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その他
最後の3分間
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地球が後何分だかで終わると言われたらどうするか。
終わりまでの時間は違えど、長い人生の中で誰もが一度はディスカッションしたことだろう。意味がない討論だと思う人もいるかもしれない。
しかし、実質はそうじゃない。誰にでも必ず訪れる重要なことだ。この言い回しでは気がつけない。
だから僕が出した課題はこうだ。
『人生が終わるまで後3分しかないとするならどうするか?』
――これは、誰しもがいつかは直面する課題だ。
そんな課題だからこそ、生徒たちはより深く考えなければならない。
「私なら、最後は大切な人と一緒にいたいかな……」
一人の女生徒が口を開く。
彼女の意見は一番多数派のものだろう。誰だって真っ先にそう思う。
「それは……難しいんじゃないかな?人生最後っていうのがどんな状況かわからないし……たった3分じゃなにもできないしね」
反対意見を出したのは、最初に発言した女生徒の恋人だ。
付き合いは長いらしいが、僕もそこのところはよく知らない。
「だけど、そんなこと言い始めたら、何もできないよ?たった3分なんだから……」
「そうだよ!もっと自由に考えなくちゃ。ブレーンストーミングだよ」
友達同士で参加している二人の女の子達がそう提案する。
流石大学生といったところか、覚えたての言葉を使いたがるお年頃らしい。
このままでは、意見がとっちらかってしまうだろう。
「今回の題目を考えてもみなよ。3分で出来ることは限られているんだ……やりたいことを全部書き出してる余裕なんてないよ」
グループ内で一番優秀な男性が指摘した。
ちょうど、そのタイミングでベルが鳴った。今ちょうど議論が始まって3分が経過したということだ。
「はい、そこまで!」
僕は椅子から立ち上がり、終わりを告げる。
「3分がどれほど短いかは実感できましたか?いまのが本当に最後の3分だとするなら、きっとみなさんは後悔することでしょう……ですが、それが現実です。最後だろうと、なんだろうと3分は3分です」
もともと、3分で出来ることなんて限られている。
生徒達がいくら消化不良な顔をしたところで、3分で議論など出来るはずがない。
だからこそ、議論などに大それた意味などない。特に大人数だと、自分の意見を言える時間も限られてしまう。
「だからこそ、最後の3分になっても、後悔しないように常々人生について考えて下さい。それがいつか役に立つでしょう。――それでは、今回の講義を終わりとさせて頂きます。出席カードに感想を書いて提出した下さい」
僕の言葉を皮切りに、生徒達が立ち上がり、カードを提出して教室から出て行く。
その中で、一人だけ僕の前で止まる生徒がいた。最初に意見を述べた女生徒だ。
「先生、最後の3分はどうしたら後悔しないように出来るんですか?」
彼女は不安そうに僕に尋ねた。
僕は非常に困ってしまった。なぜなら、後悔しないことなんてありえないからだ。
しかし、教鞭をとる者として、答えを出さないわけにはいかない。
「それは、これから自分で見つけるんですよ」
僕はえも言えぬ気持ち悪さを抱きながら、そんな無責任なことを言う。
それで、彼女は満足気に去っていくのだが、きっといつか僕のことを恨むようになるのだろう。
――問題を先送りにすることに意味などないと気がついていながらも、最後の3分を先送りにして。
終わりまでの時間は違えど、長い人生の中で誰もが一度はディスカッションしたことだろう。意味がない討論だと思う人もいるかもしれない。
しかし、実質はそうじゃない。誰にでも必ず訪れる重要なことだ。この言い回しでは気がつけない。
だから僕が出した課題はこうだ。
『人生が終わるまで後3分しかないとするならどうするか?』
――これは、誰しもがいつかは直面する課題だ。
そんな課題だからこそ、生徒たちはより深く考えなければならない。
「私なら、最後は大切な人と一緒にいたいかな……」
一人の女生徒が口を開く。
彼女の意見は一番多数派のものだろう。誰だって真っ先にそう思う。
「それは……難しいんじゃないかな?人生最後っていうのがどんな状況かわからないし……たった3分じゃなにもできないしね」
反対意見を出したのは、最初に発言した女生徒の恋人だ。
付き合いは長いらしいが、僕もそこのところはよく知らない。
「だけど、そんなこと言い始めたら、何もできないよ?たった3分なんだから……」
「そうだよ!もっと自由に考えなくちゃ。ブレーンストーミングだよ」
友達同士で参加している二人の女の子達がそう提案する。
流石大学生といったところか、覚えたての言葉を使いたがるお年頃らしい。
このままでは、意見がとっちらかってしまうだろう。
「今回の題目を考えてもみなよ。3分で出来ることは限られているんだ……やりたいことを全部書き出してる余裕なんてないよ」
グループ内で一番優秀な男性が指摘した。
ちょうど、そのタイミングでベルが鳴った。今ちょうど議論が始まって3分が経過したということだ。
「はい、そこまで!」
僕は椅子から立ち上がり、終わりを告げる。
「3分がどれほど短いかは実感できましたか?いまのが本当に最後の3分だとするなら、きっとみなさんは後悔することでしょう……ですが、それが現実です。最後だろうと、なんだろうと3分は3分です」
もともと、3分で出来ることなんて限られている。
生徒達がいくら消化不良な顔をしたところで、3分で議論など出来るはずがない。
だからこそ、議論などに大それた意味などない。特に大人数だと、自分の意見を言える時間も限られてしまう。
「だからこそ、最後の3分になっても、後悔しないように常々人生について考えて下さい。それがいつか役に立つでしょう。――それでは、今回の講義を終わりとさせて頂きます。出席カードに感想を書いて提出した下さい」
僕の言葉を皮切りに、生徒達が立ち上がり、カードを提出して教室から出て行く。
その中で、一人だけ僕の前で止まる生徒がいた。最初に意見を述べた女生徒だ。
「先生、最後の3分はどうしたら後悔しないように出来るんですか?」
彼女は不安そうに僕に尋ねた。
僕は非常に困ってしまった。なぜなら、後悔しないことなんてありえないからだ。
しかし、教鞭をとる者として、答えを出さないわけにはいかない。
「それは、これから自分で見つけるんですよ」
僕はえも言えぬ気持ち悪さを抱きながら、そんな無責任なことを言う。
それで、彼女は満足気に去っていくのだが、きっといつか僕のことを恨むようになるのだろう。
――問題を先送りにすることに意味などないと気がついていながらも、最後の3分を先送りにして。
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