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62 ブラックマーケット
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「儂はノラではない」
老猫は僕の方に鋭い眼光を向けて言う。
「す、すみません」
僕は彼女の目つきが恐ろしくて、すぐさまに頭を下げた。
あれ? 僕、今声に出したっけ?
「気にするな、いぬっころ。おぬしは何も口には出しておらん。儂はある程度の読心術が使えるのじゃ」
読唇術……口の動きを読んだというのだろうか……だが僕は口を一切動かしたつもりはないが、僕の癖にそんなものがあったのだろう。まあ、口の動きを読んだというのなら別に不思議でもないし、心を読まれるよりかは幾分かましだろう。
「いや、普通に心を読んでいるんじゃが……安心しろ、表層ぐらいしか読めんし、読むのに膨大な魔力を必要とするから疲れる。警戒する相手がいるときしか使わん」
「そ、そうなんですね」
「いちいちビクビクするな、いぬっころ。何も取って食おうというわけでもない。儂はただ人となりを見て武器を提供するだけじゃ」
そういうと老猫は僕の背後にあるドアのところまで歩いて来て、ドアノブに手をかける。
そういえば、さっき僕がドアノブに触ろうとしていた時、危険だからやめろと言われた。なんでもドアを正面から開けると、店主にボコボコにされるとかなんとか。――いや、そんなことを考えている場合じゃない。僕の目の前にいる老猫はすでにドアに手をかけている。
「あっ……」
声をかける間もないほど、微塵たりともためらうこともなくドアは開かれた。
「大丈夫、ノラさんは」
いつの間にか僕の隣まで来ていたアニーが、小さな声でそうつぶやく。
いや、何が大丈夫なのだろうか……すでに出合い頭に人をボコボコにするような狂気の店主がいる店のドアが開かれたというのに……。
「誰が『狂気の店主』じゃ……儂は出合い頭に人をボコボコにしたりはせん。するとしても半殺し程度だ」
「……半殺しって、ボコボコよりひどいじゃないですか……って『狂気の店主』が『儂』?」
もしかして、この老婆が店主とでも言うのだろうか……それにしては耄碌していそうだが、きちんとした武具を取り扱っているのか? なんて失礼なことを考えてしまったが、アニーが使っている銃は十分に協力な武器に思える。といっても、僕は前世でも現世でも銃など彼女が使うもののほかには見たことすらないわけだ。
つまるところ、結局のところ不安は残る。
「また失礼なことを考えておるな……いぬっころ。心を読まんでもひしひしと伝わってくるわい……まあいい。ウィークの紹介なら、いぬっころでも武器は売ってやる。さっさと入ってこい」
老猫のノラはそんなことをつぶやきながら、僕を人にらみすると店の中に入っていった。
僕は不安になりアニーに目配せした。アニーはそれに気が付いて、「問題ない」とつぶやいてノラの後をついて店に入っていった。僕も彼女たちの後を追い、おそるおそる店に入った。
内装はそれほど汚らしくはない。むしろ、外に比べると天国とも呼べるほどに整えられている。ただ、恐ろしいほどの武具が所狭しと整列させられていて気味が悪い。中でも一番多いのは銃だが、詳しくもない僕が見ても一ミリたりともテンションは上がらない。それどころか、恐ろしくて仕方がない。
いま銃が暴発でもすれば、間違いなく僕の鼓膜は爆発するだろう。
「安心せい。弾は抜いてある。間違って魔法を暴発させても、銃が暴発することはない。まあ、おぬしの財布は消滅するだろうが……いや、運が悪けりゃ命までも消滅するかもしれないがのう」
ノラは満面の笑みを浮かべながら冗談っぽくそう言ったが、まったく安心できそうにもなく苦笑いで返した。
「ノラさんの売る武具には高級品が多いし、ここはブラックマーケットだからそもそもの料金が高い」
アニーがそう補足する。
「いや、意味は理解できてますよ。ただ、普通に笑えないってだけで……」
というか、ブラックマーケットで武具をそろえるっているのもどうなんだ。僕はそんなにお金を使いたくないのだけれど。
老猫は僕の方に鋭い眼光を向けて言う。
「す、すみません」
僕は彼女の目つきが恐ろしくて、すぐさまに頭を下げた。
あれ? 僕、今声に出したっけ?
「気にするな、いぬっころ。おぬしは何も口には出しておらん。儂はある程度の読心術が使えるのじゃ」
読唇術……口の動きを読んだというのだろうか……だが僕は口を一切動かしたつもりはないが、僕の癖にそんなものがあったのだろう。まあ、口の動きを読んだというのなら別に不思議でもないし、心を読まれるよりかは幾分かましだろう。
「いや、普通に心を読んでいるんじゃが……安心しろ、表層ぐらいしか読めんし、読むのに膨大な魔力を必要とするから疲れる。警戒する相手がいるときしか使わん」
「そ、そうなんですね」
「いちいちビクビクするな、いぬっころ。何も取って食おうというわけでもない。儂はただ人となりを見て武器を提供するだけじゃ」
そういうと老猫は僕の背後にあるドアのところまで歩いて来て、ドアノブに手をかける。
そういえば、さっき僕がドアノブに触ろうとしていた時、危険だからやめろと言われた。なんでもドアを正面から開けると、店主にボコボコにされるとかなんとか。――いや、そんなことを考えている場合じゃない。僕の目の前にいる老猫はすでにドアに手をかけている。
「あっ……」
声をかける間もないほど、微塵たりともためらうこともなくドアは開かれた。
「大丈夫、ノラさんは」
いつの間にか僕の隣まで来ていたアニーが、小さな声でそうつぶやく。
いや、何が大丈夫なのだろうか……すでに出合い頭に人をボコボコにするような狂気の店主がいる店のドアが開かれたというのに……。
「誰が『狂気の店主』じゃ……儂は出合い頭に人をボコボコにしたりはせん。するとしても半殺し程度だ」
「……半殺しって、ボコボコよりひどいじゃないですか……って『狂気の店主』が『儂』?」
もしかして、この老婆が店主とでも言うのだろうか……それにしては耄碌していそうだが、きちんとした武具を取り扱っているのか? なんて失礼なことを考えてしまったが、アニーが使っている銃は十分に協力な武器に思える。といっても、僕は前世でも現世でも銃など彼女が使うもののほかには見たことすらないわけだ。
つまるところ、結局のところ不安は残る。
「また失礼なことを考えておるな……いぬっころ。心を読まんでもひしひしと伝わってくるわい……まあいい。ウィークの紹介なら、いぬっころでも武器は売ってやる。さっさと入ってこい」
老猫のノラはそんなことをつぶやきながら、僕を人にらみすると店の中に入っていった。
僕は不安になりアニーに目配せした。アニーはそれに気が付いて、「問題ない」とつぶやいてノラの後をついて店に入っていった。僕も彼女たちの後を追い、おそるおそる店に入った。
内装はそれほど汚らしくはない。むしろ、外に比べると天国とも呼べるほどに整えられている。ただ、恐ろしいほどの武具が所狭しと整列させられていて気味が悪い。中でも一番多いのは銃だが、詳しくもない僕が見ても一ミリたりともテンションは上がらない。それどころか、恐ろしくて仕方がない。
いま銃が暴発でもすれば、間違いなく僕の鼓膜は爆発するだろう。
「安心せい。弾は抜いてある。間違って魔法を暴発させても、銃が暴発することはない。まあ、おぬしの財布は消滅するだろうが……いや、運が悪けりゃ命までも消滅するかもしれないがのう」
ノラは満面の笑みを浮かべながら冗談っぽくそう言ったが、まったく安心できそうにもなく苦笑いで返した。
「ノラさんの売る武具には高級品が多いし、ここはブラックマーケットだからそもそもの料金が高い」
アニーがそう補足する。
「いや、意味は理解できてますよ。ただ、普通に笑えないってだけで……」
というか、ブラックマーケットで武具をそろえるっているのもどうなんだ。僕はそんなにお金を使いたくないのだけれど。
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