剣雄伝記 大陸十年戦争

篠崎流

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傭兵団編

拡大戦略

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一方現状の打開を図って南西に旅立った聖女達は海沿いに街道を南進していた

1日半程すると領土境界線を跨ぎ、まず、海の一族の自治区「ラバスト」へ向かった

途中森の中の街道で休息と野営を敷いて翌朝出立したが、ここで事件が起こった

聖女の馬車とそれを囲み護衛した近衛の前二人がいきなり矢で狙撃され馬から落ちたのだ

「敵襲!」と叫んで近衛隊は聖女の馬車を森の出口に向けて走らせそれを壁を作るように守り、追走しながら走った

「こんな所に敵?!」と馬車の中のアンジェもエルメイアは驚いて身を竦めた

「顔を出さないでください!撃たれます!」と近衛が叫んで中の二人を伏せさせる

が、次に馬車を引く馬が撃たれて馬車が傾いた、勢いが付いたまま馬が倒れた為馬車もそのまますべりながら横転してしまった

そこへ森の中から刺客が現れ包囲する、人数は30、多くは無いがその異様な姿に一同は驚いた

全身を鎖帷子、外に薄い板金鎧。両手に巨大な篭手と盾と剣が合わさったような武器、顔にもフルフェイスの兜、それが包囲をジリジリ縮めながら迫ってくる

「おのれ!」と声を挙げて近衛隊は壁を作って備える、その間に1人の衛兵が馬車の中の二人を守りながら外に出し、背中に庇いながら徒歩でジリジリ南出口に向かう。

飛び掛る敵。防ぐ近衛。 聖女の近衛隊と言えば精兵もいいところだが、その刺客に全く歯が立たない

それは装備の差と目的の差だ

衛兵が刀を浴びせるが刺客は体でそれを受け、両手の括り付けられた短めの剣で反撃して突き殺す、ただ、それだけだ

2重鎧のボディにはまともな剣は殆ど通らない、腕は近衛隊のが遙かに上で迫る刺客の剣を華麗にかわして剣を隙に打ち込むが通らない、それどころかその打ち込まれた剣すら手で掴んで相手を動けなくして逆手の武器で突き殺す

これがベルフが密かに組織し今回実験的に投入され王子らに預けてあった「スヴァート」黒の部隊である

「必ず目的の相手を殺す」事を目指した隠密部隊これは一連の流れを見ても強力だった

聖女達を守りながらも出口目指してジリジリ移動するが、守る近衛隊も次々突き殺されていく、一方向こうは無被害。これはどうにも成らない

そこでカミュは二人を残った近衛7人に守らせ一箇所に集める「僕がなんとかする!二人を守って出口へ!」と叫んで前に立ちはだかった

あまりに無謀だ。聖女もアンジェも悲痛な叫びを上げた

「嫌ーー!!やめてカミュ!!」と

だが、現状ではもうどうにも成らない程差があるのだ、近衛兵達もせめて二人は守らねばと泣き叫ぶ聖女達を羽交い絞めにして下がる

が、カミュは覚悟はあったかもしれないが驚く程冷静で、決死ではなかった、剣を中段正中線に構えて大型剣を静かに構えた

そこに飛び掛る刺客の兵、それを迎撃して刀を振り下ろすカミュ

何時もの事だ、どうせ通らんと腕の篭手盾を構えブロックする。が、カミュの剣はその篭手盾ごと相手の腕を両断した

「な!」と意外過ぎる声を上げた刺客、数間置いて叫ぶ「ぐわああああ」とそのまま崩れ落ち斬られた腕を押さえて転げる

「来い!此処からは一歩も通さぬ!」と言いカミュは相手を睨みつけた

「おのれ!」と飛び掛る敵、しかしそれを迎撃して神速で左右に剣を振るい。フルフェイスの兜ごと1人の首を飛ばし、鎧ごと1人の胴を半断して切り殺した

手も足も出ない、武器が通らない相手をいきなり3人倒したのだ、刺客も動けなくなる

「ボウを使え!!」と誰かが叫びクロスボウを構え放つ。しかしカミュは大型剣をまるで羽の様に扱い放たれた矢を6本を全て叩き落した。即走り、矢を放った刺客を3人瞬く間に切り伏せる

(ライナさんの雷撃の様な突きに比べれば矢等、涼風に等しい)

ここまで来ると刺客達にはこの相手は「人」には見えなかったそれでも任務を果そうと3方から包囲するように動き一斉に飛び掛る

しかしそれですらカミュは自ら横に一回転しながら、それをかわし剣を振り回して全員一刀で斬り殺した

(人造魔人の硬さに比べれば、バターを斬っているのと変わらない)

カミュは強かった。自己の鍛錬、武器、経験の蓄積から、この刺客ですら役不足な程の次元の違う強さを見せ付けた

「殺される‥」

本来相手を狩るべき部隊がたった一人の青年剣士に恐怖した全く動けなく成ってしまう


そこへ、森の南出口から馬足が聞こえる、また敵か?と思ったがそれは違った

50人程の兵を引き連れた騎馬に乗った女性が一団の中に割り込み馬から飛び降りながら叫ぶ

「ラバストの族長、長女キャシー=ゴールド助太刀する!」と斧を構えた

「ラバスト!?味方か!?」と近衛隊の1人が叫んだ
「応!あんたらを迎えに来たらこの騒ぎ、守らせて貰うぞ!」

こうなっては最早目標の聖女を殺す等不可能
「チィ!‥」と舌打ちして刺客たちは下がる、が

「あ!コラ逃げんのか!」とキャシーは叫んだが。刺客達は引くのも早い森に駆け、雲散霧消して撤退した

「あんだよ、つまんねー‥」

柄の長い斧を地面にズンッと降ろしてキャシーは言う


ようやく助かった、とアンジェはその場にへたり込んだ、が一方エルメイアはいきなり走り出しカミュに抱きついて泣き出した

「馬鹿!!死んじゃうかと‥死んじゃうかと思ったじゃない!!」と叫んだ

そんな事言われても‥と思ったがカミュは
「大丈夫、僕は死なないよ」そう言って彼女の頭を撫でた

それが5分近く泣き続けた聖女は近衛の1人に「エルメイア様そろそろ‥」と促されカミュからようやく離れた

聖女はようやくすべき事を思い出し、まずキャシーに礼を述べた

「危ない所を助けて頂き‥感謝致します、聖女エルメイアです」そう言って頭を下げた

「何にもしてないけどね、兎に角、無事でよかった」とキャシーは返した

近衛隊も礼を言い頭を下げた

「雑事はこっちに任せときな。うちの連中に遺体と馬を回収させる」
「申し訳ありません‥」
「気にすんなって、そっちの人数じゃ色々出来ないだろ、それに早いところ安全な所に移動した方がいい」
「はい」とだけ答え用意された馬に一同乗った

しかしキャシーはカミュをじーっと見ていた、それに気づいたカミュは

「あの、何か?」と返した
「いやー‥全然強そうに見えないけど強いなカミュ?だっけ?」
「カミュエル=エルステルです、宜しくキャシーさん、皆にそういわれますよ」
「キャシー=ゴールド、海の一族、族長の娘だ、宜しくな」

二人は握手を交わした

「でも、見た目ならキャシーさんのが強そうですけどね」
「ハハハ、まあ、そうかもな」

実際キャシーは見るからに戦士な見姿だ、背は高くカミュより大きい銀とも白ともつかないベリーショートの髪

元々なのか日焼けなのか小麦色の肌、筋肉質で、柄の長い斧を肩に担いだ

いかにも豪快な性格、口調、少なくともカミュよりは見た目の頼りがいは遙かにある

「ああ、キャシーでいいよ、あたいもカミュって呼ばせて貰うけどね」
「はい」

エルメイア達はそのままラバストの一団に保護されつつ南へ向かった

「で、何なんだ、あの変な武装兵は」
「十中八九ベルフの部隊でしょうね」
「ま、死体を回収すりゃ何か分かるか」

馬に乗ってキャシーとカミュは話す、そこでアンジェが気がついて「なんか道ちがくありません?」と聞いた

「ん?ああ、海のラバストには行かないよ、うちのじじいはクリシュナに居るし」
「王都クリシュナですか?」
「ああ、聖女様が来られるってんで、周辺地域の長、領主、が全部王都に集まってる」
「そ、そうだったんですか」

「もう、聖女様が来られる理由も返答も決まってるからな」
「え?!」とエルメイアが驚いて声を上げた

王都クリシュナ、大陸南西地域を纏める、最も軍力の有る国で伝統的な騎士の国でもある。だが、ベルフやフラウベルトから見れば小国では無いが大国でもない、という軍力だ

そもそも戦火の及んでいない地域だけにそれ程兵を増強しているとは思えなかった、実際クリシュナと言えど、総軍は二千という少なさである

クリシュナに到着早々、王座の間に通され王と面会、周りに各地の領主や長が既に待っていた

「始めまして、聖女エルメイアです」
「クリシュナの王、シューウォーザーで御座います」
「既に、私がここへ来た理由も返答も決まっているとお聞きしましたが‥」
「はい、南方連合への加入の交渉で御座いましょう?」
「左様です陛下」

「単刀直入に申し上げますと我々南西地域の長や領主は聖女様とフラウベルトの庇護を得たいと満場一致での南方連合への参加を希望致します」
「!‥宜しいのですか?、戦火の及んでないこの地域が連合に入るという事はベルフに宣戦布告するのと、同じ効果になりますが‥」
「承知して居ります」

「それだけでなく、一方的に兵を出す事になりますが?現状をご存知でしょう?」
「それも承知しています」
「では何故?‥そちらにとって余りプラスに成らないと思いますが‥」
「無論無条件ではありません、我々は、豊かとは言いがたい国家です、その資金援助を求めたい、最低限の条件として、こちらが援軍として出す兵の軍運営の負担はそちらにお願いしたい、これが一つです」
「はい、当然の事です」

「2つに、我々地域は自然豊かな土地ですがそれら実りの捌き先がありません、故にその輸出先として南方連合で広く受け入れて貰いたい」
「それも問題ありません、良い物は必ず需要があります、輸入致しましょう」

「最後に、学術国家たるフラウベルトへの学びたいという者の受け入れ並びに移住の自由を」
「それも既に制限を設けて居りません、前王から代替わりした際制限は取り払っております」
「こちらの要求は以上です、ああそれと」
「はい?」

とシューウォーザーは王座から降りエルメイアの前に歩き、丸め筒状にした書の束を2つ差し出した

「一方は我々国、領主、長の南方同盟への参加宣誓書ですもう一方は銀の国からの宣誓書です」
「銀の国!?」

これにはエルメイアもアンジェもフラウベルトの一同が驚いて「え!?」と思わず声を上げてしまった

「何故!?銀の国が‥」
「はい、女王マリアはベルフに対するにこの連合は有効であると考えています、と、地域も領土も隣接してはおりませんが、資金や軍の援護も考えているとし、連合への参加宣誓書を届けてまいりました」

「それで‥」
「はい、その際、別書にて、こう書かれて居りました

ー バラバラな一国がベルフに対するのでは各個撃破されるだけだ。それだけベルフは強大に成りすぎた、多数の中立、敵対する国、地域が協力して一つの集団として当たるべきだ、我が銀の国は西に封をされ反撃はままならない、別の道からベルフに対する、故にこの連合に参加を希望する
ー との事です」

「そうだったのですか‥」
「はい、そして聖女は何れここに来る、その際この宣誓書を渡して欲しいとの事でした」
「分かりました、たしかに‥お預かりします‥」とそれを受け取った

「それと、この連合を銀の国の参加を承認され、タイミングを計って「大陸連合とするべき」そしてその盟主に、貴女をと‥」
「あ‥」それを聞いてエルメイアは感極まって静かに涙を流した

「女王マリアのなんという慧眼‥、私等及びもつかぬ名君であられます‥」

「ふふ‥」と王は笑った、そして言った

「マリアは貴女が受け入れないかもしれないとも予測してました、だから、こう言ってくれ、と。女王マリアは名君かも知れぬ、が、後ろから蹴飛ばすのは得意だが正面から堂々と皆を率いて象徴として進む正道の王ではない、それに相応しいのは誰からも後ろ指を刺されない、真の聖者であるべき。故に、聖女エルメイアを推す。との事です」
「そういう訳です、我々もフラウベルトへの協力を惜しみません」

聖女は崩れ落ちそうになる体を保ち、顔を上げて前を見た。

「分かりました、私は盟主と成り、他の国への参加の呼びかけましょう、援助も惜しみません」
「いえ、今はそれを大々的にすべきではありません、いずれ、の事です」
「そうですね‥今それをやっては、孤立している国から落とされかねませんね」
「左様です、今しばらく時を待ちましょう」
「はい」

そこで、横に控えた大柄な中年長が歩み出る

「ラバストの長、ゴールドです、差当たり聖女様フラウベルトの南方連合は今窮地にあります、そこでまず、当方の軍から千名とここまで案内をした娘のキャシーを将としてそのまま連れてお戻りください!」
「はい、ありがとう御座います」

フッと笑って長は

「無礼な娘ですが武力では並ぶ者はそう居りません、よろしく頼みますぞ」とニンマリして見せた
「我が国クリシュナは全軍合わせても2千しか居りません、故にまず兵は500派兵します、ですが、こちらも代々の騎士の国、個々の武に優れた者は居りますので、武芸者を主に派兵します」
「分かりました感謝いたします」
「では時間的余裕もありませんので直ぐに取り掛かります、エルメイア様もフラウベルに戻られるが宜しかろう」
「早速の事で申し訳ありません」

「いえ、この策自体、フラウベルトが無事で無いと意味がありませんから、どうぞお構いなく」
「はい」

と短く答えて双方、即座に行動した、今は何よりすべき事がある、故に即応である

エルメイア一向は派兵と護衛を同時に行い共にフラウベルへ向かうキャシー=ゴールドの軍と本国に向かった、万が一にも「あの」部隊が出ないとも限らない故と、フラウベルトの状況もギリギリの所にある故である

エルメイアが出立した同日、ベルフの本国から五千五百の兵が出立した、これは身内の他の将も誰にも知らされず進められた作戦である


エルメイアが南西から連合国を増やしフラウベルト本国に帰還した時行き帰りだけで既に二週近くなっていたが。その後、南方への戦争は進んでいなかった

自治区テイブで睨みあって居た両軍は結局10日で自領土へ撤退し、開戦は終了

複数方面への牽制と進行をしていたベルフ軍はクルベルへ総撤退した

カリス軍、エリザベート軍共に休息と編成と補充で五日留まった

王子の戦略は確実に成果を上げていた、連合軍の被害は二千以上、一方ベルフは全体でも被害は五百程度

これが一つの戦争の開戦なら凄まじい戦果だろう、これを続ければ、元々兵力に勝るベルフは南進攻略前に強力なアドバンテージになる

その日クルベルでシャーロットはクリスの帰還を待ち、二人だけで密室で面会した

「如何でした?あの部隊はクリストファーさん」
「クリスでいいですよシャーロット」
「ではクリスさん」
「ええ、今回は失敗しましたが「実験的」にしては強力ですね、相手の近衛を無被害で半数殺しました、ただ、向こうの矛のメンバーの武芸者に1人で9人殺されましたが‥」
「矛のメンバーならしかたない、ですかね‥何者ですか」

「カミュエル=エルステル、ライナ=ブランシュと同時期に罪人島に送られそこで知り合い、彼女とは師弟の立場かと」
「どっかで聞いた名ですね‥たしか」
「ええ、スエズのエルステル家の長男ですね。ベルフに逆らって処刑された」
「ああ、あのエルステル‥なんとまあ、愚かな事をしたもので‥」

「とは思いますが、罪人島に送られなければ現在の彼もありえなかったかと、それにベルフに臣従するとは」
「ですね‥、まあいいでしょう、で、隠密部隊としてはどうですか?」
「微妙ですね、装備が装備だけにかなり五月蝿い。ガチャガチャさせすぎですね、施設への侵入、屋内への侵入での暗殺には微妙過ぎますね、ただ、そうでない場所での「相手を必ず殺す」という目的には強力でしょう特に打撃力の低いノーマルな剣など体で受けても剣が通りませんから」

「なるほど」
「むしろ、暗殺部隊より、要人の護衛としてのが有効ですね戦場でそのまま使っても有効でしょう、何しろ重装突破兵よりコストは安いですし軽装気味なので重量もそこまでありませんから2,3時間で動けなくなるという欠点もありませんから」

「盾も剣も小型ですし、フルプレートではありませんからね」
「左様です、その様な運用の方が有効です」
「分かりました、ではそう纏めて本国に具申しましょう、ところで」
「はい?」
「この一件は内緒ですよ?」
「分かっております、姉上も怒るでしょうし」
「でしょうね‥うちは純粋な正面決戦が好きな方ばかりですし」

「それと、潜入ついでに探ったのですが、まずい事になってますよ」
「なんです?」
「大陸南西地域の4国が南方連合に加入しました、聖女は口説き落としたようですね」
「でしょうね‥追い立てられれば、そうなります」
「ご存知でしたか‥」

「というか、向こうにしてみれば、それしか手がないですしフラウベルトといえど兵の増強は限度がありますから」
「たしかに‥」
「どの道こちらの戦略方針に変わりはありませんから、まあ、たいした問題ではありません」
「はい」

「兎に角今回はありがとうございました、不愉快な事をやらせてしまってすみません」
「いえ、そっちのが専門ですし構いません」
「全部内密にお願いします」
「分かりましたでは」

二人の密室会談はそこで終了してクリスは即座に部屋を出たシャーロットもそれを追う様に自室を出て、今度は四将会議に出席する、今後の作戦を話合う為だ

ただ「内密」とは言ったが南方連合に南西地域が加わるニュースは自然にベルフ側に流れた

「状況は変わったが、今後も嫌がらせ戦争を続けるのか?」

エリザはまずその事を言った

「数字上の戦果は多大な結果を齎してますから。それに南西地域は兵力が元々少ない全部あわせても精精五千、これらも戦略の網に巻き込んでしまえば後が楽です」
「そうだな、向こうが攻めて来ない以上、こっちから突くのは有効だ」
「ええ、向こうは首脳部、物事を決定する上の連中に戦略眼を持った人間が居ないようですし。釣り戦法を続けて問題ありません」

「けど、僕らが東周りで攻めた時迎撃した。ロック?という指揮官は戦略戦術に長けていたのでは?シャーロットも言ってたけど」
「はい、ですがこの状況に成っても向こうから動きが無いという事は彼にはその発言権は無いのではないかと思われますましてライティスの矛のメンバーの様ですし」

「ま、ライティスの矛は少数特殊部隊で主軍より立場は低いからなぁ、そうかもしれないね」
「なるほど不自由な部隊でもあるんだね‥」
「まあ、それでいいとして、次はどこ攻めるんだい?」
「まだ、攻めて無い場所が一つありますのでそこで遊ぶのが宜しいかと」
「うん?剣の山かい?」

「ええ、色々実験にいい場所です、特にエリザベート様にはうってつけでしょ?」
「そうかな~?狭くて碌に兵力展開出来ない場所だし向こうも篭城一択じゃないか?騎馬隊や正面決戦が必要とも思えんが‥」
「なので実験です篭城させなければいいんです上手く行くかは分かりませんけど」

「ふーん、ま、その辺の知略はそっちの事だ、あたしはまともに武器が振るえるならそれでいいけどね」
「では今回は王子の軍に加わってください。三姉妹の妹二人が使い物になりませんから」
「分かったではそれで決定だな」

「ただ、色々小道具の用意に時間が掛かります、10日程お待ちください」
「分かった」

と方針の決定が成され、其々準備が開始される

一方フラウベルト側でも事態が急展開を迎えていた。キャシーらを伴って王都に帰還した聖女に、報が入り対応を求められた

「聖女様!大変です南海から巨大軍船が四隻現れました!!」

まだ、城にすら入って居ないタイミングで街の入り口でそう告げられた

「軍船!?、分かりました兎に角城に‥」

一体何事かと即座一同城へ上がり、いきなり現れた軍船と会談を要請してみる、彼らは「銀の国から来た、入港許可と会談を」と求めてきた

これには一同驚愕だった、が「という事は‥」と聖女は呟いた後、南西地域で起こった事をまず全員に説明した

「援軍?でしょうか?」
「もしくは協力、しかしマリア自身が来たのでしょうか?、兎に角会いましょう」

とりあえず会ってみないと何も分からない故に、まず会談の場を設けた、一応という事で団のメンバーで首都に居る、バレンティアとライナも同席する、そこで二人を驚かせたのはその場に現れた人物だ

「よ!」と軽い口調で片手を上げて挨拶したのはショットガルドだった
「な?!」
「あんた、何でここに居るのよ!!」

と正式会談の場であるにも関わらずテーブルをひっくり返す勢いでライナとバレンティアは立ち上がって声を挙げた

「お、落ち着いてくださいお二人共‥彼が何か?‥」

と意味不明だった一同に謝りつつ、説明した

「元草原の傭兵団のお仲間??」
「ええ‥ショットガルド=ラハルト、通称ショットよ‥」
「それが何故銀の国の大使に?」

「ああ、俺は団を出た後先ずは近場の銀の国に行ったんだ、そこでいきなり「うん、面白い奴じゃ使ってやる」とかマリアに言われて即日雇われたんだよ、向こうは武の将が少ないし、ほら、俺強いじゃん?」
「アンタねぇ‥」

「バレンティアさん落ち着いて‥」と聖女にまで止められる始末

とても国家間の正式会談とは思えぬ雰囲気になってしまった、と言っても相手もとても大使とは思えぬ言い草だが一つ咳払いをしてからエルメイアは

「ま、まあ、それは良いとして今回のご訪問の目的は」
「みての通り、援軍だよ、兵二千と、装備、金、将に俺。連合への参加は承認されてるだろ?」
「驚きました‥こうも打つ手が早いとは‥しかも海からとは‥」

「マリアは公共事業として作った大型軍船は元から多数用意してあった、それが今回役に立ったという事だな。それとマリアは昔から「海」を「道」として使う事を考えていたそうだ、それに今回西に蓋をされちまって南方への派兵は街道を使えない、領土も隣接してない、間にベルフの領土があるからな」
「マリア様は未来を読める方の様ですね‥」
「普段は生意気なクソガキだけどな、知略じゃ間違いなく最強だろうな」
「クソガキって‥」

「すまん失言だった‥、とにかく入港許可と俺の軍の行動の自由を船の上に二ヶ月も居たから皆疲れてる、それと、そっちから人を出して荷降ろし、城に金を納めたいこれが一番重いからな」

「はい、直ぐ宿舎か官舎を開けます、それと金はいかほど?」
「えーと紙債券や手形を含めてだが、35万Gだな」

それを聞いて一同ひっくり返る程驚いた、ヘタな国家の1年分の予算は軽くある金額だ、そうもなる、しかし流石に聖女も

「ちょっ!ちょっと待ってください!、35万て‥どこからそんな金が‥しかも貰えませんよそんな‥」とアワワしていた

「いや、別に捻出したもんじゃなくて過去のベルフとの戦争で賠償や条約の支払金で掠め取ったもんらしい。手付かずで置いてあっただけで、使い道ないからソッチで使えとの事だ。どうせ色々フラウベルトが、周辺国に援助しっぱなしだろうと」
「信じられない‥どこまで先を見通しているのやら‥」
「まあ、そういう訳だから、遠慮なく使ってくれ、どうせ、元はベルフの金だ」
「わ、わかりました‥」とエルメイアもそれを承認した

当日、官舎や宿を開けられ銀の国の兵団はようやく地面で生活する環境を得た

雑事はフラウベルト側が行い、銀の国の一団はほぼ何もしてないが

その夜、ショットはライティスの矛の官舎に訪れ旧友と会食を楽しんだ

「いやー、出世したなーえらい良い官舎じゃねーか」
「それ言うならアンタの方こそ出世でしょうに‥」
「まあ、そうだけど、実質向こうは戦争ないしな、暇ちゃ暇だぜ?バレンティアやライナが来たらもっといい立場が貰えるぜたぶん」
「武の将が居ないって言ってたわね」
「グラムっていうおっさん将は居るけど高齢だからなぁ‥、まあ、アホみたいに強いけど‥後はその息子のクルツっていう指揮官も居るけど剣はあんまり‥」

「意外ね‥それでもベルフを三度叩きのめしたのだし」
「いやまあ、マリアはハッキリ言って人外レベルの戦略家だしな、それでどうとでもなっちまうんだよな」
「今回の一連の一件も驚いたわね、どういう頭の構造してるのかしら‥」
「ご尤も」
「んで?将が居ないからあんたが派遣されたの?」

「それもある、けど、俺自身も来たかったし マリアもそれを察してくれたみたいだ」
「ほんと‥いい国と王ね」
「ほんで?隊長らは?」
「今は周辺国に派兵されてるわ、何時戻るかは何とも」
「んーそっか、同じ側なら、何れ会えるだろう、まあ、今日は呑み明かそうぜ!」
「いや、酒は‥」
「あんまり‥」
「お前ら全然成長しねーな」

ライナ&バレンティア「お前が言うな」

とは言ったものの、こうして再び皆に会えた事はお互いこれ以上無い喜びだった「生きていればまたどこかで」が実現された日でもある

「飲み明かそうぜ」は無理だがお互い自分達のこれまでの経緯を報告しながら夜を過ごした

大陸戦争も6年過ぎようかという日の事である

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ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

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