永劫回帰の黙示録(レヴェレーション)

真白 悟

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終章 魔の終末

12.崩壊

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 アリサの言葉にルシフは困惑した。
(俺の目がどうしたというのだ?)
 冷静さを保っているルシフにも、アリサの言葉の意味が全くわからなかった。わからなかったからこそ、自分の目に触れてみようと考えたのだろう。
 ルシフはゆっくりと潰れていない方の目を触った。特に違和感を感じるわけもない。それもそうだ、両目が潰れてしまったら今見えている風景すら存在しないのだから、だからこそ気がついた。
「まさか!? 目が見えている……?」
 ルシフ達の一連のやり取りに、男は何を思ったのか高らかに笑い声を上げて、状況を簡単かつ簡潔に述べる。

「治してやったのだよ。アンドロマリウスがその命を持って潰した目をね」


――結局、ルシフが戦闘の意思を向けなかったからか、男はすぐに何処かへと言ってしまった。
「一体何だったんだ……あの男は」
 ルシフはアリサに問いかけた。
「僕にわからすはず無いじゃないか……それにしてもなんか不気味な男だったね。自分のことを神の使いだとか言って…………ってそれは自分たちのことを聖者と言っている僕達も一緒か……」
「そんなこと無いさ……他称と自称じゃ天地ほどの差がある。あいつも悪魔と呼ばれていたんだ。なら悪魔だったと考えるのが一番後腐れないだろう?」
 ルシフの言葉に、アリサは少しだけ悩んで「そうだね」とだけ答えた。

「とにかく、こんななにもないところにいたって何も始まらない。目が元に戻ったことだし、ちょっとだけレヴィアの未来でも見てみるか……」
「ちょっとまって、レヴィア様のことを見るのもいいけど、どうせ城の近くなんだから魔力をできるだけ温存するためにこのまま城に向かおうよ」
 アリサの提案ももっともだとルシフは考え、なんとなく城の方を見た。
「わかった。そうしよう」
 そう言うや否やルシフたちは城方へとあるき始めた。

「それにしても、酷い有様だな……俺は悪魔を甘く見ていたようだ。まさかここまでやるなんて」
 まるで軍隊同士の戦争が行われたあとの戦禍のように街は、ルシフが以前暮らした華やかな王都の影も形もなく、そこに暮らしていた人々に至っては今となっては地面に倒れ伏す以外どの様な行動も起こさない。
(これじゃあ、復興にはかなり時間が掛かりそうだ)
 そんな風にルシフは考えていた。魔術士団にいたころに人の死を経験しすぎたルシフにとって、その光景は至極当たり前のこととなってたが、アリサにとっては非常に恐ろしい光景だ。
「あれはまさか……おじさん! パン屋のおじさん!」
 アリサが突然声を上げて、一つの死体へと駆け寄っていく。
「まさか……おじさんまで殺されちゃうなんて……僕がもっとしっかりしていればこんな事には……!!」
 死体を腕に抱えたまま、アリサは号泣する。その姿があまりにも普通の少女であったがために、ルシフはちょっとだけ意外に感じた。

「……知り合いか?」

 ルシフは彼女をなんとか慰めようと言葉を探したが、見つからず思わずそんなことを尋ねていた。
 気の利かない言葉だが、彼女も彼がそこまで器用ではないということを知っていたから、彼の言葉が少しだけありがたかった。
「……うん、僕が常連だった店のおじさん。おじさんの焼いたパンを毎朝食べてた。よくパンをサービスしてくれて…………」
 嗚咽を混じらせながらそう話すアリサに、ルシフは彼女の肩をたたき慰める。彼にとって彼女は父を失ったときの自分と同じで、立ち直れなくなるかもしれないという感情があったからだ。もしそうなってしまっても彼女を責めることなど出来ないが、大した力を持たないルシフ一人ではダンダリオンという悪魔を相手取るのは力不足である。
「辛いならここに残れ……」
 ルシフの言葉を耳にして、アリサは目をこすりながら立ち上がった。
「ううん……僕はレヴィア様を…………兄さんを助けなくちゃ」
 兄なんてものが本当に存在したのか、そんな不安が全く無いわけではない。だが例えハムートという存在が本当の兄でなかったとしても、もはやアリサにとってはどうでも良いことだった。むしろ今まで一緒に過ごした数年間が、彼女とハムートにとっての絆となっている。

「わかった。じゃあ行くぞ」
 ルシフは彼女の決意を改めて確認し、再び二人で城へと足を進めた。

 それから十数分歩くと、厳格なる城壁がルシフたちの視界に入るはずだった。悪魔の襲撃のためだろうか、おおよそ壁と呼べる物は存在しない。
「ここもか……これじゃあ本当に悪魔の所業だな。いくら悪魔と呼ばれようとも人間であることには変わりないはずなのに……」
 ルシフは壁の近くに散乱している死体を見て、ひっそりと口にして歯を食いしばった。それを見たアリサが口にする。
「こんな事ができるのはもう人間じゃないよ……だけど、これ本当に一方的な虐殺なのかな? 本当に人間が無抵抗な人間を殺せるのかな?」
「わからない」
 そんなこと、王国最大の都市に暮らすアリサにも、辺境の街で暮らしてきたルシフにも分かるはずなどなかった。
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