本人が決めて、本職の役人が適職だと決めたのなら、私が口を出したところで意味はないな。

「ご納得いただけましたか?」
「いいや、でもまあいいさ。ケンにだって自分の考えはあるだろうし、私が口を出すことでもない」
 ケンだって男だ。自分できっちり考えて決めたことなら、後悔はしないだろう。それに、あれだけ大見得を切ったのだから、そう簡単に死ぬこともないはずだ。というより、昨日に冒険者人生で最大級のトラウマになりかねない出来事に出くわしておきながら、ひょうひょうとした態度だったのだから、そうでなくてはただの馬鹿だ。

「はぁ……それより、メリー様の適職です。魔法使いというのは、冒険者としてはもっとも死に近い職業ですが同時に――」
「――もっとも、パーティーから必要とされていない職業だ」
「はい、そうです。比較的、犬種に寛容な職業である冒険者とはいえ、お荷物を抱えたまま命がけの仕事には挑めませんからね。特に成長しても役に立つかわからない者を育てる人はいませんし、それが魔法使いならなおのこと育てる必要性を感じませんからね」
 ベティによる魔法使いに対する評価は非常に悪いと言わざるを得ない。だが、全て彼女の言うとおりだ。
 初心者を連れて行くというだけでも相当な危険が伴うというのに、初心者のそれも魔法使いなんて言う自分にしかバフをかけられない足手まといを連れて行ってくれる殊勝なパーティーは存在しない。

「それでメリーをケンのパーティーに加えたいというのか?」
「それもありますが、やはり重要なのはメリー様の将来を深く考えることです。なれる職業を知っておくというのは、冒険者になることに限らず、重要なことですからね」
 それもベティの言うとおりだ。
 だからと言って、私の一存でメリーの将来に関することを決めるわけにもいかないわけだ。

「一つだけ言っておくが、私はうんとは言わないからな?」
「わかっています。ですがこちらも役人としてのプライドがありますので、ダイヤの原石を放っておくわけにはいきません。ですので、メリー様がなんとおっしゃられるかで決めましょう!」
「馬鹿、メリーはまだ子供だぞ!? メリーに自分の将来を決める権利があったとしても、それを聞いてもいいのは保護者であるケンだけだ!」
「そうですか……そうでしたら仕方ありませんね」
 そう言ったベティの雰囲気は、今までとはまるで変わった。気分を害したとか、気持ちが変わっただとかそんな意味合いではない。――人格がまるまる変わってしまったかのような感じだ。
 私はそれを一度だけ感じたことがある。メリーの中に自称天使が入った時だ。
 だが自称天使は、大人の中に憑依することをあれだけ嫌がっていた。大人に入れば感づかれる可能性が高いだとか、そんな理由をつけてだ。

「こんなことを聞くのは、今日二度目だが……お前は誰だ?」

 私がそういうと同時に、ベティは微笑した。
 あの天使とは全く別物だ。それだけは間違いない。あの悪魔的な自称天使よりも数段恐ろしい者がベティの体に入り込んだと、感覚がそう告げている。

「ふふふ、私が天使より畏れ多いのは当たり前だわ。私の方が数段上だもの」
「天使より上の存在……なるほど、今度は自称神がお出ましというわけか……」
 世界はどうしてしまったというのだろう。
 もし天使も神も本物だというのなら、私は一日で二度も奇跡を目の当たりにしたことになる。そうなれば、いかに無神論者を気取っていた私であっても、神を信じざるをえなくなる。
「大丈夫よ。あなたは安心して無神論者を気取ればいい。私は心が広いし、あなたに対して私が神であることを証明することは出来ないからね」
 なるほど、神の存在証明ですら納得できなかった私に対して、自分が神であることを証明することは出来ないと理解しているらしい。
「全知全能が聞いてあきれるな」
「面白いことを言うのね? 神は全知全能……それはあなた達が作りだした幻想よ。それは全能のパラドックスからも理解できるでしょう?」
「ああ、それもそうだな」
 神は重すぎて持ち上がらない岩を想像することが出来る。しかし、それは矛盾している。その岩を持ち上げられない神は全能ではないからだ。これを全能のパラドックスと言う。

「だけど、その人の才能を調べることぐらいは出来るわ。たとえばメリーの適正職業とかね」
「適性検査などしなくてもわかるということか」
「そういうこと! だけど様式美っていうのは大切だし、生き証人がいなければ無意味でしょ?」
 ここまで神がお膳立てしてくれたのなら、さすがの私でも理解できる。メリーが勇者に選ばれてしまったのだと。

「私の名前で手紙を出したのもお前か?」
「質問に質問で返すのは教育上よくないわ。だけど、私は部下のミスを水に流して、人間に対して高貴な頭を下げて、そのうえ尻拭いまでしてあげるほどに優しいから教えてあげる。――もちろんそうよ」

 
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