僕の生き別れの妹は魔法少女

真白 悟

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1.魔法少女

6 謎の言葉

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「うん、そう。あたし達魔法少女は記憶を取戻すために戦ってる。まあ、戦っていると言っても戦闘なんてほとんどないけどね。ほとんどは人助けするだけ……だから、だけど、つまり」

 つまり、記憶を取り戻すことと引き換えに、彼女たちは魔法少女団体から依頼を受け、戦闘を行ったり、人助けをしたりするということだろうか?

「だけど、それって……」

「違う、違うって、そうじゃないっ! 確かに兄ちゃんの言うとおりではあるんだけど、違うんだ」

 言っていることが支離滅裂。なにが言いたいのかはさっぱりわからなかった。だが、なんとなくわかったとも言える。

「そうか、別に魔法少女団体が記憶を戻してくれるというわけじゃないんだな?」

「そう、そもそも、魔法少女になる切っ掛けが記憶喪失で、魔法少女団体は魔法少女になった少女を集めて、記憶を取り戻す方法を伝えるだけ」

 だけど、それなおかしな部分はいくつかある。なんだか、陰謀論めいた思想を感じる。頭があまり良くない僕は、興味のない魔法少女にいままで割いてこなかった記憶力が悔やまれる。

 結局おかしな点がいくつもあることは、何となく分かるが、何がおかしいかまでは分からない。かえってイライラするだけで、思考からは何も得られない。彼女について知りたいという思いはあっても、考える力はない。

「……で? どうやって、この街のことを思い出したんだ?」

 僕にとって一番重要だったのはやはり、思い出したきっかけだ。それを知れば他の記憶も思い出せるかもしれないのだから、当たり前のことだ。

「うーん……どうやってって言われても…………ただ、魔法少女団体の言うとおり、任務をこなしていたら思い出したといえばいいのかな?」

 じゃあ、やっぱり魔法少女団体の言うとおりなのか?

「それで、その任務ってのはなんなんだ?」

「……魔人退治」

 彼女はそれだけ言うと、後は渋るように口を噤んだ。

「魔人ってなんなんだ!?」

 そう問い詰めたところで、彼女は僕から目をそらした。もしかしたら、僕の気迫がすごかったのかもしれない。その証拠に香織によって僕は羽交い締めにされていた。僕は気が付かぬうちに妹を怖がらせていたようだ。

「すまない……」

「そう、頭を冷やすべきです」

 全くもって、弁明のしようがない。むしろ謝罪ですらおこがましいかもしれない。でも、そう言わずにはいられなかった。

「ううん、別に怖かったわけじゃない。ただ思い出したくないことを思い出しちゃっただけだから、でももう大丈夫。一時的なものだから」

 彼女には何らかのトラウマがあるらしい。きっとその魔人とやらが関わっているのだろうが、これ以上それについて質問するのは得策ではない。

「そうか、すまなかった……」

 僕に言えることはそれだけだ。だが、彼女は違った。

「違う、もともとはあたしのためなんだから、話すべきだと思う」

「ああ、だけど、僕は話すことを強制するつもりはなくなった」

「あたしが話したいってこと!」

 妹は今できる限りの笑顔を見せているのだろう。かなり無理して笑っているように見えるが、それでも、笑えるようになるくらいには気分が落ち着いたのだろう。それなら、彼女に話をさせるのもやぶさかではない。

「わかった。なら、話してくれ、そして、クラスメート、お前は僕を離してくれ」

 そうして、ようやく話の本題。謎の魔人という単語についての話が始まった。
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