転生したら、犬だったらよかったのに……9割は人間でした。

真白 悟

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60 銃声

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「約束してたのに忘れちゃったから……本当にごめんなさい」
 僕はアニーが忘れてしまったことを思い出させるために、もう一度頭を下げる。
 イチゴのお説教はもっともらしく、もっともらしいことを言われたアニーはそのことを理解しているからこそ、イチゴの言葉に怒りを抱いたのだろう。だがそれについて愚痴を言い続けるのは良くない。
 なぜなら、愚痴を言い続けることによって、その正当性を認められなくなるからだ。もしそんなことになれば、ますます彼女は孤独に仕事をすることになるだろう。他人の僕にとってはどうでもいいことではあるのだが、彼女の実力はかっているわけだ。もし、妹が魔王を討伐するために冒険することになった場合は、彼女の力を借りることになるかもしれない。だからこそ、できればチームプレイに慣れていてもらいたかった。
 まあ、僕が約束を反故にしかけたことをなあなあにしてしまうのが嫌だったということもある。

「もうお昼だよ。特に何時からとかの約束はしていないけれど、私ずっと待ってたんだから」
 アニーは僕の言葉にハッとして、話題を僕の遅刻へと持って行った。
「いやあ、少しバタバタしてまして……本当に申し訳ないです」
 これでようやく正式に謝罪できたというわけだ。
 まあ、自分から約束しておいて忘れてしまったなんて、ビジネスマンとしては最低の部類だろう。彼女と良い関係を築いていくうえで、何等かの補てんはしておかなければならないだろう。それについては後で考えよう。

「許してあげる。ただ、一つだけお願いを聞いてもらってもいい?」
 アニーは僕の思考を読み取ったかのように、丁度よい提案をしてくれた。
 彼女のお願いを聞くことによって、何かしらのメリットがあるというわけではない。だが、彼女の願いを聞くことは必ずしも僕にとって悪い話ではないということだ。
「わかりました。どんな願いでも叶えますよ」
 願いの内容も聞かないうちから返事をすることは一見すると愚かなことにも思えるかもしれないが、今回に限っては、どのような願い事でも聞くという言葉に説得力を持たせるためにはそうしなければならなかった。何でも聞きますよ、という姿勢を見せておくことで誠意を見せるということだ。まあ、本当のことを言えば、アニーがトンデモないお願いをしてくると思わなかったというのが強いのだが、それはおいておくとしよう。

「じゃあ、とにかく、当初の予定通り武具屋に行きましょ?」
 アニーはこの上なく嬉しそうな顔でそう提案した。
 てっきり、今すぐに何等かのお願いごとをされるとばかり考えていた僕は少しだけ拍子抜けした。そして、願い事を先延ばしにされたことにより、もしかすると結構厄介な願い事なのではないだろうか、と少しだけ不安になった。
 まあ、今そんなことを考えても仕方がないだろう。彼女の言うとおりにしよう。
「分かりました。ではご案内をお願いします」
「私のとっておきの店だから、きっとケンも喜ぶと思う」
 彼女は自信満々だ。
 しかし彼女のそんな様子がかえって僕を不安にさせた。なぜなら、彼女の武器と言えば銃で装備だって銃を扱うために軽装備であり、近接戦闘タイプの装備に詳しいとは思えないからだ。
 この世界における魔法使いというのは、ゲームなどでよくある後衛攻撃型ではない。通常で考えるならば、自分自身に対してバフ(攻撃力や防御力などを上昇させる能力)を駆使して近接戦闘するタイプか、後衛も、後衛と言わんばかりに、街とかどこかでクスリを調合して支援するタイプの二通りになる。後衛で弓とか力を必要とする道具を使う場合もあることにはあるのだが、かなり珍しいらしい。その上、もともと使用者が少ない銃を使っている『魔法使い』はこの街には存在しない。銃の使用者が少ない理由は単純で、銃の扱いが難しいということと、耳が良すぎる獣人にとって銃声は耐え難い爆音だからだ。
 人間だった頃に銃を取り扱ったことがあるわけではないので、今とどれほどの差異があるのかはわからないが、僕も銃声はそれほど好きになれない。

「……できればガンショップはやめてもらいたいな」
 アニーに聞こえないように小さくこぼして、アニーのあとをついて行く。
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