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3-4. 陛下の憂鬱
しおりを挟むゲイル王子がこんな大事なパーティで目立つような真似をするなんてバカだけど確かにおかしい。
しかも人違いの婚約破棄―――
そして―――
エリス嬢の姉上に虐められたといういいががり……
誰が考えても姉上がそんな愚かなまねをするとは思っていないはずだ。
なのに、誰も止めなかった。
いや、姉上に対してそんな自殺行為はできないか……オレもそうだし…
無言で固まっている宰相に姉上はニコニコ微笑んでいて、その光景に鳥肌がたった。
「違うかしら…?」
何か掴んでいるのかその笑みが正直怖い。
「………」
「このバカを起こして聞いてみる?」
「えっ?」
「このバカが一人で考えたとは思えないわ。だったらそそのかした奴がいるはずよ」
「まさか……」
「例えば、そのエリスの家の関係者。あるいは…私の失脚を狙う者、とか?」
「まさかそんなバカな真似をする奴がいるとは思えませんが……」
浮き上がったまさかの陰謀説にオレは笑っていられなくなった。
貴族たちの中でそこに居てはいけない人物をみつけたからだ。
姉上も気づいたのだろう。そいつを見る目が虫けらのようだったから。
「あ、姉上…」
「あら、アランも気づいた?」
「はい。でも信じられません」
「そうね。私もよ。でも諦めなさい…」
「―――クソッ!」
2人だけで進む会話に宰相はついていけなくて焦った。
でもその内容からゲイルをそそのかした人物があの中にいると思うと許せない。
「誰ですっ!誰がゲイルさまを……?」
陛下も王妃も犯人がいると聞き顔色を変え動揺する。
「犯人をみつけたのか?」
「ええ…」
「誰なの?」
手に汗にぎり息を呑む陛下と王妃にアリアは
「私が王子をボコボコにしているのに守りも攻撃もしなかった。だた陰でみているだけ。そんな王子を見てさぞかし愉快だったでしょうね。元騎士団所属。そして今はゲイル王子の護衛だったかしら……ねえ、ハインツ様?」
ハインツの名前が出て人々はざわつく。
「ハインツ殿といったらネオン伯爵の次男ではなかったか?」
「そうだ。騎士団に所属していたと聞いたがなぜゲイル様の護衛に?」
「何でも、アリア様と決闘して負けたからと息子から聞いたことがある」
「優秀だと聞いてたが…まさか彼がこの事態を?」
「信じられんっ!」
「ハインツ様、なぜ……?」
犯人だと疑われているというのに、ハインツは顔色ひとつ変えることなくじっとアリアを見つめていた。
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