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終章 魔の終末
2.老齢の男
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メフィストという人物は良くも悪くも危険人物というべきだろう。ただ単に悪魔殺しの異名にある通り悪魔にとってだけ危険というわけではない。彼は人間にとっても危険なのだ。
だが、今更そんなことを言っても手遅れだろう。ルシフはレヴィアから彼の話を聞いたそのタイミングで考えるべきであった。彼が人間を守る王国騎士団にいることがどういうことを指すのかということについて意味を考えなければなかったのだ。
「…………つまり、あんたがここにいるってことはそういうことなんだろうな……?」
動くことが出来ないこの緊張感の中で、なんとか口を開きかすれるような声を発した。
それを聞き取ったメフィストは少しだけ考え込んだかと思うと、顔を上げてこちらを見直したがやはりすぐに顔を下に向けてもう一度考え込んだ後、早口でいう。
「また曖昧な質問が来たものだな…………だが君の考えていることは概ねあっていると思うわけじゃが………………そんなことはもはやどうでもいいだろう、お前は失敗して儂は成功したというだけじゃからのう。お前は永遠に死ぬ運命から逃れることなど到底出来まい!」
威圧感のある口調ではあるが、何か違和感があるような気がしてならない。なぜなら、彼はルシフがどこで生まれたのかは知っていて当然である。それはわかるのだが、そもそも彼は永劫回帰のシステムについて詳しく知らないのかもしれない。
だが、それはそれで違和感がある。誰もが知っている永劫回帰の黙示録について長寿で聡明な彼が知らないなどありえるのだろうか?
それもあるのだが、何より彼からは一切のさっきが感じられない。その魔力さえも……
「どうやって俺を倒すつもりなんだ?」
強がる僕をよそ目にメフィストはアンドロマリウスの方に向き直った。
「おや? もうお話は終わりですか? 私はまだまだ待てますよ?」
「マリウス……茶化すんじゃない。儂に時間がないことなどお前が一番良く知っているだろう?」
「ふっ、そうでしたね! じゃあ後は私におまかせ下さい」
「言われんでももう分身ももたん。では後は任せる……神もお喜びになることだろう。……そうだ、ダンダリオンのやつはあまり信用するな」
「それはどういう意味ですか? …………ってもう消えちゃいましたか」
二人の話が終わるよりも早くファウストは消え去ってしまった。唐突な展開についていけないルシフではあるが、この状況は相当都合がいい。
「じゃあルシフさん、そろそろ死んでもらいたいのですが……何か言い残すことはお有りですか?」
言っていることは恐ろしいことだが、いつもの様にほんわかとした口調がルシフのやる気を損なわせる。だがルシフは昔からよく知っている。彼女はあえて軽い口調で話すだけで、その本心は常に冷徹で情熱的だ。
殺すと口にしたのであれば彼女は必ず殺す。それは脅しでもなんでもなく本心から口にしているわけで、軽口を叩いているというわけではない。彼女はそれほどまでに誠実であるのだ。
「……言い残したいこと? そんなのいっぱいあるよ……。どうしてお前は悪魔になってしまったんだ? お前ほどの正義感があるにもかかわらずどうして神を裏切った?」
アンドロマリウスに対しては酷な質問ではあるが、ルシフはどうしてもその理由を聞いておかなければならない。聞いておかなければきっとルシフは彼女を殺すことなど出来ないだろう。
例えそれが同情を誘うような悲惨なストーリーであったとしても聞いておかなければならない。
「大した理由なんてないよ。それに私が神を裏切るはずないでしょう? それに悪魔なんて呼び方は気に入りません。呼ぶとするなら……そうですね? 天使とでも呼んでもらえないでしょうか? 私達は神に最も近く、神の代弁者とでも言うべき存在ですよ? だからこそあなたは生かしておきたかった……それなのに……」
彼女の言い分には虫唾が走ったルシフ。神の代弁者? 神に最も近い? 確かに獣の刻印は神に近い力を持っているといっても過言ではない。だかルシフそれを善行に使っているというのであればルシフも彼女に対して敵意を感じることもなかっただろう。
だが、彼女に対して説教をするつもりも説得するつもりも毛頭ない。ルシフがやることは彼女の言葉を借りるとするのであれば『救ってやる』ということだろう。
「そうか、もういい。どうやら俺とお前では考え方が180度違っているようだ。ならば、後はどちらかが死ぬまで戦うだけだ!」
「――――戦う? 笑わせないで下さい。 この人数差で戦闘に不向きな魔法……一体どのあたりを見て戦いになると思われているのでしょうか……? これは私からあなたに対する一方的な制裁ですよ!」
そう叫ぶと彼女は一目散にこちらに飛びかかってきた。
…………どうやら、彼女は昔と何も変わっていないようだ。これだけの人数差にも関わらず1人で向かってきたのだ。だから僕の思惑通りになった。今回ばかりは彼女の正義の心に対して感謝しなければならないだろう。
ルシフは彼女の感情が乗った一撃を難なく躱し、彼女が右手に握っていた黒い角を奪い取った。
「……しまった! まさか、それが狙いだったとは!? やはりあなたの状況把握能力は厄介ですね……」
ルシフが奪い取った黒い角、それはハムートの魂が宿る命の角。これをアリサに返せばアリサは2つの魂を取り戻すことが出来る。
「おい! ハムート! おい!」
ルシフの必死の呼びかけににもハムートは返事すらしない。ハムートがいくら彼を嫌っているとはいえ、この状況下においてそのような自分勝手な行動に出ることなどありえないのだ。つまり、彼女によって何かされていると考えるのが普通である。
「呼びかけても無駄ですよ。彼の魂は……おっとこれは秘密でした。失言失言」
彼女の性格から考えても誰かとの約束の上で秘密にしていることは容易に理解できる。彼女のようにおしゃべりな性格の人物に秘密を託す事自体が大きなリスクであるが、それでも彼女を信頼した人物というとファウスト以外に存在しないだろう。
ルシフはそのことを念頭において、必死に状況を整理する。もし質問を誤ればこれから一切の回答は得られないだろう。
だが、それはあくまで簡単にこの状況から脱出したい場合の話であって、ルシフにはそれ以外の秘策はあった。だからこそ、彼は油断してしまったのだ。
「なるほど、そういうことか。だったら同じ正義を志す二人において秘密など必要ないだろう? どうやって魂を封印したんだ?」
彼女はその言葉に微笑みで返した。もしかしたら、答えが返ってくるかもしれないなどというルシフの甘い期待は直ぐ様崩れ去る。
「馬鹿ですね……あなたと私の正義など反対に言えばお互いが悪でしょう? だったらその先が同じであったとしても同士とはいえないのですよ。だから敵である私があなたに答えを話すわけないでしょう?」
その答えはなんとなく予想できていたルシフではあるが、自身の目論見があまりにももろく崩れ去ったのは予想外であった。
「メフィストか……」
おそらく彼女に入れ知恵したのはメフィストということだろう。ルシフが入り込む隙など初めからありはしなかったのだ。だからこそ、ルシフは容易に次の作戦に移ることが出来た。
それはメフィストの力を認めたというわけではない。ルシフがアンドロマリウスという旧友を信頼していたからこそ騙すことが無駄であることを悟ったというだけだ。
「ならしょうがない! お前の思惑どおり1対1で相手してやるとしよう。お前たちもアンドロマリウスには手出しするんじゃねえぞ!」
「お前たち? はてなんのことを話しているのでしょう?」
そう呟くと同時に彼女はルシフの視線の先を振り返る。それと同時に合点が言ったと言うようにうなずきつつもこちらに振り向き直し、再び話し始めた。
「――――なるほど」
だが、今更そんなことを言っても手遅れだろう。ルシフはレヴィアから彼の話を聞いたそのタイミングで考えるべきであった。彼が人間を守る王国騎士団にいることがどういうことを指すのかということについて意味を考えなければなかったのだ。
「…………つまり、あんたがここにいるってことはそういうことなんだろうな……?」
動くことが出来ないこの緊張感の中で、なんとか口を開きかすれるような声を発した。
それを聞き取ったメフィストは少しだけ考え込んだかと思うと、顔を上げてこちらを見直したがやはりすぐに顔を下に向けてもう一度考え込んだ後、早口でいう。
「また曖昧な質問が来たものだな…………だが君の考えていることは概ねあっていると思うわけじゃが………………そんなことはもはやどうでもいいだろう、お前は失敗して儂は成功したというだけじゃからのう。お前は永遠に死ぬ運命から逃れることなど到底出来まい!」
威圧感のある口調ではあるが、何か違和感があるような気がしてならない。なぜなら、彼はルシフがどこで生まれたのかは知っていて当然である。それはわかるのだが、そもそも彼は永劫回帰のシステムについて詳しく知らないのかもしれない。
だが、それはそれで違和感がある。誰もが知っている永劫回帰の黙示録について長寿で聡明な彼が知らないなどありえるのだろうか?
それもあるのだが、何より彼からは一切のさっきが感じられない。その魔力さえも……
「どうやって俺を倒すつもりなんだ?」
強がる僕をよそ目にメフィストはアンドロマリウスの方に向き直った。
「おや? もうお話は終わりですか? 私はまだまだ待てますよ?」
「マリウス……茶化すんじゃない。儂に時間がないことなどお前が一番良く知っているだろう?」
「ふっ、そうでしたね! じゃあ後は私におまかせ下さい」
「言われんでももう分身ももたん。では後は任せる……神もお喜びになることだろう。……そうだ、ダンダリオンのやつはあまり信用するな」
「それはどういう意味ですか? …………ってもう消えちゃいましたか」
二人の話が終わるよりも早くファウストは消え去ってしまった。唐突な展開についていけないルシフではあるが、この状況は相当都合がいい。
「じゃあルシフさん、そろそろ死んでもらいたいのですが……何か言い残すことはお有りですか?」
言っていることは恐ろしいことだが、いつもの様にほんわかとした口調がルシフのやる気を損なわせる。だがルシフは昔からよく知っている。彼女はあえて軽い口調で話すだけで、その本心は常に冷徹で情熱的だ。
殺すと口にしたのであれば彼女は必ず殺す。それは脅しでもなんでもなく本心から口にしているわけで、軽口を叩いているというわけではない。彼女はそれほどまでに誠実であるのだ。
「……言い残したいこと? そんなのいっぱいあるよ……。どうしてお前は悪魔になってしまったんだ? お前ほどの正義感があるにもかかわらずどうして神を裏切った?」
アンドロマリウスに対しては酷な質問ではあるが、ルシフはどうしてもその理由を聞いておかなければならない。聞いておかなければきっとルシフは彼女を殺すことなど出来ないだろう。
例えそれが同情を誘うような悲惨なストーリーであったとしても聞いておかなければならない。
「大した理由なんてないよ。それに私が神を裏切るはずないでしょう? それに悪魔なんて呼び方は気に入りません。呼ぶとするなら……そうですね? 天使とでも呼んでもらえないでしょうか? 私達は神に最も近く、神の代弁者とでも言うべき存在ですよ? だからこそあなたは生かしておきたかった……それなのに……」
彼女の言い分には虫唾が走ったルシフ。神の代弁者? 神に最も近い? 確かに獣の刻印は神に近い力を持っているといっても過言ではない。だかルシフそれを善行に使っているというのであればルシフも彼女に対して敵意を感じることもなかっただろう。
だが、彼女に対して説教をするつもりも説得するつもりも毛頭ない。ルシフがやることは彼女の言葉を借りるとするのであれば『救ってやる』ということだろう。
「そうか、もういい。どうやら俺とお前では考え方が180度違っているようだ。ならば、後はどちらかが死ぬまで戦うだけだ!」
「――――戦う? 笑わせないで下さい。 この人数差で戦闘に不向きな魔法……一体どのあたりを見て戦いになると思われているのでしょうか……? これは私からあなたに対する一方的な制裁ですよ!」
そう叫ぶと彼女は一目散にこちらに飛びかかってきた。
…………どうやら、彼女は昔と何も変わっていないようだ。これだけの人数差にも関わらず1人で向かってきたのだ。だから僕の思惑通りになった。今回ばかりは彼女の正義の心に対して感謝しなければならないだろう。
ルシフは彼女の感情が乗った一撃を難なく躱し、彼女が右手に握っていた黒い角を奪い取った。
「……しまった! まさか、それが狙いだったとは!? やはりあなたの状況把握能力は厄介ですね……」
ルシフが奪い取った黒い角、それはハムートの魂が宿る命の角。これをアリサに返せばアリサは2つの魂を取り戻すことが出来る。
「おい! ハムート! おい!」
ルシフの必死の呼びかけににもハムートは返事すらしない。ハムートがいくら彼を嫌っているとはいえ、この状況下においてそのような自分勝手な行動に出ることなどありえないのだ。つまり、彼女によって何かされていると考えるのが普通である。
「呼びかけても無駄ですよ。彼の魂は……おっとこれは秘密でした。失言失言」
彼女の性格から考えても誰かとの約束の上で秘密にしていることは容易に理解できる。彼女のようにおしゃべりな性格の人物に秘密を託す事自体が大きなリスクであるが、それでも彼女を信頼した人物というとファウスト以外に存在しないだろう。
ルシフはそのことを念頭において、必死に状況を整理する。もし質問を誤ればこれから一切の回答は得られないだろう。
だが、それはあくまで簡単にこの状況から脱出したい場合の話であって、ルシフにはそれ以外の秘策はあった。だからこそ、彼は油断してしまったのだ。
「なるほど、そういうことか。だったら同じ正義を志す二人において秘密など必要ないだろう? どうやって魂を封印したんだ?」
彼女はその言葉に微笑みで返した。もしかしたら、答えが返ってくるかもしれないなどというルシフの甘い期待は直ぐ様崩れ去る。
「馬鹿ですね……あなたと私の正義など反対に言えばお互いが悪でしょう? だったらその先が同じであったとしても同士とはいえないのですよ。だから敵である私があなたに答えを話すわけないでしょう?」
その答えはなんとなく予想できていたルシフではあるが、自身の目論見があまりにももろく崩れ去ったのは予想外であった。
「メフィストか……」
おそらく彼女に入れ知恵したのはメフィストということだろう。ルシフが入り込む隙など初めからありはしなかったのだ。だからこそ、ルシフは容易に次の作戦に移ることが出来た。
それはメフィストの力を認めたというわけではない。ルシフがアンドロマリウスという旧友を信頼していたからこそ騙すことが無駄であることを悟ったというだけだ。
「ならしょうがない! お前の思惑どおり1対1で相手してやるとしよう。お前たちもアンドロマリウスには手出しするんじゃねえぞ!」
「お前たち? はてなんのことを話しているのでしょう?」
そう呟くと同時に彼女はルシフの視線の先を振り返る。それと同時に合点が言ったと言うようにうなずきつつもこちらに振り向き直し、再び話し始めた。
「――――なるほど」
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