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3-3.陛下の憂鬱
しおりを挟む国王の登場とあって、さすがのアリアも頭を下げる。
しかしその素直な行動に何かあるのではと内心ビクつき怯える王族と側近たち。
緊張した中もはや、やけくそ気味で陛下は声を出した。
「面を上げよ……」
少し声が上ずってしまい動揺していることを悟られまいとしたのに何たる醜態。
「……何があったのか説明せよ」
出来れば何も聞きたくない。ここから逃げ出したいと思うのは私だけでなく王妃もまた同じ気持ちであるが、目の前でボコボコになって伸びている我が子を見て放置するわけにもいかず、やむを得ず問いただした。
本当に、やむを得ず――だ。
「これはこれは国王陛下と王妃殿下。これが私たちに何をしたのかお聞きになりますか?」
目を細め凛とした立ち振る舞いは貴族の鏡といえるが、一国の王子に危害を加え国王と王妃に敬意のないこの態度に普通なら処罰の対象になるだろう。
普通なら―――だ…
「………うむ、聞かせて…もらおう、か」
最初から決まっている答えにアリアはニッコリとほほ笑みながらゲイルがしたことを話始めた。
「第1王子が私に……婚約破棄を言い渡し挙句の果てにそこで伸びている令嬢と婚約すると宣言しましたの。しかも、私がその者をいじめたと―――謝れと……そんなこと不可能だし私に何のメリットもないというのに」
「………」
「これって、冤罪ですわよね?」
「……そ、そうだな。アリア嬢には何の罪もない。」
顔を引きつらせそう答えたが内心では『あのバカ息子っ!何て真似をしたんだっ!!』と怒りが渦巻いていた。
「わかっていただけて嬉しですわ……」
「そ、そうか……」
「フフフ………ところでどういうわけで私とゲイルが婚約なんて噂が出たのでしょうか?そんなこと絶対にないというのに…」
鉄扇を広げてこちらを見据える瞳には『誰が言い出したのか調べろっ』と無言のオーラが放たれているような気がして思わず目を逸らした。
実際そんなオーラは出ていないというのに……
「宰相、心当たりはあるか?」
「はい…恐らく、第1王子派の誰かだと」
「なら、早急に調べよ…」
「かしこまりましたっ」
この命令に『やった!ここから逃げ出せる!』と歓喜して飛び出そうとした宰相だったが、アリアのひと言であっけなく崩れ落ちる。
「それには及びませんわ……」
「え、でも……」
急がないと証拠を隠滅されてしまうかもしれないのだが、宰相を止めたアリアの視線の先には、この婚約破棄騒動を終始見ていた貴族たちの姿があった。
「この中にいるのではありませんか?」
「―――っ!」
サラッと言ったアリアの言葉に、誰もが息を呑んだのだった―――
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