永劫回帰の黙示録(レヴェレーション)

真白 悟

文字の大きさ
60 / 86
終章 魔の終末

4.宵の明星

しおりを挟む
 長々しい話もどうやら佳境を迎えたらしく、力強く話をしていたアンドロマリウスは、少しだけ最初よりも言葉が弱々しくなっていた。

「――そして、その神父は決意することになりました。え、なにおですって? それはもちろん、ある一つの虚構を作り出すことです。もちろんすぐに上手くいくはずありません。嘘をいかにも本当であるか信じさせるのは難しいことだと、ルシフさんも知っているでしょう? 父を嫌いな振りをし続けたあなたなら……」
「そんなわけないだろう? 俺は父を嫌いだったわけじゃない。恨んでいただけだ」
 ルシフは彼女の言葉に反発するように腕を横に払い、まるで、彼女の言葉を打ち返すがごとく言葉を返した。

「それはおかしいですね? だって、ルシフさんが恨んだのは世界でしょう?」
 彼女はクスクスとわかって、ルシフの言葉がさも面白い冗談であることを知っているかのようにそう呟いた。
 しかし、ルシフはその言葉の真意がわからないようで、言葉に詰まっている様子だ。
「……は?」
 それに対して彼女はしまったと、悪びれる様子もなく、わざとらしく困った表情をし。自身の頭を小突くようないかにも、私可愛いでしょと言わんばかりな行動をとった。
 反対にそれが、ルシフをさらなる混乱に陥れたようで、ルシフは困惑している。

「そうでした。それを知っているのはルシフさんではありませんでした……ですが、私はルシフさんの方が、断然人間らしくて好きですがね」

 そんな風に茶化し、微小の笑顔を浮かべる彼女をルシフは懐かしくかんじたようで、先ほどの青い顔から普段通りに戻り、彼女に対して冗談を言えるほどに回復した。
「そうか、何の話をしているのかいまいち掴めないが……だったら俺と結婚するか?」
 冗談交じりのプロポーズを聞いて、彼女の顔はみるみる赤みを帯びていく。しかし、ルシフはそんなことにも一切気がつかない。
「嬉しいです。ですが、それをもっと早く行っていただければ、こんな状況にはならなかったでしょうね? それに、あなたには本当に守るべきものがいるでしょう?」
 彼女の返しがよっぽど予想外だったのだろう、ルシフはしどろもどろになりながら、「ああ」とだけ答えた。

「だったら、あなたは文字通り過去のあなたを超えなければならない! そして、この私も!! ……私が助言できるのもこれで最後です。あとはあなた自身が頑張る他ありませんし、これ以上協力するつもりもありません。って言ってもあなたにとっては私の協力ななど必要ないでしょうけどね」
「いいや、結局よくはわからなかったが、お前と最後に話せてよかったよ……旧友との別れがただの喧嘩別れにならなくて…………よかったよ!」
「最後とは……私も随分と舐められたものです。あなたの魔法と私の剣技では、私に軍配があがるでしょう」
「ぬかせ! お前の剣技など、今まで一度たりとも俺に当たったことがないだろうが!?」
「いつまでも昔のままだと思っているのでしたら、あなたは間違いなく愚か者でしょう……!」

 剣を構えたアンドロマリウスと、拳を構えたルシフェル。もちろん、どちらともが本気で相手を殺すつもりで構え、お互いを牽制し合っている。
 二人の正義は近くて遠い、どちらともが他人のためにけんを構えてはいるものの、まったく違う目的でそこに立っていた。
 アンドロマリウスはルシフェルの魂を解放するため、ルシフェルは親友達を生かすため。救うという点ではある意味同じ目的で殺意を込めている。
 そんな間合いの中、先に言葉を発したのは彼の方だった。

「悪いが、俺も昔とは随分と違う!」

 ルシフは詠唱の一切を唱えずに、魔法を発動させた。彼の目はいつの間にか暗くなっていた空に呼応するかのように、怪しい光を醸し出す。
 月光、それが彼の目の光から連想させられた。しかし、それよりももっと薄い光。金星が太陽光を反射したその光の方が近いかもしれない。彼はすぐにでも彼女の未来を見ようとした。がーー

「――私はあなたのはるか上を行く……!!」

 アンドロマリウスはその言葉と共に剣を横に振った。もちろん、そんなありきたりな剣撃にあたるほどルシフは耄碌していない。彼女の剣をあっさりと後ろ跳びでギリギリのところで躱した。だが、それと同時に未来を見るのを中断させられる。
「……舐めてるのか! それともお前の実力はそんなもんなのか?」
 明らかに、ルシフは彼女を舐めていた。いや、舐めるているはずなどなかったが、いつの間にか舐めてしまっていた。

「何度でも言わせて貰います……! 舐めているのはあなたの方です!!」

 その台詞と共に、ルシフの目から漏れていた光はゆっくりと消え去った。
「なん……だと……!?」
 彼女の剣によって、彼の魔法式はいとも簡単に消え去ってしまったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...