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終章 魔の終末
27.決定事項
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悪魔はどこかから取り出した禍々しい大剣を構える。周りの獣の刻印を持つ者たちはその姿を見ても動じることはない。
それは、悪魔の前に立つ英雄を見たからだ。彼はいれば自分たちに危害が加わらないと本気で信じてこの場にいたからこそ、誰も恐怖におびえることはない。自分たちの『永劫回帰』という呪いを解いてくれると信じているからこそ、今現在の死に何ら興味がないというのもあったが、それ以上にルシフを信じていた。
「お前、あの人たちに何を刷り込んだ?」
「そんなことどうでもいいだろう……と言いたいところだけど、気になるのも仕方ないだろう。簡単だ。僕が悪者で、君が正義の味方。みんなそれを信じてここにいるというだけのこと、それ以上でも以下でもない」
「それがお前の計画か……」
「勇者のパーティーは勇者を残しすべて倒れ、魔王に立ち向かえるのは勇者のみ。面白い余興だろう?」
何が面白いものかと、ルシフは歯を食いしばる。
しかし、文句を言ってもどうなるものでもない。相手は自分にとっては敵であり、説得が通じるような相手ではない。
「何度も言うが俺はやらない。お前の思い通りにはならない」
「馬鹿だな……それじゃあ物語が終わらないだろう? それとも、わかっているのかな……すべて意味がないということを」
すべて意味がない。それは、いまのこの状況を表しているのだろう。
ルシフはいま人生の袋小路に立っている。だからこそ、最後の瞬間まで自分の考えを曲げない。曲げたところで何も変わらないからだ。
「もともと、俺の物語は終わらない。結局のところ俺は最後まで自分の意思を貫き通すしかないんだから」
「ふん、それでもこうすれば君も動かざる負えないだろう?」
ダンダリオンは僕に切りかかる。
明らかに手加減しているのだろう、以前戦ったときとは明らかに弱弱しい。それでもルシフにとっては全力で躱さなければ死んでしまう可能性すらある一撃だ。
しかし、もともとルシフには未来予知という能力がある。
来る場所さえわかっていれば、どれだけ早い攻撃だろうとよけられないわけがない。
「無駄だ。僕が本気を出せばどこまででも逃げられる」
ルシフの強気な発言に、ダンダリオンは嘲る。
「はっ、本当にそうかな?」
ダンダリオンの太刀筋はルシフが見た未来よりも数センチだけずれていた。ルシフの服に少しだけ亀裂が入る。
「何!?」
「未来とはいとも簡単に変えることができるのだよ。そうでなければ面白くもないだろう? といっても、僕が決定した未来は覆らないんだけどね」
そう言い切った彼の剣撃は熾烈を増していく。到底未来視などしている時間がないほどにあまりに多い太刀筋に対応しきれなくなったルシフは、ようやく、目の前に突き刺されていた剣に手をかざした。
剣をさばくには剣というわけだ。ところが、ルシフはダンダリオンほど剣技に優れてはいない。だから、すぐにルシフが劣勢になった。といっても、もともと劣勢だったわけだから、状況はそれほど変わっていない。それでもダンダリオンは手加減しているというのだから、ルシフにとってこれ以上の絶望もないだろう。
「僕に勝たせる気なんてないだろう……?」
ルシフは勝つことができない相手に対して、これ見よがしにと嫌みを吐いた。
「いや、勝ってもらわなければ困る。少なくとも僕の今の力を超えてもらわなければ英雄とは言えないし、この先を任せるとこは出来ない」
「だが、俺はお前を倒すつもりはない」
「倒さなければ君の大切なものが死ぬというだけのこと……と言っても、それでも君は動かないだろう? でも、だからこそ、君は僕の計画の一部にしかなれないということさ」
ダンダリオンはルシフの剣をさばくように見せながら、自らルシフの剣で自分の剣を弾き飛ばした。さも、自分が根負けして、不覚を取ってしまったかのように、ルシフの剣がはじけた方に倒れこんだ。
そして、そのまま剣の餌食となった。
「……どうだい。僕と……君の実力差が……あれば、こんな演技だってお手のものというわけさ」
「結局、俺はずっと誰かの手の平で踊らされる自惚れ者だということか」
「いいや……英雄。ここからは君の手の平さ……」
このまま、すべてが終わればいいと思った。
結局、俺は神の手の平で踊らされ、次はダンダリオンに踊らされ、最後には民衆に踊らされることとなる。永劫回帰、それは自分の人生に意味を見出せない人が恐れる罰なのかもしれない。
これが決定事項というのなら、俺にはどうすることもできないのだろう。
それは、悪魔の前に立つ英雄を見たからだ。彼はいれば自分たちに危害が加わらないと本気で信じてこの場にいたからこそ、誰も恐怖におびえることはない。自分たちの『永劫回帰』という呪いを解いてくれると信じているからこそ、今現在の死に何ら興味がないというのもあったが、それ以上にルシフを信じていた。
「お前、あの人たちに何を刷り込んだ?」
「そんなことどうでもいいだろう……と言いたいところだけど、気になるのも仕方ないだろう。簡単だ。僕が悪者で、君が正義の味方。みんなそれを信じてここにいるというだけのこと、それ以上でも以下でもない」
「それがお前の計画か……」
「勇者のパーティーは勇者を残しすべて倒れ、魔王に立ち向かえるのは勇者のみ。面白い余興だろう?」
何が面白いものかと、ルシフは歯を食いしばる。
しかし、文句を言ってもどうなるものでもない。相手は自分にとっては敵であり、説得が通じるような相手ではない。
「何度も言うが俺はやらない。お前の思い通りにはならない」
「馬鹿だな……それじゃあ物語が終わらないだろう? それとも、わかっているのかな……すべて意味がないということを」
すべて意味がない。それは、いまのこの状況を表しているのだろう。
ルシフはいま人生の袋小路に立っている。だからこそ、最後の瞬間まで自分の考えを曲げない。曲げたところで何も変わらないからだ。
「もともと、俺の物語は終わらない。結局のところ俺は最後まで自分の意思を貫き通すしかないんだから」
「ふん、それでもこうすれば君も動かざる負えないだろう?」
ダンダリオンは僕に切りかかる。
明らかに手加減しているのだろう、以前戦ったときとは明らかに弱弱しい。それでもルシフにとっては全力で躱さなければ死んでしまう可能性すらある一撃だ。
しかし、もともとルシフには未来予知という能力がある。
来る場所さえわかっていれば、どれだけ早い攻撃だろうとよけられないわけがない。
「無駄だ。僕が本気を出せばどこまででも逃げられる」
ルシフの強気な発言に、ダンダリオンは嘲る。
「はっ、本当にそうかな?」
ダンダリオンの太刀筋はルシフが見た未来よりも数センチだけずれていた。ルシフの服に少しだけ亀裂が入る。
「何!?」
「未来とはいとも簡単に変えることができるのだよ。そうでなければ面白くもないだろう? といっても、僕が決定した未来は覆らないんだけどね」
そう言い切った彼の剣撃は熾烈を増していく。到底未来視などしている時間がないほどにあまりに多い太刀筋に対応しきれなくなったルシフは、ようやく、目の前に突き刺されていた剣に手をかざした。
剣をさばくには剣というわけだ。ところが、ルシフはダンダリオンほど剣技に優れてはいない。だから、すぐにルシフが劣勢になった。といっても、もともと劣勢だったわけだから、状況はそれほど変わっていない。それでもダンダリオンは手加減しているというのだから、ルシフにとってこれ以上の絶望もないだろう。
「僕に勝たせる気なんてないだろう……?」
ルシフは勝つことができない相手に対して、これ見よがしにと嫌みを吐いた。
「いや、勝ってもらわなければ困る。少なくとも僕の今の力を超えてもらわなければ英雄とは言えないし、この先を任せるとこは出来ない」
「だが、俺はお前を倒すつもりはない」
「倒さなければ君の大切なものが死ぬというだけのこと……と言っても、それでも君は動かないだろう? でも、だからこそ、君は僕の計画の一部にしかなれないということさ」
ダンダリオンはルシフの剣をさばくように見せながら、自らルシフの剣で自分の剣を弾き飛ばした。さも、自分が根負けして、不覚を取ってしまったかのように、ルシフの剣がはじけた方に倒れこんだ。
そして、そのまま剣の餌食となった。
「……どうだい。僕と……君の実力差が……あれば、こんな演技だってお手のものというわけさ」
「結局、俺はずっと誰かの手の平で踊らされる自惚れ者だということか」
「いいや……英雄。ここからは君の手の平さ……」
このまま、すべてが終わればいいと思った。
結局、俺は神の手の平で踊らされ、次はダンダリオンに踊らされ、最後には民衆に踊らされることとなる。永劫回帰、それは自分の人生に意味を見出せない人が恐れる罰なのかもしれない。
これが決定事項というのなら、俺にはどうすることもできないのだろう。
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