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11 魔法の言葉
144 つかのま
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◇ ◇ ◇
「――そろそろ時間ね」
暗闇の中に突如として現れた一線の光のようなそんな声だった。だけど意識が覚醒し始めると、それは酷く恐ろしいもののようにも感じられた。
何か重要なことを忘れている……そんな気分だ。
「さて、じゃあそろそろ起きようか!」
その瞬間に全てを思い出す。
ちょっと前に全身を駆け巡った痛みと、そして人生の終幕だ。獣人でなければ一瞬にして死んでいただろう。そう思えるタイミングは転生後に何度もあったが、記憶が新しくなるたびにそのレベルが増しているような気がする。それなのに死んでいないのは訓練のおかげだろうか。
ともかく、今はそんなことより、次に起こり得る悲劇にどう立ち向かうかという事だ。
眠りというのは、落ちてしまえば一瞬のことであるが、それは起きている人物にとってはその長い時間がそのまま降りかかる。今が何時であるのかはわからないが、おそらく僕は結構な時間眠っていたのだろう。それは空が赤みがかっていることから容易に想像できた。
つまり結構な時間、ケントニスのことを待たせたことになる。だがそのことは問題じゃない。彼女は確かにイチゴの言うとおり優しい人物だ。そのことは何となく理解できる。だがしかし、優しさとはただ甘やかすという意味ではない。時には厳しさだって重要だ。
「ちょっと、待ってください! すぐに起きますからぁ!!」
ケントニスが本気で僕を起こそうと何かをする前に急いで起き上がる。飛び起きたと言い換えても良いだろう。
それを見て彼女はつまらなさそうな表情をした。
「そんなあわてて起きなくても……」
落ち着いて観察してみると、ケントニスは地べたに膝をついて座り込んでいた。僕の頭にあった暖かい感覚はどうやら彼女の太もものものだったらしい。
幼女にひざまくらをさせるなんていい大人がする行為じゃない。なんてことを言うつもりはないが、ケントニスのひざまくらなんて恐れ多くて逆に落ち着かない。いや、落ち着いて眠り込んでいたんだけれど。とにかく気が動転して動悸がすごい。
「も、申し訳ございません!!」
別に怒られているわけでもないのに慌てて謝罪する。もちろん腰は90度に曲げてだ。
これは美少女によるラブコメ的なイベントではない。厳しい師匠が突如として行った奇行をたまたま覗き見してしまったような居たたまれなさすらある、そんなイベントだ。
「何についての謝罪なのかはわからないけど、別にここまでは全部私の計画通り進んでるから、ケン君が何かを気に病む必要はないよ!」
「計画通り?」
それはどういう意味だ。今日やったことは、昨日のおさらいをちょろっとだけして、そして失敗して長い時間眠りこけていただけだ。それが計画通りだというのだろうか。
「そう、計画通りだよ! 伝説の魔法が……最強の魔法の一角が一朝一夕で身につくはずないんだから! 私に出来るはやり方を教えることと、きっかけを与えること! 後はケン君が日々の暮らしの中で研ぎ澄ましていく、それが重要なんだよ!」
「は、はあ……」
ケントニスの言っていることはまさにその通りで、非の打ちどころのない正論だ。結局、ファンタジーの世界でも努力というものはどこまでもつきまとってきて、努力なしに成功することが出来る人間、もとい獣人はほとんどいない。
なんて、女神から恩恵を押し付けられた僕が言えることでもないけど。
そんなことを考えている僕の心を読むかのように、ケントニスはわずかに微笑み、そしてそれは少しだけ冷たい者へと変化した。
「努力は裏切らない。それは神も獣人も……そして人間も同じことだわ。これから教える攻撃的魔法は人間、人類が生み出した最後の遺産。ケン君はどこまで出来るかしら?」
「人間……ですか?」
背筋が凍るようなケントニスの冷たい声に、僕の声はたぶん震えていた。彼女が恐ろしかったのではなく、彼女の言葉そのものが得も言われぬ恐ろしさを感じさせた。
ケントニスの口から出た『人間』という言葉、そして『人類最後の遺産』という言葉があまり良い意味には感じられない。きっと、その言葉の奥深くに何か恐ろしいものがうごめいているのだろう。
「――そろそろ時間ね」
暗闇の中に突如として現れた一線の光のようなそんな声だった。だけど意識が覚醒し始めると、それは酷く恐ろしいもののようにも感じられた。
何か重要なことを忘れている……そんな気分だ。
「さて、じゃあそろそろ起きようか!」
その瞬間に全てを思い出す。
ちょっと前に全身を駆け巡った痛みと、そして人生の終幕だ。獣人でなければ一瞬にして死んでいただろう。そう思えるタイミングは転生後に何度もあったが、記憶が新しくなるたびにそのレベルが増しているような気がする。それなのに死んでいないのは訓練のおかげだろうか。
ともかく、今はそんなことより、次に起こり得る悲劇にどう立ち向かうかという事だ。
眠りというのは、落ちてしまえば一瞬のことであるが、それは起きている人物にとってはその長い時間がそのまま降りかかる。今が何時であるのかはわからないが、おそらく僕は結構な時間眠っていたのだろう。それは空が赤みがかっていることから容易に想像できた。
つまり結構な時間、ケントニスのことを待たせたことになる。だがそのことは問題じゃない。彼女は確かにイチゴの言うとおり優しい人物だ。そのことは何となく理解できる。だがしかし、優しさとはただ甘やかすという意味ではない。時には厳しさだって重要だ。
「ちょっと、待ってください! すぐに起きますからぁ!!」
ケントニスが本気で僕を起こそうと何かをする前に急いで起き上がる。飛び起きたと言い換えても良いだろう。
それを見て彼女はつまらなさそうな表情をした。
「そんなあわてて起きなくても……」
落ち着いて観察してみると、ケントニスは地べたに膝をついて座り込んでいた。僕の頭にあった暖かい感覚はどうやら彼女の太もものものだったらしい。
幼女にひざまくらをさせるなんていい大人がする行為じゃない。なんてことを言うつもりはないが、ケントニスのひざまくらなんて恐れ多くて逆に落ち着かない。いや、落ち着いて眠り込んでいたんだけれど。とにかく気が動転して動悸がすごい。
「も、申し訳ございません!!」
別に怒られているわけでもないのに慌てて謝罪する。もちろん腰は90度に曲げてだ。
これは美少女によるラブコメ的なイベントではない。厳しい師匠が突如として行った奇行をたまたま覗き見してしまったような居たたまれなさすらある、そんなイベントだ。
「何についての謝罪なのかはわからないけど、別にここまでは全部私の計画通り進んでるから、ケン君が何かを気に病む必要はないよ!」
「計画通り?」
それはどういう意味だ。今日やったことは、昨日のおさらいをちょろっとだけして、そして失敗して長い時間眠りこけていただけだ。それが計画通りだというのだろうか。
「そう、計画通りだよ! 伝説の魔法が……最強の魔法の一角が一朝一夕で身につくはずないんだから! 私に出来るはやり方を教えることと、きっかけを与えること! 後はケン君が日々の暮らしの中で研ぎ澄ましていく、それが重要なんだよ!」
「は、はあ……」
ケントニスの言っていることはまさにその通りで、非の打ちどころのない正論だ。結局、ファンタジーの世界でも努力というものはどこまでもつきまとってきて、努力なしに成功することが出来る人間、もとい獣人はほとんどいない。
なんて、女神から恩恵を押し付けられた僕が言えることでもないけど。
そんなことを考えている僕の心を読むかのように、ケントニスはわずかに微笑み、そしてそれは少しだけ冷たい者へと変化した。
「努力は裏切らない。それは神も獣人も……そして人間も同じことだわ。これから教える攻撃的魔法は人間、人類が生み出した最後の遺産。ケン君はどこまで出来るかしら?」
「人間……ですか?」
背筋が凍るようなケントニスの冷たい声に、僕の声はたぶん震えていた。彼女が恐ろしかったのではなく、彼女の言葉そのものが得も言われぬ恐ろしさを感じさせた。
ケントニスの口から出た『人間』という言葉、そして『人類最後の遺産』という言葉があまり良い意味には感じられない。きっと、その言葉の奥深くに何か恐ろしいものがうごめいているのだろう。
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