14 / 87
第4話. これって、どういうこと?
しおりを挟む睨み合いが続く中、ハインツは小さく息を吐き姉上の前に出た。
「お久しぶりですね、アリア……」
「ええ、そうね。あなたが騎士団からゲイル王子の護衛になって以来かしら?」
昔は仲が良かった二人だが、いつからか険悪の仲になりハインツを慕っていたアランも疎遠になっていた。
「ところで、なぜあなたがあちら側にいたのか説明してもらえる?」
蔑むような視線を送る姉上にハインツは苦笑する。
「なぜ私があちら側にいたのか知りたいですか?」
柔らかい笑みを姉上に向ける姿はとても犯人とは思えないはど優しかった。
「……なによ。あなた疑われているのよ?正直に話しなさい」
文句を言っているがちょっとテレているように見えるのは気のせいだろうか?
頬が少し赤いようだし……やっぱり姉上は?
「そうですね。私があちら側にいたのは、昨日護衛を解雇されたからです」
「はあ?なんですって!護衛を解雇っ!」
「解雇だとっ!」
驚いたのは姉上だけではない陛下もだ。
姉上に聞いた話だが、半年前にゲイル王子がハインツが欲しいなどど戯言をほざいたせいで騎士団が混乱した。
当時団長だった姉上はゲイル王子に猛抗議したが最後には国王命令が出て断念したのだ。そして嫌気がさした姉上もまた騎士団をやめて隣国に留学したというのが経路だった。
貴族たちが噂していたハインツが姉上と決闘して負けたというのは、その後のことだ。
自分からハインツを奪っておいて今更解雇。
そして―――今回の婚約破棄といいがかり。
自分勝手なゲイルに殺意がわいた。
「……殺してもいいわよね?」
気絶しているゲイル王子の背中を憎しみを込めてガンガンとヒールでと踏みつぶしてやると、痛みで意識が戻りかけているのか唸り声をあげた。
「起きなさい、このクズっ!」
もはや公爵令嬢ではなくただのアリアとして接する姉上に誰も文句を言うものはいない。
被害者であるハインツもそれは同じで一緒にゲイル王子を締め上げたい気分になっていた。
「騎士団からハインツを奪っておいて今更護衛を解雇するなんて何を考えているのよっ!」
「アリア――?」
「私がどんな思いでハインツを手放したと思ってるの?」
「姉上―――?」
あれ?なんだろう……姉上の様子がおかしい?
言っている言葉が何かハインツ様に対して―――・・・
あれれ~……んん?
何か、恋人を奪われた人のように聞こえるんだけど……?
この様子を見ていハインツは陛下に声を上げる。
「陛下、発言をお許しください」
「……あ、ああ…良い。」
「ありがとうございます。ゲイル様の護衛を解雇されたのですから私は騎士団に復職してもよろしいですか?」
「騎士団に復職だと?」
「はい、陛下との約束はゲイル様が解雇するまでということでしたので・・」
「―――だが、それではゲイルが」
「ゲイルが何ですか?わたしはゲイル様のわ・が・ま・ま・で護衛についていただけです。解雇されたのですから復職しても問題ないですよねっ?」
『約束を果たしたんだから言うことを聞けっ!』
そう言われているような気がしては陛下は涙目で頷いた。
「わかった、騎士団に復職することを許可する…」
勢いに押されて了承したようだが、ブツブツなにか呟く。
「ううっ、私のスローライフがああーーっ!」
小さな声だったが姉上はもちろんオレの耳にも届いてげんなりした。
陛下ってそんな理由でハインツ様をゲイル王子の護衛に任命したんだ。そりゃ、姉上がキレるはずだ。
「こいつが戻ったら警備が厳しくなって市井に行けなくなる。愛しのメリーちゃんにも会えなくなるではないかっ!真面目なハインツが王子の護衛についている間、市井で自由気ままにしていたのに、また地獄のような書類作業と公務に戻るのか……」
こうして騎士団に復職することが決まったハインツだが、話はこれで終わらなかった。
何を思ったのか急に姉上の前に跪いて手を取り熱のこもった瞳で見つめ―――
「アリア、愛している。私と結婚してください」
と―――爆弾発言を落としたのだった。
「ええええ―――っ!!」
何、そんなの聞いてないよ――っ!
*****************************
コメントいただいた方で、お一人だけ間違って却下してしまいました。
申し訳ありません<m(__)m>
なおその方のお名前は、個人情報なので控えさせていただきます。
107
あなたにおすすめの小説
もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!
めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。
目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。
二度と同じ運命はたどりたくない。
家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。
だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。
王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?
人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途なαが婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。
・五話完結予定です。
※オメガバースでαが受けっぽいです。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される
木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー
※この話は小説家になろうにも掲載しています。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
王太子殿下のやりなおし
3333(トリささみ)
BL
ざまぁモノでよくある『婚約破棄をして落ちぶれる王太子』が断罪前に改心し、第三の道を歩むお話です。
とある時代のとある異世界。
そこに王太子と、その婚約者の公爵令嬢と、男爵令嬢がいた。
公爵令嬢は周囲から尊敬され愛される素晴らしい女性だが、王太子はたいそう愚かな男だった。
王太子は学園で男爵令嬢と知り合い、ふたりはどんどん関係を深めていき、やがては愛し合う仲になった。
そんなあるとき、男爵令嬢が自身が受けている公爵令嬢のイジメを、王太子に打ち明けた。
王太子は驚いて激怒し、学園の卒業パーティーで公爵令嬢を断罪し婚約破棄することを、男爵令嬢に約束する。
王太子は喜び、舞い上がっていた。
これで公爵令嬢との縁を断ち切って、彼女と結ばれる!
僕はやっと幸せを手に入れられるんだ!
「いいやその幸せ、間違いなく破綻するぞ。」
あの男が現れるまでは。
時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~
なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。
一つは男であること。
そして、ある一定の未来を知っていること。
エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。
意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…?
魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。
なんと目覚めたのは断罪される2か月前!?
引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。
でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉
まぁどうせ出ていくからいっか!
北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる