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終章 魔の終末
10.騎士団本部
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「なんなんだよ、もう!」
アリサも文句を言いながら後ろからついてくる。しかしあるきだしてすぐに立ち止まったルシフによそ見をしていアリサがぶつかった。
「……っ! 突然立ち止まらないでよ。僕はそんな急に止まれないよ」
彼女は文句をいいながらルシフをにらめつけた。だが、ルシフはそんなことを気にもとめず、彼女の方を振り返ると神妙な顔で尋ねた。彼のそんな顔を見たのは初めてだったからか、彼女は顔をこわばらせる。
「王国騎士団本部ってどこだっけ?」
――アリサはムッとした様子でルシフの前を歩いている。
「はぁ、俺はなんやかんやで王国騎士団に行ったことがないんだよ」
全くこちらを向かない彼女に言い訳するようにルシフはそう呟く。だがそれでも彼女は振り返りもせず、黙々と騎士団本部を目指している。
そんな様子だから、ルシフは彼女の機嫌を取ろうと躍起になっているが、一向に機嫌は治りそうもない。
「俺何もしてないだろう? 役にもたってるとも思えないけど……」
なんてルシフが愚痴をはいたところで、ようやく彼女が立ち止まった。
「別に怒ってないよ。ちょっと呆れてはいるけどね。僕がついてこなかったらルシフさんどうするつもりだったの?」
目を失った状態な上に土地勘が全くないとは言わないが、圧倒的に情報が少ない状況下においてルシフが目的を果たせたはずもない。アリサも気を遣って目の話はしないが、彼女の言わんとする事をルシフ自信は痛感する。
「まあなんとかなっただろ。つってもお前がついてきてくれてるんだから、そもそもそんな心配自体必要ないがな!」
彼の残った瞳には光が宿っているように見え、表情もいつもどおりだ。その顔を見てアリサは胸をなでおろしたと同時にため息をつく。
「自分が今どこにいるのかもわかって無いのに?」
「中央通りだろ?」
彼女の問にルシフは全くの間もなく即答する。それを聞いて彼女は更に呆れ返った。
「ここは道じゃないよ……」
さっきまでは間違いなく道を歩いており、今も道を歩いていると信じているルシフにとってその言葉は理解できないものだった。
「はあ?」
「でもルシフさんがわからなくても仕方ないか……僕だってあれを見てようやく気がついた程だし」
そう言って彼女が指したのは、紛れもなく騎士団の紋章が刻まれた看板。いやそれは元壁の一部だろう。レンガを積んだような形の壁の残りにそれは虚しくへばりついていた。
「つまり……この先が騎士団本部ってことか?」
なんとなくその質問が間違っていることには気がついたが、ルシフは恐る恐るそう尋ねた。
アリサは顔色人使えずに冷静に沈着に答える。
「だったらどれだけ良かっただろうね? 間違いなく、ここはもともと騎士団本部があった場所で、あの壁は会議室の壁の一部に間違いないよ」
彼は彼女の言葉に思考が停止する。騎士団本部が倒壊したというのであればまだ説明はついたが、ここは誰がどう見たってただの道にしか見えない。つまるところここが彼女の言うとおり目的の場所だというのであれば、それは消滅していると表現するしかない。
確かに、アリサやレヴィアの魔法はかなりすごいもので、騎士団本部を消滅させることは容易いだろうが、それは周囲も巻き込む上に綺麗さっぱり何もなくなるなんてこととはありえない。
荒野になれど、まるで整備された道であるかのように錯覚するようなことは絶対に有り得ないだろう。だからこそ、この状態は破壊されたのではなく、消滅させられたとしか表現しようがない。
「……一体どれほどの魔法を……というか、こんな事ができる魔法なんて存在するのか?」
ルシフがそうつぶやいた時、空から男が舞い降りてきた。その姿は威圧的でまるで人間ではないかのような真っ白い姿。あるいは天使が舞い降りて来たと言われても誰も疑わないだろう。
その男の背中には白い羽が2片携えられ、神聖な空気を醸し出す。彼は二人を見下して厳かに口を開いた。
「私が教えてやろうか?」
ルシフはその高圧的な態度が気に食わない。だが気圧されいつもの憎まれ口を叩くことができず、一度だけ頷いた。
「なるほど、本能的にわかっているのかな? 私に口をきく事自体傲慢であることに。いいだろう……その野性的本能をたたえ教えてある。結論から述べるとその建物を襲ったのは、悪魔でも聖者でもない。そんな下賤のものにそんな芸当が出来るはずもない。それこそが神によって与えられた力の限界地点なのだから。しかし、神によって使わされた私にはそれが出来る。つまりそれをやったのは私ということだ」
アリサがその男の言葉に反発する。
「もし君の言っていることが本当だとするなら、どうして神の使いが人間にこんな事をするの? 君はただの神の狂信者でしょう? 神がこんなことをするはずない!」
男はその言葉に怒りを顕にし、アリサを鋭い眼光で睨む。
「神の教えを伝導できなかった愚か者め!! 神はお前たち教会にはほとほと呆れておられる。何が永劫回帰だ!? 何が悪魔だ!? お前たちがきちんと役割を果たせなかった報いがこれだ」
男がそんな風にまくし立てるものだから、ついにはルシフも余っていられなかった。
「そのぐらいにしてやってくれ……」
その言葉が聞こえると同時に、男はルシフの方へと一心不乱に降りてくる。
「あなたが自分の仕事を一向に思い出さなかったがために、私が降りて来なければならなかったんだ! 神の御使いの一人であるあなたが!! だからあれほど私が人間の罪を受けるといったのに! あなたのせいで神は人を作り直す決断をくだされた……もう何もかも手遅れだ」
全く嘆かわしいと吐き捨てて、男は目をそらした。
だがルシフにはなんのことだか理解できず、思わずアリサを見る。もちろん彼に分からないことを彼女が理解できているはずなどない。
「なんの話だ?」
思わずルシフは問う。しかし男は再び空へと飛び上がる。
「もはや説明したところで手遅れだ。神がどうしてあなたを選んだのか……若輩な私には理解できそうにないが、それももはや過去の話。あなたには消えてもらう事になっている……さあ悪魔来るのです」
アリサも文句を言いながら後ろからついてくる。しかしあるきだしてすぐに立ち止まったルシフによそ見をしていアリサがぶつかった。
「……っ! 突然立ち止まらないでよ。僕はそんな急に止まれないよ」
彼女は文句をいいながらルシフをにらめつけた。だが、ルシフはそんなことを気にもとめず、彼女の方を振り返ると神妙な顔で尋ねた。彼のそんな顔を見たのは初めてだったからか、彼女は顔をこわばらせる。
「王国騎士団本部ってどこだっけ?」
――アリサはムッとした様子でルシフの前を歩いている。
「はぁ、俺はなんやかんやで王国騎士団に行ったことがないんだよ」
全くこちらを向かない彼女に言い訳するようにルシフはそう呟く。だがそれでも彼女は振り返りもせず、黙々と騎士団本部を目指している。
そんな様子だから、ルシフは彼女の機嫌を取ろうと躍起になっているが、一向に機嫌は治りそうもない。
「俺何もしてないだろう? 役にもたってるとも思えないけど……」
なんてルシフが愚痴をはいたところで、ようやく彼女が立ち止まった。
「別に怒ってないよ。ちょっと呆れてはいるけどね。僕がついてこなかったらルシフさんどうするつもりだったの?」
目を失った状態な上に土地勘が全くないとは言わないが、圧倒的に情報が少ない状況下においてルシフが目的を果たせたはずもない。アリサも気を遣って目の話はしないが、彼女の言わんとする事をルシフ自信は痛感する。
「まあなんとかなっただろ。つってもお前がついてきてくれてるんだから、そもそもそんな心配自体必要ないがな!」
彼の残った瞳には光が宿っているように見え、表情もいつもどおりだ。その顔を見てアリサは胸をなでおろしたと同時にため息をつく。
「自分が今どこにいるのかもわかって無いのに?」
「中央通りだろ?」
彼女の問にルシフは全くの間もなく即答する。それを聞いて彼女は更に呆れ返った。
「ここは道じゃないよ……」
さっきまでは間違いなく道を歩いており、今も道を歩いていると信じているルシフにとってその言葉は理解できないものだった。
「はあ?」
「でもルシフさんがわからなくても仕方ないか……僕だってあれを見てようやく気がついた程だし」
そう言って彼女が指したのは、紛れもなく騎士団の紋章が刻まれた看板。いやそれは元壁の一部だろう。レンガを積んだような形の壁の残りにそれは虚しくへばりついていた。
「つまり……この先が騎士団本部ってことか?」
なんとなくその質問が間違っていることには気がついたが、ルシフは恐る恐るそう尋ねた。
アリサは顔色人使えずに冷静に沈着に答える。
「だったらどれだけ良かっただろうね? 間違いなく、ここはもともと騎士団本部があった場所で、あの壁は会議室の壁の一部に間違いないよ」
彼は彼女の言葉に思考が停止する。騎士団本部が倒壊したというのであればまだ説明はついたが、ここは誰がどう見たってただの道にしか見えない。つまるところここが彼女の言うとおり目的の場所だというのであれば、それは消滅していると表現するしかない。
確かに、アリサやレヴィアの魔法はかなりすごいもので、騎士団本部を消滅させることは容易いだろうが、それは周囲も巻き込む上に綺麗さっぱり何もなくなるなんてこととはありえない。
荒野になれど、まるで整備された道であるかのように錯覚するようなことは絶対に有り得ないだろう。だからこそ、この状態は破壊されたのではなく、消滅させられたとしか表現しようがない。
「……一体どれほどの魔法を……というか、こんな事ができる魔法なんて存在するのか?」
ルシフがそうつぶやいた時、空から男が舞い降りてきた。その姿は威圧的でまるで人間ではないかのような真っ白い姿。あるいは天使が舞い降りて来たと言われても誰も疑わないだろう。
その男の背中には白い羽が2片携えられ、神聖な空気を醸し出す。彼は二人を見下して厳かに口を開いた。
「私が教えてやろうか?」
ルシフはその高圧的な態度が気に食わない。だが気圧されいつもの憎まれ口を叩くことができず、一度だけ頷いた。
「なるほど、本能的にわかっているのかな? 私に口をきく事自体傲慢であることに。いいだろう……その野性的本能をたたえ教えてある。結論から述べるとその建物を襲ったのは、悪魔でも聖者でもない。そんな下賤のものにそんな芸当が出来るはずもない。それこそが神によって与えられた力の限界地点なのだから。しかし、神によって使わされた私にはそれが出来る。つまりそれをやったのは私ということだ」
アリサがその男の言葉に反発する。
「もし君の言っていることが本当だとするなら、どうして神の使いが人間にこんな事をするの? 君はただの神の狂信者でしょう? 神がこんなことをするはずない!」
男はその言葉に怒りを顕にし、アリサを鋭い眼光で睨む。
「神の教えを伝導できなかった愚か者め!! 神はお前たち教会にはほとほと呆れておられる。何が永劫回帰だ!? 何が悪魔だ!? お前たちがきちんと役割を果たせなかった報いがこれだ」
男がそんな風にまくし立てるものだから、ついにはルシフも余っていられなかった。
「そのぐらいにしてやってくれ……」
その言葉が聞こえると同時に、男はルシフの方へと一心不乱に降りてくる。
「あなたが自分の仕事を一向に思い出さなかったがために、私が降りて来なければならなかったんだ! 神の御使いの一人であるあなたが!! だからあれほど私が人間の罪を受けるといったのに! あなたのせいで神は人を作り直す決断をくだされた……もう何もかも手遅れだ」
全く嘆かわしいと吐き捨てて、男は目をそらした。
だがルシフにはなんのことだか理解できず、思わずアリサを見る。もちろん彼に分からないことを彼女が理解できているはずなどない。
「なんの話だ?」
思わずルシフは問う。しかし男は再び空へと飛び上がる。
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